中傷書評の投稿者情報 アマゾンに開示命令(東京地裁)
2016.04.14更新
こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。
先日平成28年4月11日付け日本経済新聞(夕刊)に画期的な判決が東京地裁で下されていたという報道に接しました(判決日は,平成28年3月25日付けであり,被告が控訴しなかったため,同年4月8日確定しています。)。
【事案】
通販大手アマゾンジャパン(東京都目黒区,以下「アマゾン」といいます。)のサイトに投稿された書評によって社会的評価が低下したとして,本の著者側(東京都内のNPO法人)が同社に対し,投稿者の発信者情報の開示を求めた事案
【本判決の内容】
アマゾンに対し,投稿者のIPアドレスのほか,氏名や住所,メールアドレスの開示を命じるというもの
【本判決の画期的な点】
まず手続面ですが,アマゾン側は訴訟において日本法人のアマゾンジャパンがサイトを運営していることを認めています。海外に本拠を置くネットサービス企業が本国法人以外がサイトを運営していることを認めることは珍しいのです。ただ,これにより,日本国内で訴訟を提起しやすくなりました。
つぎに実体面ですが,通常,匿名である投稿者を特定するには,被害者側がサイト運営会社に対し,IPアドレス(ネット上の住所のようなものです。)開示を求める仮処分を申し立てます。被害者側は,裁判所の命令に基づいてIPアドレスの開示を受けたあと,さらに,プロバイダに対して,IPアドレスの契約者の氏名や住所などの情報を開示するよう求めることとなります。
このように「2段階」の手続が必要だったため,中傷を書き込まれた被害者側にとって,発信者を特定するに当たって期間と費用がかさんでいました。
本判決は,サイト運営会社に対する1回の手続で,IPアドレスだけでなく,氏名や住所,メールアドレスが開示されることとなったわけです。その意味において,本判決は画期的と評価できるのです。
【本判決の特殊性】
どうして本判決のような画期的な判断が下されたのかということを考えるに当たり,開示命令を受けたアマゾンが通販サイトであるという特殊性を無視することはできません。
すなわち,アマゾンは,氏名やメールアドレスなどを登録してアカウントを作成しなければ書評を投稿できない仕組みを取っています。アマゾンは,単にIPアドレスを保有しているだけでなく,通販サイトという特殊性から,アカウント情報として一定の正確性を期待できるユーザー情報(氏名,住所,メールアドレス)も保有しているわけです。
【本判決の及ぼす影響】
本判決によって,少なくとも,アマゾンに関しては1度の手続において権利救済の可能性が認められたこととなります。アマゾンの書評欄が荒らされ,傷つけられるという人が増えているなかで,迅速な被害救済につながることは間違いありません。
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