弁護士ブログ

同性カップルの準婚関係も法的保護に値する

2021.03.25更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかどとしや)です。

事実婚関係にあった同性カップルのパートナーの不貞行為が原因で破局をしたとして,女性が元パートナーに対し,損害賠償請求した訴訟において,最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は,元パートナー側の上告を棄却する決定を下しました(令和3年3月17日付け)。これにより,元パートナーに110万円の損害賠償請求を認めた第一審,第二審判決が確定したこととなります。

第二審の東京高裁は,2020年3月,「元カップルは民法上の不法行為に関し,互いに婚姻に準ずる関係から生じる法律上保護される利益を有する」と認定しました。同性カップルが婚姻関係に準ずる関係にあったと認定し,損害賠償請求を認める判断が最高裁で確定するのは初めてのようです。

第一審宇都宮地裁真岡支部は,2019年9月,婚姻を男女間に限る必然性があるとは断じ難い状況にあり,同性カップルにも一定の法的保護を与える必要性は高いと指摘しています。「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」とする憲法24条について,「同性婚を否定する趣旨とまでは解されない」とも言及しました。
その上で,2人が約7年間同居し,米ニューヨーク州で婚姻登録証明書を取得しており,日本国内で結婚式も挙げたことなどから,「内縁関係(事実婚)と同一視できる生活関係にあり,法的保護に値する利益が認められる」として慰謝料などの支払いを命じました。

【過去参考ブログ】
http://www.hamakado-law.jp/blog/bengoshi/2019/09/
http://www.rikon-hamakadolaw.jp/blog/blog01/2019/09/

昨年3月の二審東京高裁判決は,さらに踏み込み,「(2人は)婚姻に準ずる関係にあった」と認定しました。憲法の解釈には触れませんでしたが,第一審同様に損害賠償請求を認めました。

同性婚を認めないことが憲法14条に反するとした札幌地裁と同じ日に上記決定が下されたのは偶然とは思えません。ようやく司法が動きました。果たして山は動くでしょうか。

投稿者: 弁護士濵門俊也

札幌地裁が画期的判決!「法律上,同性同士が結婚できないことは憲法違反である。」

2021.03.24更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかどとしや)です。

「法律上,同性同士が結婚できないことは憲法違反である。」として,複数の同性カップルらが国を訴えていた国家賠償法に基づく損害賠償請求事件において,札幌地方裁判所(武部知子裁判長)は令和3年3月17日,法の下の平等を定めた憲法14条に違反するとして,我が国で初めて違憲判決を下しました。

【判決書全文は以下のとおり】
https://www.call4.jp/file/pdf/202103/533e3260db61a96e84711d1f0c02d5d6.pdf

【札幌地裁判決の骨子】
1 同性間の婚姻を認める規定を設けていない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定(以下「本件規定」という。)は,憲法24条には違反しない。
2 本件規定は,憲法13条には違反しない。
3 本件規定が,同性愛者に対しては,婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは,立法府の裁量権の範囲を超えたものであって,その限度で憲法14条1項に違反する。
4 本件規定を改廃していないことが,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。

【感想】
判決冒頭部分は,我が国における同性婚の歴史が簡潔にまとめられています。
1 「性的指向とは,人が情緒的,感情的,性的な意味で,人に対して魅力を感じることであ」ると定義します。このような恋愛・性愛の対象が異性に対して向くことが「異性愛」,同性に対して向くことが「同性愛」ですが,札幌地裁判決は「人の意思によって,選択・変更し得るものではない」という点を強調します。
2 明治期において,「同性愛」は,「精神疾患であって治療すべきもの,絶対に禁止すべきもの」とされていたそうです。
3 戦後から昭和55年ころまでの間においても,「同性愛」は,「精神疾患であって治療すべきもの」とされ,教育領域においても,「健全な社会道徳に反し,性の秩序を乱す行為となり得るもの」とされた。昭和22年には現行民法に改正されましたが,「婚姻とは,社会通念による夫婦関係を築く男女の精神的・肉体的結合である」などと解され,「同性婚」は当然に認められないものとされていました。
4 しかしながら,昭和48年(1973年)以降,米国精神医学会や世界保健機関が,相次いで「同性愛は精神疾患ではない」ことを明らかにし,我が国においても,昭和56年(1981年)ころから同様の医学的知見が広がり始めました。
5 諸外国において,「同性婚又は登録パートナーシップ制度を導入する国」が増え,「同性婚を認めない法制度が憲法に違反するとの司法判断が示される国」もありました。我が国においても,平成27年(2015年)以降,「登録パートナーシップ制度を導入する地方公共団体が増加」しています。
6 平成27年(2015年)以降に行われた意識調査によれば,「同性婚又は同性愛者のカップルに対する法的保護に肯定的な者は,おおむね半数程度である」ことが示されています。しかし,年代別にみたときには,「50代までの世代においては,肯定的な回答が多いものの,60歳以上の世代においては,否定的な回答が多い」ことが示されています。

同性愛が精神疾患であって,治療されるべきものとされていた時代があったとは,新たな発見でした。いわゆるLGBTqの方々には大きな第一歩であり,画期的な判決であったことと思います。多様性の時代と言われて久しいですが,司法は動きました。果たして,国権の最高機関であり,唯一の立法機関はどう動くでしょうか。

投稿者: 弁護士濵門俊也

令和2年11月25日大法廷判決 地方議会議員に対する出席停止についての司法審査の可否(60年ぶりの判例変更)

2020.12.02更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

最高裁判所大法廷は,令和2年11月25日,「地方議会による議員に対する出席停止の懲罰の適否は,部分社会の法理により,司法審査の対象外である」としていた村会議員出席停止事件判決(最大判昭和35年10月19日民集14巻12号2633頁)等を変更する判決(以下「令和2年判決」といいます。)を下しました。
実に60年ぶりの判例変更であり,今後の実務にも大きく影響を与えるものであると思いますので,今回は令和2年判決の解説をしてみたいと思います。

