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4月1日生まれの人は究極の早生まれ!その謎を解く!

2022.04.01更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 本日は令和4年(2022年)4月1日(金)。東京では桜が満開です。今日から新社会人となった方も多くいらっしゃると思います。本当におめでとうございます。コロナ禍はいまだ終息していませんが,ウクライナの民衆の安全も祈りながら,意気軒昂でいきましょう。

 

 さて,よく「早生まれ」といわれますが,わが国の現行制度では4月2日~翌年4月1日生まれの子どもたちが同学年となります。その意味において,4月1日生まれの方は「究極の早生まれ」となります(当職は,すぐに桑田真澄さんが浮かびます。ゆでたまご先生原作で現在も激熱連載されている漫画『キン肉マン』の主人公キン肉マンことキン肉スグル及び運命の5王子も4月1日生まれです。)。

 それでは,なぜ4月1日生まれの方が「早生まれ」なのでしょうか。これには理由があります。今日はエイプリルフールですが,この記事にはうそはありませんので,ご安心ください。

 

 まず,その根拠は,「年齢計算ニ関スル法律」(明治35年12月2日法律第50号)の第1条です。同法第1条は,「年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス」と規定しています。また,同法第2条は,「民法第143条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス」と規定しており,その起算日に応当する日の前日に満了することとされています。

 わが国では,明治以降,年齢の考え方を「数え年」(生まれた時を1歳とし,以降1月1日を迎えた時に1歳を追加する数え方)から,「満年齢」(生まれた時を0歳とし,以降,翌年の誕生日前日の終了をもって1歳を追加する数え方)に変更しました。

 満年齢の考え方によりますと,出生の日である誕生日から起算し,1年が満了すれば,1歳が追加されることとなります。そのため,4月1日が誕生日の方はその前日である3月31日午後12時(24時)に歳を取るわけです。

 ちなみに,この数え方によりますと,閏年の「2月29日生まれの人」は,通常年であっても,閏年であっても,「2月28日に歳を取る」こととなります。

 

 そして,学校教育法施行規則第59条には,「小学校の学年は,4月1日に始まり,翌年3月31日に終わる」と規定されていまして,さらに小学校の入学資格について学校教育法第17条第1項はつぎのように規定しています。

 「保護者は,子の満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから,満12歳に達した日の属する学年の終わりまで,これを小学校又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。」

 これにより,4月1日生まれの方は3月31日に満6歳に達するため,4月1日生まれの方までは小学1年生になれるわけですが,4月2日以降に生まれますと入学は翌年となるのです。

 

【参考条文】

年齢計算ニ関スル法律(明治35年12月2日法律第50号)

1 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス

2 民法第143条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス

3 明治6年第36号布告ハ之ヲ廃止ス

 

民法第143条(暦による期間の計算)

1 週,月又は年によって期間を定めたときは,その期間は,暦に従って計算する。

2 週,月又は年の初めから期間を起算しないときは,その期間は,最後の週,月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし,月又は年によって期間を定めた場合において,最後の月に応当する日がないときは,その月の末日に満了する。

投稿者: 弁護士濵門俊也

木下優樹菜さんと離婚、フジモンが「学費を支払ってる」 養育費は再婚するとどうなる?

2022.03.17更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

弁護士ドットコムニュース編集部の依頼を受けて,記事を書きました。

 

・木下優樹菜さんと離婚、フジモンが「学費を支払ってる」 養育費は再婚するとどうなる?
https://www.bengo4.com/c_18/n_14249/

読んでいただけますと幸いです。

投稿者: 弁護士濵門俊也

PCR検査陽性者は新型コロナウイルス感染者なのか?!

