日本国憲法第24条と同性婚
2015.06.03更新
こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。
渋谷区では,性別等にとらわれず,多様な個人が尊重され,一人ひとりがその個性と能力を十分に発揮し,社会的責任を分かち合い,ともにあらゆる分野に参画できる社会の実現を目指した新たな条例が平成27年4月1日から施行されています。正式名称を「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」(通称は「渋谷区パートナーシップ条例」です。)。という条例ですが,この条例の施行を契機として,同性婚の議論が活発となっています。
そこで,今回は,日本国憲法における同性婚について論じてまいります。
1 日本国憲法第24条の確認と「両性」の意味
日本国憲法第24条には「婚姻は,両性の合意のみに基いて成立し,夫婦が同等の権利を有することを基本として,相互の協力により,維持されなければならない」と規定されています。
同性婚を議論するためには,まず,上記「両性」が何を意味するのかが問題となります。
この点に関し,「両性」は,男女だけでなく男男・女女も含むと解釈すれば,同性婚は合憲となります。この解釈では,むしろ,「同性婚を保護しないと違憲」という帰結となるでしょう。しかし,「両性」とは「①両方の性。雄性と雌性。男性と女性。②二つの異なった性質」(広辞苑)というのが日本語の通常の意味ですから,この解釈は文言上無理があるように思います(私見)。
2 日本国憲法第24条にいう「婚姻」とは何か
上記のように「両性」は「男女のみ」を意味すると解釈した場合,同性婚についてはどのように考えればよいのでしょうか。「婚姻」の意味が問題となります。
この点に関し,「婚姻」は「異性婚のみならず,同性婚も含む」と考えることはできるでしょうか。これは説として成り立ち得ません。なぜならば,「両性」を「男女のみ」と解釈する以上,同性婚が男女の合意で成り立つといったことは支離滅裂であるからです。
やはり日本国憲法第24条の「婚姻」の意味については「異性婚のみ」と考えるほかなさそうです。
よって,少なくとも日本国憲法第24条だけをみますと,同性婚は「婚姻」に含まれないこととなります。
そうしますと,日本国憲法第24条は同性婚について何も言及していないこととなります。
すなわち,「同性婚は,日本国憲法で禁止されていない」という帰結となります。当職はこの説を支持したいと思います(そこで,民法上の婚姻の意味を日本国憲法第24条とは異なるものとする立法は可能であると思います。)。
3 将来の展望
現実問題として,日本国で同性婚が公的に認められたケースはありません(しばしば,役所で受理されなかったというニュース報道が見受けられます。)。また,法文の文言には「夫」,「妻」,「夫婦」という文言が使用されていることから,民法学においては,「同性婚は想定されない」という解釈が一般的でしょう。
当職の印象ですが,近時の最高裁判所はかなりリベラルな判断を下しているように感じます。「同性婚を認めない制度運用は憲法違反である」という違憲訴訟が提起される日も遠くはないのかもしれません。
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