●令和2年判決以前の判例理論である部分社会の法理

令和2年判決以前の最高裁は,団体の内部紛争に対する司法審査の限界について,「それが一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り,…司法審査の対象にならない」とする理論を採用していました。いわゆる「部分社会の法理」と呼ばれる理論です。

「裁判所法3条の…一切の法律上の争訟とはあらゆる法律上の係争という意味ではない」とする上記村会議員出席停止事件判決の判旨や「裁判所法3条1項…にいう一切の法律上の争訟とはあらゆる法律上の係争を意味するものではない。」とする富山大学単位不認定事件判決(最判昭和52年3月15日民集31巻2号234頁)の判旨からしても,従来の最高裁の「部分社会の法理」は,団体の内部紛争に対する司法審査の限界について,少なくとも第一次的には「法律上の争訟性の有無」の問題として捉え,「一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる」団体の内部問題については司法審査の対象外に位置づけるという見解であると理解することができます。

かつての最高裁判例は,上記意味における「部分社会の法理」を前提として,地方議会議員に対する出席停止の懲罰の適否を「一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる」として司法審査の対象外に位置づけていたと理解することとなります。

●令和2年11月25日大法廷判決の考え方

⑴ 法律上の争訟性の有無

まず,令和2年判決は,⑴「出席停止の懲罰を科された議員がその取消しを求める訴えは,法令の規定に基づく処分の取消しを求めるものであって,その性質上,法令の適用によって終局的に解決し得るものというべきである。」と判示しています。

この点について,宇賀克也裁判官の補足意見では,「法律上の争訟は,①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,②それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られるとする当審の判例…に照らし,地方議会議員に対する出席停止の懲罰の取消しを求める訴えが,①②の要件を満たす以上,法律上の争訟に当たることは明らかであると思われる。」と述べられていることからすると,上記⑴は法律上の争訟性を肯定するものであると考えられます。

⑵ 団体の内部問題に対する司法審査の可否

つぎに,令和2年判決は,⑵地方議会議員に対する出席停止の懲罰に対する可否について,㋐地方議会が議員を懲罰する「権能は上記の自律的な権能の一内容を構成する」とする一方で,㋑「議員は,憲法上の住民自治の原則を具現化するため,議会が行う…各事項等について,議事に参与し,議決に加わるなどして,住民の代表としてその意思を当該普通地方公共団体の意思決定に反映させるべく活動する責務を負うものである」ことと,㋒「出席停止の懲罰…が科されると,当該議員は…議員としての中核的な活動をすることができず,住民の負託を受けた議員としての責務を十分に果たすことができなくなる」ことを理由に,㋓「出席停止の懲罰の性質や議員活動に対する制約の程度に照らすと,…その適否が専ら議会の自主的,自律的な解決に委ねられるべきであるということはできない」として,㋔「出席停止の懲罰は,議会の自律的な権能に基づいてされたものとして,議会に一定の裁量が認められるべきであるものの,裁判所は,常にその適否を判断することができるというべきである」と結論付けることにより,「常に司法審査の対象となるという立場」に立ち,村会議員出席停止事件判決等を変更しています。

この点について,宇賀克也裁判官の補足意見では,法律上の争訟性を肯定した上で「司法権に対する外在的制約があるとして司法審査の対象外とするのは,かかる例外を正当化する憲法上の根拠がある場合に厳格に限定される必要がある。」と述べられています。

上記の㋐・㋑・㋒の考慮要素と㋓の「その適否が専ら議会の自主的,自律的な解決に委ねられるべきであるということはできない」という部分からすると,令和2年判決は,団体の内部問題に対する司法審査の可否について,「団体の自主性・自律性を尊重する必要性」と「司法審査の途を開く必要性」と比較衡量することにより,「その適否が専ら団体の自主的・自律的な解決に委ねられるべきか」という上位規範への該当性判断を通じて決するという枠組みを採用していると理解することができます。

「司法審査の途を開く必要性」としては,通常は,団体構成員である個人の権利利益の保護(あるいは,憲法32条が保障する裁判を受ける権利)を問題にすることとなりますが,地方議会議員に対する懲罰の事案では,議員個人の権利利益の保護よりも,憲法上の住民自治の原則を具現化する上での障害を問題にすることになります。

⑶ 司法審査をする際には団体の自主性・自律性にも配慮する

最後に,令和2年判決は,地方議会議員に対する出席停止の懲罰について「裁判所は,常にその適否を判断することができる」と判示することにより常に司法審査の対象になることを認める一方で,「出席停止の懲罰は,議会の自律的な権能に基づいてされたものとして,議会に一定の裁量が認められるべきである」と判示することにより,「門前払いにすることなく司法審査の対象にする一方で,地方議会の自律性にも配慮するために,地方議会の懲罰についての裁量を広めに認める形で出席停止の懲罰の適否を判断するべきである」という立場を明らかにしていると理解することができます。

この点について,宇賀克也裁判官の補足意見でも,「地方議会議員に対する出席停止の懲罰の適否を司法審査の対象としても,地方議会の自律性を全面的に否定することにはならない。懲罰の実体判断については,議会に裁量が認められ,裁量権の行使が違法になるのは,それが逸脱又は濫用に当たる場合に限られ,地方議会の自律性は,裁量権の余地を大きくする方向に作用する。したがって,地方議会議員に対する出席停止の懲罰の適否を司法審査の対象とした場合,濫用的な懲罰は抑止されることが期待できるが,過度に地方議会の自律性を阻害することにはならないと考える。」と述べられています。

 

投稿者: 弁護士濵門俊也

「車を運転していたら,他人の飼い犬を轢いてしまった!」ー法律上はどう扱われるの?