2022.01.21更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 

本日(令和4年1月21日)16時46分配信のニュース報道によりますと「新型コロナ 東京都で新たに9699人の感染確認」とのリード文に「過去最多東京都で,今日新たに9699人が新型コロナウイルスに感染していることがわかった。」とのことでした。

 

すでに2年以上も連日この種の報道に接しているわけですが,いつも違和感をもつのは,私だけでしょうか。

私の違和感は,メディアは「陽性者」と「感染者」が混同されて使用している点にあります。前述の報道もそうですが,ニュース報道等で「新規感染者数」として示される数字ですが,実は厚生労働省や東京都のホームページでは「陽性者」として公表されている数字なのです。この点を正確に報道していないのは何か考えがあるのでしょうか。とくに,情報弱者とされる方々には不安を感じさせるだけではないのかといぶかってしまいます。

 

 

「陽性者」の中には無症状の方も大勢いらっしゃいます。ただ,この方々について,厳密にいいますと「感染者」ではないのです。普通の風邪や季節性のインフルエンザも同じなのですが,ウイルスが体内に侵入し,増殖して初めて「感染」が成立するといわれています。人間(ヒト)には外敵から身を守る「免疫機能」がありますので,仮にウイルスを吸入したとしても必ず感染するわけではないのです。しかし新型コロナの診断に用いられるPCR検査は,粘膜にウイルスが数個でも付着していれば「陽性」になることがあるそうなのです。

 

保健所においては,陽性者との濃厚接触者を割り出し,無症状者でもPCR検査を行っています。陽性者が増えている現在,その数はかなり増えているそうです。

これだけ市中感染が広まってくると,「陽性者」の増加は止めようがないと個人的には考えています。重要なのは拡散リスクが高く,入院を要するような「感染者」を増やさないことではないでしょうか。そのことが医療供給体制の維持に繋がります。ちなみに,一向に医療体制の拡充を図ろうとしないのはよく分かりません。

 

本当に知りたい情報は,現在公表されている「陽性者」の中にどれだけの「感染者」が含まれるのかという点です。情報操作をしていないといいのですが…。

 

また,「無症状陽性者」と「感染者」の対応についても分けて考えた方がいい時期になっているのではないでしょうか。現在は一人でも「陽性者」が出ると,会社や学校等で過剰な反応をしているところが多いように感じます。「感染者」が出た場合はこれまでどおり慎重な対応が必要と思いますが,「無症状陽性者」の場合はより慎重な感染対策を行っていれば,その他は通常通りの営業や授業を継続していいと思います(あくまでも個人的な意見です。)。

 

 

童謡『チューリップ』の歌詞をもじって

「(過去)さいた(最多) (過去)さいた(最多) チューリップの花が」

「ならんだ(並んだ) こえた(超えた)」

と歌っているユーチューバーの方がおられます。これはマスメディアの報道のあり様を皮肉っているわけです。

私もでき得るかぎり,正確な情報を伝えてもらいたい,報道しない自由など行使してほしくないと日々考えています。

投稿者: 弁護士濵門俊也

札幌地裁が画期的判決!「法律上,同性同士が結婚できないことは憲法違反である。」

2021.03.24更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかどとしや)です。

「法律上,同性同士が結婚できないことは憲法違反である。」として,複数の同性カップルらが国を訴えていた国家賠償法に基づく損害賠償請求事件において,札幌地方裁判所(武部知子裁判長)は令和3年3月17日,法の下の平等を定めた憲法14条に違反するとして,我が国で初めて違憲判決を下しました。

【判決書全文は以下のとおり】
https://www.call4.jp/file/pdf/202103/533e3260db61a96e84711d1f0c02d5d6.pdf

【札幌地裁判決の骨子】
1 同性間の婚姻を認める規定を設けていない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定(以下「本件規定」という。)は,憲法24条には違反しない。
2 本件規定は,憲法13条には違反しない。
3 本件規定が,同性愛者に対しては,婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは,立法府の裁量権の範囲を超えたものであって,その限度で憲法14条1項に違反する。
4 本件規定を改廃していないことが,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。

