調停事件の終了事由を学ぶーとくに「なさず」について
2016.02.16更新
こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。
当職は,最近離婚調停や訴訟の案件が増えておりまして,先日ある事件に関し,テレビジョン放送でコメントを求められた際,「離婚問題に詳しい濵門俊也弁護士によれば…」などと紹介されておりました。日に日に新たに精進する毎日であります。
先日ある調停事件に臨みましたところ,裁判官を含めた調停委員会から「本調停は『なさず』で終了させることもご検討ください」と言われました。これに対しては,「当方は誠実に応対しているのであるから,『なさず』との措置は承服できない」と回答しました。
なかなか「なさず」とは聞きませんから,渋いなと唸りました。そこで,今回は,「調停事件の終了事由」について概説します。
調停事件は,一定の事由が生じますと,以後,調停手続として調停をつづけることができなくなります。この場合,事件が係属していた家庭裁判所の手から離れることとなります。このことを「事件の終了」といいます。
調停事件の終了事由としては,つぎの7つがあります。
① 「成立」(その調停について,当事者間で合意ができた)
② 「不成立」(当事者間に合意が成立する見込みがなくなった)
③ 「なさず」(裁判所としては,その事件を取り扱わないこととする)
④ 「取下げ」(調停の申立人が申立てそのものを取り下げてしまった)
⑤ 「当然終了」(調停の当事者が死亡した)
⑥ 「移送」「回付」(その事件を他の家庭裁判所の取扱いとする)
⑦ 「調停に代わる審判」(裁判所が審判で解決案を提示する)
先ほど述べました「なさず」という終了事由は,調停をしない措置のことであり,家事事件手続法第271条に規定があります。
すなわち,家事事件手続法第271条には,「調停委員会は,事件が性質上調停を行うのに適当でないと認めるとき,又は当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをしたと認めるときは,調停をしないものとして,家事調停事件を終了させることができる。」と規定されています。
「事件が性質上調停を行うのに適当でないと認めるとき」とは,求めている調停の内容自体が法律や社会正義に反する場合,たとえば,不貞関係を継続することや認知しないことを条件に一定の金銭の支払をするなどを意味します。
「当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをしたと認めるとき」とは,当事者双方が無断で調停期日に欠席を繰り返す場合や調停制度の趣旨に沿った利用をする意思がないことが明らかな場合です。
「なさず」という終了事由は,いわば調停委員会が調停を行うことは適当でないとして,これを拒否することです。その意味において,かなり厳しい内容といえます。
「なさず」という調停をしない措置は,裁判ではありません。よって,これに対する不服申立てはできません。
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