2020.10.30更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

昨日来,将来有望な若手俳優がひき逃げ事故を起こし,逮捕されたという話題で持ち切りですが,「車を運転していたら,他人の飼い犬を轢いてしまった」という相談もたまに受けます。飼い犬,飼い主にとっては,当然ショッキングな出来事ですが,轢いてしまった方にも悲しみと困惑を与える事故であることは間違いありません。
ある方は,飼い犬の死を悼みながらも「ペットの飼い主は,リード類をつけずに散歩させていた」と,飼い主側の過失を主張されていました。
交通事故の相手が犬だった場合,法律上どのように処分されるのでしょうか。その辺りを解説します。

●ペットは法律上「物」として扱われる

ペット(動物)は,家族の一員と思っている飼い主の方々は納得できないかと思いますが,動物は,法律上「物」として扱われます。

また,わざと(故意に)動物に傷害を加えることは,刑法261条の動物傷害罪や動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法)で処罰される可能性がありますが,不注意(過失)により動物に傷害を加えてもこれらの罪は成立しません。

そして,不注意(過失)の場合でも,民事上の損害賠償責任を負う可能性はあります。
ペットは「物」ですから,物損としての損害は認められますが,時価を限度とします。
慰謝料はといいますと,「物」である以上,残念なことに慰謝料は認められないのが「原則」です。
ただ,「ペットは家族同然」と思われている飼い主の方々も多くいらっしゃると思います。最近では,時価を超える治療費や慰謝料が認められた裁判例もあるようです。
その場合でも飼い主がどのようにペットを管理していたのか,事故態様がどのようなものだったか等,案件によっては過失割合が問題となるケースは多いと思います。

●「危険防止等措置義務」と「報告義務」

では,道路交通法上はどのように扱われるのでしょうか。
道路交通法上,動物を轢いた場合に関する規定はなく,「原則として」減点や罰金などの罰則が科せられることもありません。
ただ,動物との交通事故は,車両等による物の損壊として「物損事故」となります。道路交通法72条1項は,物損事故を起こした者にも「危険防止等措置義務」と「報告義務」を課しています。
そして,危険防止等措置義務違反の場合には「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する」(道交法117条の5第1号)とされ,報告義務違反の場合には「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する」(道交法119条1項10号)とされています。
よって,ただ物損事故を起こしただけでは刑事責任を問われることはありませんが,危険防止等措置義務や報告義務に違反すると刑事罰を受ける可能性があり得るということになります。
危険防止等措置義務違反があれば,行政処分の対象となり,免許の点数が引かれてしまうことも考えられます(先ほど「原則として」と説明したのはこの点を考慮しています。)。他人のペットを轢き殺してしまった場合には物損事故となりますので,その場から立ち去るのではなく,危険防止措置を講じた上で,必ず警察に報告すべきです。

投稿者: 弁護士濵門俊也

承継的共同正犯の解説

2020.10.16更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかどとしや)です。

 

当事務所のルーキー弁護士は,出身大学の司法試験受験生の指導をしているのですが,明日のゼミで,旧司法試験刑法の論文過去問を使用するとのことで,レジュメを作成しておりました。そのうちの1問が平成3年度第1問であり,承継的共同正犯の肯否が論点となります。

何だか懐かしくなり,本ブログを書こうと思いました。今回は,承継的共同正犯を解説します。

 

①承継的共同正犯の意義

承継的共同正犯とは,先に犯罪の実行に着手した先行者の実行行為が終了する前に,後行者が,先行者と意思連絡して共謀した上で残りの実行行為に関与する形態の共犯をいいます。承継的共同正犯は,途中参加型の共同正犯であり,途中参加した後行者にどの範囲で共同正犯が成立するかが問題となります。
例えば,先行者が強盗をする意思で暴行・脅迫を加え被害者の反抗を抑圧していたところ,その後,後行者が,自分も利益を得たいと思い,先行者と意思の連絡をした上で被害者の意思に反して財物の占有を奪った場合において,少なくとも後行者は共謀後の犯罪事実については,共同正犯の成立要件(①犯罪の共謀,②正犯性,③共謀に基づく実行行為)を満たすのであれば,占有者の意思に反して財物を奪った行為について,窃盗罪の共同正犯の罪責を負うことはとくに問題ないと思います。ここで問題となるのは,後行者が,承継的共同正犯として強盗罪の共同正犯の罪責を負うかという点にあります。

 

②承継的共同正犯の理論的根拠

Ⅰ 全面肯定説

継続犯,結合犯,結果的加重犯など先行者の犯罪が一罪である犯罪については,単純一罪の犯罪は不可分であることから,後行者が先行者と意思を連絡して先行者に加担した場合には,後行者に行為全体について責任を問い得るとする見解があります。
この見解は,戦後間もないの下級審の裁判例やかつての学説では支持されていたようですが,何を一罪として扱うかは,後行者の可罰性とは無関係な立法政策により決まることなので,後行者が先行者による一罪の一部に加担したことだけを理由に後行者に共同正犯の罪責を負わせられないとの批判が向けられており現在は支持を失っているようです。

Ⅱ 全面否定説

共同正犯の一部行為全部責任の根拠を,複数の者が共同して犯罪を実行することで物理的,心理的に影響を及ぼし合うことによって犯罪の結果発生の蓋然性を高めたところに求める見解(因果的共犯論)から,後行者は,自己の関与前の先行者の行為によりもたらされた事象について物理的,心理的に影響を及ぼし得ないため,後行者は,関与以前の事象について罪責を負わないとする見解があります。原則論としては,全面否定説が説得力があるのではないでしょうか。

 