【感想】
判決冒頭部分は,我が国における同性婚の歴史が簡潔にまとめられています。
1 「性的指向とは,人が情緒的,感情的,性的な意味で,人に対して魅力を感じることであ」ると定義します。このような恋愛・性愛の対象が異性に対して向くことが「異性愛」,同性に対して向くことが「同性愛」ですが,札幌地裁判決は「人の意思によって,選択・変更し得るものではない」という点を強調します。
2 明治期において,「同性愛」は,「精神疾患であって治療すべきもの,絶対に禁止すべきもの」とされていたそうです。
3 戦後から昭和55年ころまでの間においても,「同性愛」は,「精神疾患であって治療すべきもの」とされ,教育領域においても,「健全な社会道徳に反し,性の秩序を乱す行為となり得るもの」とされた。昭和22年には現行民法に改正されましたが,「婚姻とは,社会通念による夫婦関係を築く男女の精神的・肉体的結合である」などと解され,「同性婚」は当然に認められないものとされていました。
4 しかしながら,昭和48年(1973年)以降,米国精神医学会や世界保健機関が,相次いで「同性愛は精神疾患ではない」ことを明らかにし,我が国においても,昭和56年(1981年)ころから同様の医学的知見が広がり始めました。
5 諸外国において,「同性婚又は登録パートナーシップ制度を導入する国」が増え,「同性婚を認めない法制度が憲法に違反するとの司法判断が示される国」もありました。我が国においても,平成27年(2015年)以降,「登録パートナーシップ制度を導入する地方公共団体が増加」しています。
6 平成27年(2015年)以降に行われた意識調査によれば,「同性婚又は同性愛者のカップルに対する法的保護に肯定的な者は,おおむね半数程度である」ことが示されています。しかし,年代別にみたときには,「50代までの世代においては,肯定的な回答が多いものの,60歳以上の世代においては,否定的な回答が多い」ことが示されています。

同性愛が精神疾患であって,治療されるべきものとされていた時代があったとは,新たな発見でした。いわゆるLGBTqの方々には大きな第一歩であり,画期的な判決であったことと思います。多様性の時代と言われて久しいですが,司法は動きました。果たして,国権の最高機関であり,唯一の立法機関はどう動くでしょうか。

投稿者: 弁護士濵門俊也

令和2年11月25日大法廷判決 地方議会議員に対する出席停止についての司法審査の可否(60年ぶりの判例変更)

2020.12.02更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

最高裁判所大法廷は,令和2年11月25日,「地方議会による議員に対する出席停止の懲罰の適否は,部分社会の法理により,司法審査の対象外である」としていた村会議員出席停止事件判決(最大判昭和35年10月19日民集14巻12号2633頁)等を変更する判決(以下「令和2年判決」といいます。)を下しました。
実に60年ぶりの判例変更であり,今後の実務にも大きく影響を与えるものであると思いますので,今回は令和2年判決の解説をしてみたいと思います。

●令和2年判決以前の判例理論である部分社会の法理

令和2年判決以前の最高裁は,団体の内部紛争に対する司法審査の限界について,「それが一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り,…司法審査の対象にならない」とする理論を採用していました。いわゆる「部分社会の法理」と呼ばれる理論です。

「裁判所法3条の…一切の法律上の争訟とはあらゆる法律上の係争という意味ではない」とする上記村会議員出席停止事件判決の判旨や「裁判所法3条1項…にいう一切の法律上の争訟とはあらゆる法律上の係争を意味するものではない。」とする富山大学単位不認定事件判決(最判昭和52年3月15日民集31巻2号234頁)の判旨からしても,従来の最高裁の「部分社会の法理」は,団体の内部紛争に対する司法審査の限界について,少なくとも第一次的には「法律上の争訟性の有無」の問題として捉え,「一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる」団体の内部問題については司法審査の対象外に位置づけるという見解であると理解することができます。

かつての最高裁判例は,上記意味における「部分社会の法理」を前提として,地方議会議員に対する出席停止の懲罰の適否を「一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる」として司法審査の対象外に位置づけていたと理解することとなります。

●令和2年11月25日大法廷判決の考え方

⑴ 法律上の争訟性の有無

まず,令和2年判決は,⑴「出席停止の懲罰を科された議員がその取消しを求める訴えは,法令の規定に基づく処分の取消しを求めるものであって,その性質上,法令の適用によって終局的に解決し得るものというべきである。」と判示しています。

この点について,宇賀克也裁判官の補足意見では,「法律上の争訟は,①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,②それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られるとする当審の判例…に照らし,地方議会議員に対する出席停止の懲罰の取消しを求める訴えが,①②の要件を満たす以上,法律上の争訟に当たることは明らかであると思われる。」と述べられていることからすると,上記⑴は法律上の争訟性を肯定するものであると考えられます。

