ソーシャルゲームの課金にはご注意を!ー免責不許可事由を考えてみる
2015.11.30更新
こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。
ソーシャルゲームをご存じでしょうか。「基本無料」なので,暇つぶし等で遊んだりしている方も多いかと思います。ただ,ゲームが進むにつれて「基本無料」ではあきたらず(課金しないとアイテム等がゲットできないなど),思わず「課金」してしまったという方もおられるのではないでしょうか(ちなみに,当職の性格上,課金してしまったら最後となりそうなので,絶対に課金をしないようにしています。)。
係るソーシャルゲームの課金に関し,課金のしすぎで多額の借金が生じてしまったといった相談を受けることも最近増えてきました。この潮流を受けてか,昨年4月に大阪地方裁判所第6民事部(倒産部)で破産申立の書式が改訂されたそうです。改訂前は,破産申立てをする際の「免責不許可事由に関する報告」において,「浪費等」の欄には,「飲食・飲酒」「投資・投機及びネットワークビジネス・マルチ商法等」「商品購入」「ギャンブル」と記載され,最後は単に「その他」となっていたそうですが,「その他(ゲーム代その他の有料サイト利用代等)」と変わったそうです。
まず,「免責」とはどういうものでしょうか。免責は,大きな債務を負ってしまった破産申立人の経済的再生を実現するために設けられた制度で,破産手続終了後に残った債務の返済義務を免れる手続を指します。免責されたからといって権利が失われるものではなく,法的な「責」任を「免」れるための手続なのです。
ただし,財産を隠したり,浪費・賭博などによって財産を減少させるなど,破産法252条1項各号に定める「免責不許可事由」がありますと,免責を受けられない場合があります。その趣旨は,モラルハザード(倫理欠如)が起きることを防ぐ点にあります。
今回,大阪地裁の書式が改訂されて「浪費等」の欄に「ゲーム代」が明記されたのは,破産の申立人の中でソーシャルゲームに相当な額をつぎ込んでいる人が増えてきたためであると想像できます。
ゲーム代だけで破産に至る案件を扱ったことはないですが,ただでさえほかの債務を負っているところへ高額のゲーム代が追い打ちをかけて債務額が増大した,という案件は最近増えました。
しかし,誤解してもらいたくないのですが,「浪費等」の免責不許可事由があっても,直ちに免責不許可になるわけではありません。その程度に応じて,「反省文と家計簿を提出する」「免責調査型(大阪地裁では「免責観察型」と呼んでいるそうです。)の管財手続に移行する」などの方法によって免責が受けられることが多いです。
以前から,射幸心を煽るソーシャルゲームは問題視されています。多額の浪費を招き,破産の原因につながる事態が広がれば,ゲーム市場全体にも悪影響を及ぼしかねません。何事もほどほどがよいようです。
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