Ⅲ 限定肯定説

承継的共同正犯を一定の範囲で認める限定肯定説があります。これは原則否定説に立ちながらも,例外的に肯定する説であり,説明方法としてはいくつかあります。

見解の1つとして,共同正犯の処罰根拠につき相互利用補充関係説に立った上で,後行者が先行者の行為と結果を自己の犯罪の手段として積極的に利用した場合は,自己の関与前の行為と結果についても承継的共同正犯として共同正犯の罪責を負うとの見解があります(積極利用意思説と名付けます。)。後に述べる最決平 24.11.6刑集66巻11号1281頁(以下「平成24年最高裁決定」といいます。)が登場する以前は下級審の裁判例(大阪高判昭 62.7.10 等)でよくみられていた見解です。

別の見解の1つとして,共同正犯の処罰根拠についてき因果的共犯論(構成要件該当事実の共同惹起)に立った上で,後行者が,自己の関与以前の先行者の行為に因果性をもつことはあり得ないが,関与の時点で,先行者の行為の効果が継続して存在し,後行者がその効果を利用して先行者と共同して違法結果を実現した場合に,当該結果惹起について因果性を及ぼしたものとして承継的共同正犯として共同正犯の罪責を負うとの見解があります(結果共同惹起説と名付けます。)。平成24年最高裁決定の千葉勝美裁判官の補足意見はこの見解と整合します。この見解は,積極利用意思説のように後行者の積極的な利用意思は承継の要件とはなっていないのがポイントです。

 

③限定肯定説を採用したと解される最高裁

平成24年最高裁決定の事案は,先行者Aらが被害者に暴行を加えて傷害を負わせたところ,その後,後行者である被告人は,先行者の行為とそれによる結果を認識し,さらに,先行者と共謀の上,被害者に暴行を加えて先行者が生じさせた傷害の結果をより重くしたという事実関係のもとにおいて,後行者が,自ら被害者に負わせた傷害結果のほかに,傷害罪の承継的共同正犯として先行者が生じさせた傷害の結果についても罪責を負うのかが問題となったというものです。
平成24年最高裁決定は,被告人は,共謀加担前にAらが既に生じさせていた傷害結果については,被告人の共謀及びそれに基づく行為がこれと因果関係を有することはないから,傷害罪の共同正犯としての責任を負うことはなく,共謀加担後の傷害を引き起こすに足りる暴行によってCらの傷害の発生に寄与したことについてのみ,傷害罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当と判断しました。

 

ちなみに,平成24年最高裁決定には,千葉勝美裁判官の補足意見があります。

「承継的共同正犯において後行者が共同正犯としての責任を負うかについては,強盗,恐喝,詐欺等の罪責を負わせる場合には,共謀加担前の先行者の行為の効果を利用することによって犯罪の結果〔注:強取,喝取,詐取という犯罪の結果〕について因果関係を持ち,犯罪が成立する場合があり得るので,承継的共同正犯の成立を認め得るであろうが,少なくとも傷害罪については,このような因果関係は認め難いので(先行者による暴行・傷害が,単に,後行者の暴行の動機や契機になることがあるに過ぎない。),承継的共同正犯の成立を認め得る場合は,容易には想定し難い。」

平成24年最高裁決定は,傷害罪の事案で承継的共同正犯を否定したものですが,この決定の法廷意見だけからだけですと,最高裁が,承継的共同正犯について全面否定説を採用しているのか,限定肯定説を採用しているのかが不明でした。もっとも,平成24年最高裁決定における千葉勝美裁判官の補足意見をみると限定肯定説を採用しているのではないかということは推察できました。

その後,最決平29.12.11刑集第71巻10号535頁(以下「平成29年最高裁決定」といいます。)は,先行者が欺罔行為をした後に後行者が財物の受領行為にだけ関わったが未遂に終わったという詐欺未遂罪の承継的共同正犯の成否が問題となった事案で「被告人は,本件詐欺につき,共犯者による本件欺罔行為がされた後,だまされたふり作戦が開始されたことを認識せずに,共犯者らと共謀の上,本件詐欺を完遂する上で本件欺罔行為と一体のものとして予定されていた本件受領行為に関与している。そうすると,だまされたふり作戦の開始いかんにかかわらず,被告人は,その加功前の本件欺罔行為の点も含めた本件詐欺につき,詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当」と判示して共同正犯の成立を肯定したのです。この平成29年最高裁決定により,最高裁が,承継的共同正犯につき限定肯定説を採用していることが明らかとなりました。

投稿者: 弁護士濵門俊也

大麻取締法が「所持」のみを処罰し,「使用」を処罰していないわけ

2020.09.10更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

本日,被疑者国選担当日なのですが,早速,事件の配点がありました。罪名は「大麻取締法違反(所持)」の罪です。数日前には,著名な俳優さんが同罪で逮捕されたというニュース報道がありました。結構見たい作品に出演されておられたので,作品がお蔵入りしないことを切に希望します。大麻取締法違反といいますが,具体的な実行行為は「所持」です。「所持」罪について所有の意思,所有権の有無は問われません(覚せい剤の所持について,東京高判昭和50年4月28日高検速報2100参照)。

皆さんもご存じかもしれませんが,大麻の使用は,一般には処罰の対象とはされていません。大麻取扱者が所持の目的以外の目的に大麻を使用した場合に処罰されるだけです(大麻取締法3条2項,同法24条の3)。この場合の法定刑は,5年以下の懲役,営利の場合,7年以下の懲役又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金です(未遂罪も処罰されます。)。

そもそも,大麻取締法は,大麻草全体を規制対象にはしていません。大麻取締法が規制対象としている大麻とは,大麻草(カンナビス・サティバ・エル…学名)及びその製品をいい,大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く),大麻草の種子及びその製品は除かれます(大麻取締法1条)。すなわち,大麻草の成熟した茎や種子を持っていたとしても「所持」には当たらないのです。

そうしますと,その理由が気になりますよね。そこで今回は,大麻取締法違反が大麻草の成熟した茎や種子を持っていることを「所持」として処罰していない理由や「使用」を処罰していない理由を解説します。

