刑事事件

刑事事件に関するマスコミ用語を解説す

2015.08.21更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 東京電力福島第一原発の事故をめぐり,検察審査会の議決で東電元幹部3人が「強制起訴」されることとなったことを受け,東京地裁は本日(8月21日),検察官役を務める「指定弁護士」として,石田省三郎,神山啓史,山内久光の3弁護士を指定したと発表しました。

 石田弁護士は,ロッキード事件,リクルート事件で弁護人を務められたほか,東電女性社員殺害事件で,再審無罪となった元被告の弁護も担当されました。大阪地検特捜部の証拠改ざん事件を受けた法相の諮問機関「検察の在り方検討会議」では委員を務められました。

 神山弁護士も東電女性社員殺害事件を担当されています。山内弁護士は,原発事故をめぐって起訴議決をした2度目の審査で審査補助員を務められました。いずれの先生も当職の大先輩です。

 上記「強制起訴」という言葉は,実は法令上の概念ではなく,マスコミの造語です。法令上は,検察審査会の起訴議決制度ともいうべきものです。

 そこで,今回は,検察審査会の起訴議決制度及び刑事事件に関するマスコミ用語について,解説します。

 

1 起訴議決制度とは?

 

 検察官が検察審査会により起訴を相当とする議決を受けた事件について,再度の不起訴処分をした場合に,検察審査会が起訴を相当と認めるときは,起訴議決をする制度のこと(起訴独占主義の例外)であり,平成21年5月21日に施行された刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成16年法律第62号)により導入されました。

 

 起訴議決は次のような過程を経て行われます。

 

 ① 検察審査会が起訴を相当とする議決を下す。

 ② 検察官による再捜査が行われ,起訴するかどうかを決める。ここで起訴した場合は通常の「起訴」となる。

 ③ 検察官による再捜査でも起訴相当と判断されなかった場合,検察審査会は,審査補助員を委託して法律に関する専門的な知見をも踏まえつつ,その再度の不起訴処分の審査を行う(検察審査会法第41条の2,第41条の4)。

 ④ あらかじめ,検察官に対し,検察審査会議に出席して意見を述べる機会を与えたうえで,起訴を相当と認めるときは,起訴議決をする(同法41の6第1項,第2項)。

 ⑤ 起訴議決がされた場合には,裁判所が起訴議決に係る事件について公訴提起及びその維持に当たる者を弁護士の中から指定し(同法41条の9第1項),指定弁護士が速やかに起訴議決に係る事件について公訴を提起しなければならない(同法41条の10)。

 

 マスコミは,⑤の「公訴を提起しなければならない」という点をとらえて「強制起訴」という用語を造ったのでしょう。

 

2 マスコミ用語の解説

 

 「強制起訴」に代表されるように,マスコミは読者や視聴者に分かりやすく伝えるために,いろいろな用語を作っています。以下,それらのうち,刑事事件に関する用語を解説します。

 

 ① 容疑者

 法律用語では「被疑者」です。最近の刑事ドラマ等には,「被疑者」との表現が用いられていますので,馴染みがあるかもしれません。ある見解によりますと,「被疑者(ひぎしゃ)」という音の響きが,「被害者(ひがいしゃ)」と聞き間違えやすいため,「容疑者(ようぎしゃ)」と呼んでいるそうです。

 

 ② 被告

 法律用語では「被告人」です(民事では「被告」といいます。)。かつては,何らの呼称もなかったところ(単に呼び捨てていました。),人権意識の高まりもあり,刑事被告人の呼称として「被告」と呼ぶようになりました。

 

 ③ 軽症,重症,重体

 法律用語にはありませんが,「軽症」=全治1か月未満,「重症」=全治1か月以上,「重体」=生命に関わる状態として使い分けをしているようです。

 

 ④ 「わいせつな行為」と「みだらな行為」(淫行)

 代表的な法文は次のとおりです。

 わいせつな行為:刑法176条前段「13歳以上の男女に対し,暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は,6月以上10年以下の懲役に処する。」

 みだらな行為:東京都青少年育成条例18条の6「何人も,青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行ってはならない。」

 淫行:児童福祉法34条1項6号「何人も次に掲げる行為(児童に淫行をさせる行為)をしてはならない。」

 

 「わいせつ」とは,最高裁判例では「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ,且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反すること」と定義されています(ほとんど意味不明かもしれません。)他方,「みだらな行為」とは,具体的には性交を指します。

 よって,ニュース報道に接する際,「わいせつな行為」=性交なし,「みだらな行為」=性交あり,と判断していただければより分かりやすいでしょう。

 

 ⑤ 「下腹部」,「下半身」

 これまた法律用語ではありません。身体の部位を表しています。

 「下腹部」=陰部,「下半身」=お尻やふともも,をそれぞれ指すと考えておけばよろしいかと思います。 

投稿者: 弁護士濵門俊也