●大麻草の成熟した茎や種子を持っていても「所持」にならない理由:大麻草全体に有害な物質が含まれているわけではないから

理由ですが,「大麻草全体に有害な物質が含まれているというわけではないから」です。大麻は,その成分中のテトラヒドロカンナノビールが中枢神経に作用し,著しい向精神作用を示すのです。このテトラヒドロカンナノビールという成分が,大麻特有の妄想,幻覚,恐怖状態,錯乱状態などを引き起こし,有害性があるとされるのです。また,テトラヒドロカンナノビールは,大麻草の樹液に多く含まれ,大麻草の花や葉っぱにはこの樹液が多く含まれているのに対し,成熟した茎や種子にはテトラヒドロカンナノビール成分はほとんど含まれていないのです。
日本在来種の麻も大麻なのですが,日本では伝統的に茎の部分は麻織物や麻縄に利用され,種子の部分は七味唐辛子に使用されるなどして日常生活に深く染み込んでいます。こうしたことから「成熟した茎や種子の部分は有害性がほとんどない」として規制対象から外されたのです。

●大麻の「使用」を処罰していない理由:罪刑法定主義の要請

「有害性がほとんどない」といいましたが,これは成熟した茎や種子にまったくテトラヒドロカンナノビールが含まれていないというわけではなく,微量なテトラヒドロカンナノビールが含まれていることがあることを意味します。そのため,この茎や種子が体内に入った場合に,尿検査で微量な大麻成分(テトラヒドロカンナノビール)が検出されることが絶対にないとはいえないわけです。
そしてもっと重要なことは,尿として排出された大麻成分が,大麻の茎の部分であったのか,種子の部分であったのか,それとも樹脂(樹液が固まったもの)や花の部分や草の部分であったのか,特定できないことです。すなわち,尿検査で大麻の陽性反応が出たからといって,それが規制対象である大麻の花や葉っぱ,あるいは大麻樹脂といわれるものをその人が摂取したとは必ずしも言えなくなるわけです。
そこで,覚せい剤とは異なり,大麻について,使用罪は処罰範囲から除外されたのです。決して有害性がほとんどないから大目に見て処罰していないわけではありません。刑法の大原則である罪刑法定主義の要請から処罰範囲を限定化・明確化すべく不処罰とされているのです。

【参考文献】 シリーズ捜査実務全書8・藤永幸治編集代表『薬物犯罪』(第2版・東京法令出版)

 

投稿者: 弁護士濵門俊也

財産開示制度の拡充と新制度(民事執行法の改正)

2020.03.13更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。

ここ最近,令和2年4月1日施行の改正法(主に民法)の解説をしておりますが,これまた実務上重要な改正法が施行されることを説明したいと思います。それは,民事執行法の改正です。

●債権回収は難しい…

友人にお金を貸したんだけど,返してくれない…。
養育費を取り決めたのに支払ってくれない…。

このような場合,どうすればいいのか困る場面は多いと思います。この手の相談も後を絶えません。
話合いで解決できない場合,裁判所に対し訴訟を提起したり,調停・審判を申し立てたりして,「●●円を支払え」という内容の判決や審判を下してもらうという手続があります。この手続のお手伝いをさせていただくことが多いです。
ただ,請求が認容された判決書や審判書を得れば,お金を貸した相手(お金を借りた人)や養育費を支払う義務のある人が,皆必ずお金を返したり,支払ってくれたりするのかといえば,残念ながら,そうではない人もいます(とくに,養育費未払い問題は深刻な社会問題です。)。
それでは,上記判決書や審判書を得る必要性はどこにあるのでしょうか?
それは,「強制執行ができる紙切れ(これを「債務名義」といいます。)を獲得する」という点です。

●強制執行とは?

それでは,強制執行とは何でしょうか?
強制執行とは,お金を貸した人(債権者)の申立てによって,裁判所がお金を返済しない人(債務者)の財産を差し押さえてお金に換えたり(換価),債権者に分配したりする(配当)などして,債権者に債権を回収させる手続です。
債権者は,上記判決書や審判書といった債務名義を得れば,強制執行の申立てをすることによって,お金を返済せず,支払わない人に対して,強制的にその財産から自分の債権の回収を図れることとなるのです。
ただし,つぎのハードルがあります。すなわち,強制執行をするためには,

「債務者所有の●●所在の土地(実際には,「物件目録」等の目録を末尾に添付して不動産の特定をするのが通常です。)に対する強制競売手続の開始を求める。」
「債務者の▲▲銀行▼▼支店に対する預金債権(こちらも「差押債権目録」等の目録を添付して特定します。)の差押命令を求める。」
「債務者の■■株式会社に対する給料債権(こちらも「差押債権目録」等の目録を添付して特定します。)の差押命令を求める。」

というように,相手方債務者の財産の具体的な内容を明らかにしたうえで申立てをしなければならないのです。
しかし,相手方債務者が有している財産の具体的な内容など知らないということの方が通常です。
このように,債務名義を得ても,強制執行ができないことから,泣き寝入りをするしかないというケースも多くありました。
このような事態をできる限り防ぐために,令和元年5月10日に改正民事執行法が成立し(同月17日に公布され,いよいよ令和2年4月1日に施行されるのです。),以下のように,債務者の財産の内容を明らかにすることについて,元々存在した制度が拡充されるとともに,新しい制度が設けられました。

●改正民事執行法により拡充された制度(財産開示制度)

① 財産開示手続の拡充(改正民事執行法196条以下)
平成15年(2003年)の民事執行法改正により,「財産開示手続」という制度が新設されました。
この財産開示手続は,強制執行をしても完全な債権の回収ができなかった場合や,できる限りの調査をしても債務者にめぼしい財産がなかった場合等に,執行力のある債務名義の正本(ただし,仮執行の宣言を付した判決,仮執行の宣言を付した損害賠償命令,確定判決と同一の効力を有する支払督促等は除かれていました。)を有する債権者の申立てにより,裁判所が債務者を呼び出し,財産開示期日(非公開とされています。)において,債務者に自己の財産について陳述させる手続です。
しかし,裁判所から呼出しがあっても,出頭しない債務者も多かったようで,この制度には実効性に疑問があり,あまり利用されていませんでした(年間で1000件程度)。
そこで,以下のような改正がなされました。

◎申立権者の範囲の拡大
前述したとおり,財産開示制度を利用できる債権者の債務名義のうち,執行力のある債務名義の正本のうち,仮執行の宣言を付した判決,仮執行の宣言を付した損害賠償命令,確定判決と同一の効力を有する支払督促等は除かれていました。
改正民事執行法は,その制限を外し,債務名義を有する債権者はすべて財産開示制度を利用できるようになりました。

◎罰則の強化(刑事罰の導入)
旧民事執行法206条1項は,

「次の各号に掲げる場合には,30万円以下の過料に処する。
1 開示義務者が,正当な理由なく,執行裁判所の呼出しを受けた財産開示期日に出頭せず,又は当該財産開示期日において宣誓を拒んだとき。
2 財産開示期日において宣誓した開示義務者が,正当な理由なく第199条第1項から第4項までの規定により陳述すべき事項について陳述をせず,又は虚偽の陳述をしたとき。」

と規定していました。
しかし,「過料」は軽い行政罰にすぎず(軽い刑事罰である「科料」と区別するために「あやまちりょう」ともいいます。ちなみに,「科料」は「とがりょう」といわれます。),財産開示制度の実効性に不安をもたせるものといえました。
そこで罰則を強化し,上記の場合に,6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられるようなりました(改正民事執行法213条1項)。
このように,場合によっては,懲役刑まで科せられてしまうのですから,開示義務者にはかなりの心理的強制力が働くものといえます。

●改正民事執行法により新設された制度(情報取得手続)

② 不動産に関する情報取得手続(改正民事執行法205条)
債務名義を有している債権者等が裁判所に申し立てることによって,裁判所が登記所に対して,当該債務者が登記名義人となっている不動産を網羅した形で情報の提供を命じる手続です。
この手続によって,債務者名義の不動産の存在が明らかになれば,この不動産に対して強制執行することができます。
なお,この手続を利用するためには,まずは,①で述べた財産開示手続を経なければなりません。

③ 給与債権に関する情報取得手続(改正民事執行法206条)
養育費や婚姻費用等の扶養料債権,人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権についての債務名義を有している債権者が裁判所に申し立てることによって,裁判所が,市町村,日本年金機構又は厚生年金の実施機関に対し,債務者の給与債権の情報(勤務先の情報等)の提供を命じる手続です。
この手続によって,債務者の勤務先が明らかになれば,やはり,給与の差押えなどの強制執行をすることができます(給与額の4分の1の金額まで,又は,33万円を超える部分について差し押さえることができます。ちなみに,養育費や婚姻費用等の扶養料債権の場合は,給与額の2分の1まで差し押さえることができます。)。
この手続を利用するためにも,まずは,①で述べた財産開示手続を経なければなりません。

④ 預貯金債権等に関する情報取得手続(改正民事執行法207条)
債務名義を有している債権者等が裁判所に申し立てることによって,裁判所が銀行等の金融機関に対して,預貯金債権の存否,その預貯金債権が存在するときには,その預貯金債権を取り扱う店舗,その預貯金債権の種別(普通預金や定期預金等),口座番号,その金額といった情報の提供を命じる手続です。
この手続によって,債務者名義の預貯金の存在,その預貯金に関する情報が明らかになれば,この預貯金債権に対して強制執行をすることができます。
なお,この手続については,②の不動産に関する情報取得手続や③の給与債権に関する情報取得手続とは異なり,①で述べた財産開示手続を経る必要はありません。

●法改正の意義・今後の課題

今回の民事執行法改正によって,債権者が泣き寝入りをしなくてはならないケースは大幅に減ると考えられます。
とくに,子どもの養育費の未払い等で困っている人にとっては,非常に意義の大きい改正だと思います。
他方,低収入の債務者に対する給与の差押えが容易になることにより,債務者の生活を崩壊させる可能性が高まるのではないか等の課題もあります。
今後は,このような課題についても充分な議論をしていく必要があるでしょう。

 

投稿者: 弁護士濵門俊也

債権関係に関する民法の改正

2020.03.06更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

いよいよ約120年ぶりに改正された民法の施行が近づいてまいりました(施行期日は令和2年4月1日)。当職も10数年ぶりに択一受験六法(いろいろ吟味した結果,LECの『司法試験&予備試験 完全整理択一六法 民法』にしました。)を購入し,施行に備えております。
先日,「特別養子縁組」に関する民法等の改正について解説しましたが,今回は,大本丸である債権関係の見直しについて,概要を説明したいと思います。

●改正の目的

現在の民法は,明治29年(1896年)に制定されたのですが,債権関係の規定(契約等)については,約120年もの間ほとんど改正はありませんでした(ちなみに,平成17年(2005年)4月1日から現代語化・口語化された民法典が施行されています。)。
しかし,明治の時代から社会・経済は大きく変化しました。取引の複雑高度化,高齢化,情報化社会の進展等,挙げればきりがありません。
また,大審院・最高裁が下した多数の判例や解釈論が実務に定着しているにもかかわらず,基本的ルールが見えない状況にありました。
そこで,平成21年(2009年)10月から5年余りの審議を経て,法制審議会民法(債権関係)部会において要綱案を決定しました。
改正検討項目の観点としては,

① 「社会・経済の変化への対応」の観点
② 「国民一般に分かりやすい民法」とする観点

が挙げられます。

●ポイント① 「社会・経済の変化への対応」の観点からの改正検討項目
大きく5つの分野で改正が検討されました。

【消滅時効・第166条関係】 
業種ごとに異なる短期の時効を廃止し,原則として「知った時から5年」というようにシンプルに統一しました。その趣旨は,時効期間の判断を容易化する点にあります。

【法定利率・第404条関係】
法定利率を現行の年5%から年3%に引き下げた上,市中の金利動向に合わせて変動する制度を導入しました。その趣旨は,法定利率についての不公平感の是正をする点にあります。

【保証・第465条の6~9関係】
事業用の融資について,経営者以外の保証人については,公証人による意思確認手続を新設しました。その趣旨は,安易に保証人となることによる被害の発生防止を図る点にあります。

【約款・第548条の2~4関係】
定型約款を契約内容とする旨の表示があれば,個別の条項に合意したものとみなしますが,信義則(民法1条2項)に反して相手方の利益を一方的に害する条項は無効となると明記し,定型約款の一方的変更の要件を整備しました。その趣旨は,取引の安定化・円滑化を図る点にあります。

●ポイント② 「国民一般に分かりやすい民法」とする観点からの改正検討項目
確立した判例や解釈論などの基本的なルールを明文化しました。

【意思能力・第3条の2関係】
意思能力(判断能力)を有しないでした法律行為は無効であることを明記しました。

【将来債権の譲渡・第466条の6関係】
将来債権の譲渡(担保設定)が可能であることが明記されました。

【賃貸借契約・第621条,第622条の2関係】
賃貸借終了時の敷金返還や原状回復に関する基本的なルールを明記しました。

●関係団体からの要望
関係団体からは2つの要望が出されました。

【要望①】 改正内容の周知徹底
関係者の実情に応じた効果的な周知を図るよう要請がありました。
具体的には,
☑様々な媒体による国民への周知
☑担当者による説明会を全国で実施
☑関係省庁と連携した業界団体への周知
でした。

【要望②】 十分な準備期間の確保
施行日を「公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日」とされました。

●成立までの経緯
平成27年(2015年)2月10日 法制審議会民法(債権関係)部会 要綱案決定
            2月24日 法制審議会総会 要綱決定(全会一致)⇒答申
            3月31日 閣議決定・法案提出
平成29年(2017年)5月26日 成立
            6月 2日 公布

●施行期日
令和2年4月1日施行

投稿者: 弁護士濵門俊也

特別養子縁組に関する民法等の改正

2020.02.18更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

いよいよ約120年ぶりに改正された民法の施行が近づいてまいりました(施行期日は令和2年4月1日)。当職も10数年ぶりに択一受験六法(いろいろ吟味した結果,LECの『司法試験&予備試験 完全整理択一六法 民法』にしました。)を購入し,施行に備えております。
民法改正は債権法に注目が集まりがちですが,実は,令和2年4月1日施行の民法等に改正が施されている分野があります。それは,「特別養子縁組」です。
そこで,今回は,特別養子縁組に関する民法等の改正について解説します。

●改正の目的

児童養護施設に入所中の児童等に家庭的な養育環境を提供するため,特別養子縁組の成立要件を緩和すること等により,制度の利用を促進する点にあります。
厚生労働省検討会が,全国の児童相談所・民間の養子あっせん団体に対して実施した調査の結果,「要件が厳格」等の理由で特別養子縁組制度を利用できなかった事例は「298件(平成26年~平成27年)」もあったそうで,うち「実父母の同意」を理由とするものが「205件」,「上限年齢」を理由とするものが「46件」だったそうです。
そこで,見直しのポイントとしては,

① 特別養子制度の対象年齢を拡大すること
② 家庭裁判所の手続を合理化して養親候補者の負担軽減を図ること

が挙げられます。

●ポイント① 養子候補者の上限年齢の引上げ(民法の改正)

1 改正前(施行前の現行法)
養子候補者の上限年齢について,
原則 特別養子縁組の成立の審判の申立ての時に「6歳未満」であること
例外 6歳の達する前から養親候補者が引き続き養育 ⇒ 「8歳未満」まで可
としていました。
現行制度において上限年齢が原則6歳未満,例外8歳未満とされている理由は,
① 養子候補者が幼少のころから養育を開始した方が実質的な親子関係を形成しやすいから。
② 新たな制度(とはいうものの,採用されたのは昭和62年(1987年)改正・翌年施行ですから,果たして新たな制度といえるのか疑問です。)であるところ,まずは,必要性が明白な場合に限って導入すべきであるから。
という点にありました。
しかし,現行制度では,年長の児童について,特別養子縁組を利用できないとの児童福祉の現場等からの指摘を受けていました。

2 改正後
養子候補者の上限年齢の引上げ等を図っています。
⑴ 審判申立時における上限年齢(新民法第817条の5第1項前段・第2項)
原則 特別養子縁組の成立の審判の申立ての時に「15歳未満」であること
例外 ①15歳に達する前から養親候補者が引き続き監護されている場合において, 
      ②やむを得ない事由により15歳までに申立てできなかった場合には,
「15歳以上」でも可。
※ 15歳以上の者は自ら普通養子縁組をすることができることを考慮して15歳を基準としたものです。
⑵ 審判確定時における上限年齢(新民法第817条の5第1項後段)
審判確定時に18歳に達している者は,縁組不可。
⑶ 養子候補者の同意(新民法第817条の5第3項)
養子候補者が審判時に15歳に達している場合には,その者の同意が必要。
(15歳未満の者についても,その意思を十分に考慮しなければならない。)

●ポイント② 特別養子縁組の成立の手続の見直し(家事事件手続法及び児童福祉法の改正)

1 改正前
養親候補者の申立てによる1個の手続しか認められていませんでした。
すなわち,養親候補者が申し立て,特別養子縁組の成立の審判手続を経て,審判が下されるという手続のみに限られていました。
(審理対象)
・実親による養育が著しく困難又は不適当であること等(実親の養育能力(経済事情や若年等)や虐待の有無が審理されます。)
・実親の同意(審判確定まで撤回可能)
・養親子のマッチング(養親の養育能力や養親と養子の相性等が審理され,6か月以上の試験養育が必要となります。)

これに対しては,児童福祉の現場等から養親候補者の負担について以下のような指摘がありました。
指摘① 実親による養育状況に問題ありと認められるか分からないまま,試験養育をしなければならない。
指摘② 実親による同意の撤回に対する不安を抱きながら試験養育をしなければならない。
指摘③ 実親と対立して,実親による養育状況等を主張・立証しなければならない。

2 改正後
改正法の肝は「二段階手続の導入」にあります。
⑴ 二段階手続の導入(新家事事件手続法第164条・第164条の2関係)
特別養子縁組を以下の二段階の審判で成立させることとしました。
(ア) 実親による養育状況及び実親の同意の有無等を判断する審判(特別養子適格の確認の審判)
⇒ 審理対象は,「実親による養育状況」や「実親の同意の有無」等です。養親となる者が第1段階の審判を申し立てるときは,第2段階の審判と同時に申し立てなければなりません。2つの審判を同時にすることもでき,手続長期化の防止に努めています。
(イ) 養親子のマッチングを判断する審判(特別養子縁組の成立の審判)
⇒ 審理対象は「養親子のマッチング」です。養親候補者は,第1段階の審判による裁判所の判断が確定した後に試験養育をすることができます(上記指摘①及び同②に配慮)。
実親は,第2段階には関与しませんし,同意を撤回することもできません。
※ 6か月以上の試験養育をしますが,試験養育がうまくいかない場合には却下されます。
⑵ 同意の撤回制限(新家事事件手続法第164条の2第5項関係)
⇒ 実親が第1段階の手続の裁判所の期日等でした同意は,2週間経過後は撤回できません(上記指摘②に配慮)。
⑶ 児童相談所長の関与(新児童福祉法第33条の6の2・第33条の6の3)
⇒ 児童相談所長が第1段階の手続の申立人又は参加人として主張・立証をします(上記指摘③に配慮)。

●施行期日
令和2年4月1日施行

投稿者: 弁護士濵門俊也

最高裁判所,養育費「算定表」16年ぶり改定す

2020.01.06更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

年末の12月23日。最高裁判所が改訂版の「養育費算定表」を予定通り公表しました。
女子力の非常に高い当職の後輩弁護士が,公表当日,早速『養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究』(司法研修所編・法曹会)を購入してきました。
養育費は,調停・審判の場ではもちろん,裁判所外の話合いの場でも算定表に基づいて金額を決めることが多いと思いますが,算定表の見直しは平成15年(2003年)以来,16年ぶりとなります。通信費用など生活費が増えていることや,社会情勢が変化していることが考慮されたとのことです。
早速当職も裁判所ホームページを閲覧し,算定表をダウンロードしてみましたが,総じていえば,若干金額が増えたといえますし,他方であまり変わっていないともいえ,実務上の混乱は避けられるのではないかと考えます。

算定表が想定しているパターンで,最も高額となるのが「義務者(年収2000万円)と権利者(専業主婦・専業主夫)、子ども3人(全員14歳以下)」の5人家族となります。このケースでは,44~46万円が下限となります。この点に関し,旧算定表では40~42万円のレンジでしたから,4万円の増額となっています。
ただ,ここまでの高年収層の数は多くはないでしょう。当職が担当する家庭でも相当珍しいと思います。そこで,もう少し現実的な世帯の場合,新基準によるとどうなるのかをみてみましょう。

・「義務者(年収600万円)と権利者(専業主婦・主夫),子ども2人(全員14歳以下)」:10~12万円
・「義務者(年収400万円)と権利者(年収400万円),子ども2人(全員14歳以下)」:2~4万円
・「義務者(年収700万円)と権利者(年収350万円),子ども2人(全員15歳以上)」:8~10万円

新しい算定表のURLを載せておきますので,参考にしてください。
URL:http://www.courts.go.jp/about/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

結構問合せが多いのですが,新しい算定表が使われるのは、今後新たに養育費の金額を決める場合のみとなります。
いま現在,養育費が支払われている世帯ですが,今回の算定表は,「重大な事情の変更にあたりません」ので,算定表の基準が変わったことを理由として増額請求することはできません。もちろん,収入の増減や,再婚・新たな子の誕生などの事情があり,重大な事情変更があったことを理由として養育費の増額(減額)調停・審判を行う際には,新しい算定表が用いられます。

またこれも問合せが多いのが,成人年齢が引き下げられることとの関連性です。
一般的に,養育費の支払いを終える時期は「成年(成人年齢)に達する日の属する月まで」とされていることが多いです。
ご案内のとおり,すでに民法が改正されており、令和4年(2022年)4月から成人年齢は18歳に引き下げられます。引き下げ前に「成年に達する日の属する月まで」とされたものについては,今回の算定表では、引き下げに関係なく,基本的に20歳と解するのが相当とされました。

離婚するに当たっては,裁判所での調停・審判や公正証書で養育費の額をしっかりと決めることと強制執行できる紙を獲得することが重要です。
強制執行(差押えが中心となります。)できれば,義務者の給料から天引きされて,相手を介さずに会社から直接振り込まれるため,精神的な負担もありません。また,養育費には時効があります(5年・現行民法169条。改正法は短期消滅時効制度を廃止したので,やはり5年となります。)ので,「どうせ支払われないのではないか」などと諦めることなく,できるだけ早くに手を打ちましょう。
またこの点も重要ですが,算定表は,あくまで目安であって,その額に縛られるわけでもありません。当然ですが,状況に応じて増額したり,減額したりすることも可能です。

投稿者: 弁護士濵門俊也