⑵ 団体の内部問題に対する司法審査の可否

つぎに,令和2年判決は,⑵地方議会議員に対する出席停止の懲罰に対する可否について,㋐地方議会が議員を懲罰する「権能は上記の自律的な権能の一内容を構成する」とする一方で,㋑「議員は,憲法上の住民自治の原則を具現化するため,議会が行う…各事項等について,議事に参与し,議決に加わるなどして,住民の代表としてその意思を当該普通地方公共団体の意思決定に反映させるべく活動する責務を負うものである」ことと,㋒「出席停止の懲罰…が科されると,当該議員は…議員としての中核的な活動をすることができず,住民の負託を受けた議員としての責務を十分に果たすことができなくなる」ことを理由に,㋓「出席停止の懲罰の性質や議員活動に対する制約の程度に照らすと,…その適否が専ら議会の自主的,自律的な解決に委ねられるべきであるということはできない」として,㋔「出席停止の懲罰は,議会の自律的な権能に基づいてされたものとして,議会に一定の裁量が認められるべきであるものの,裁判所は,常にその適否を判断することができるというべきである」と結論付けることにより,「常に司法審査の対象となるという立場」に立ち,村会議員出席停止事件判決等を変更しています。

この点について,宇賀克也裁判官の補足意見では,法律上の争訟性を肯定した上で「司法権に対する外在的制約があるとして司法審査の対象外とするのは,かかる例外を正当化する憲法上の根拠がある場合に厳格に限定される必要がある。」と述べられています。

上記の㋐・㋑・㋒の考慮要素と㋓の「その適否が専ら議会の自主的,自律的な解決に委ねられるべきであるということはできない」という部分からすると,令和2年判決は,団体の内部問題に対する司法審査の可否について,「団体の自主性・自律性を尊重する必要性」と「司法審査の途を開く必要性」と比較衡量することにより,「その適否が専ら団体の自主的・自律的な解決に委ねられるべきか」という上位規範への該当性判断を通じて決するという枠組みを採用していると理解することができます。

「司法審査の途を開く必要性」としては,通常は,団体構成員である個人の権利利益の保護(あるいは,憲法32条が保障する裁判を受ける権利)を問題にすることとなりますが,地方議会議員に対する懲罰の事案では,議員個人の権利利益の保護よりも,憲法上の住民自治の原則を具現化する上での障害を問題にすることになります。

⑶ 司法審査をする際には団体の自主性・自律性にも配慮する

最後に,令和2年判決は,地方議会議員に対する出席停止の懲罰について「裁判所は,常にその適否を判断することができる」と判示することにより常に司法審査の対象になることを認める一方で,「出席停止の懲罰は,議会の自律的な権能に基づいてされたものとして,議会に一定の裁量が認められるべきである」と判示することにより,「門前払いにすることなく司法審査の対象にする一方で,地方議会の自律性にも配慮するために,地方議会の懲罰についての裁量を広めに認める形で出席停止の懲罰の適否を判断するべきである」という立場を明らかにしていると理解することができます。

この点について,宇賀克也裁判官の補足意見でも,「地方議会議員に対する出席停止の懲罰の適否を司法審査の対象としても,地方議会の自律性を全面的に否定することにはならない。懲罰の実体判断については,議会に裁量が認められ,裁量権の行使が違法になるのは,それが逸脱又は濫用に当たる場合に限られ,地方議会の自律性は,裁量権の余地を大きくする方向に作用する。したがって,地方議会議員に対する出席停止の懲罰の適否を司法審査の対象とした場合,濫用的な懲罰は抑止されることが期待できるが,過度に地方議会の自律性を阻害することにはならないと考える。」と述べられています。

 

投稿者: 弁護士濵門俊也

「車を運転していたら,他人の飼い犬を轢いてしまった!」ー法律上はどう扱われるの?

2020.10.30更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

昨日来,将来有望な若手俳優がひき逃げ事故を起こし,逮捕されたという話題で持ち切りですが,「車を運転していたら,他人の飼い犬を轢いてしまった」という相談もたまに受けます。飼い犬,飼い主にとっては,当然ショッキングな出来事ですが,轢いてしまった方にも悲しみと困惑を与える事故であることは間違いありません。
ある方は,飼い犬の死を悼みながらも「ペットの飼い主は,リード類をつけずに散歩させていた」と,飼い主側の過失を主張されていました。
交通事故の相手が犬だった場合,法律上どのように処分されるのでしょうか。その辺りを解説します。

●ペットは法律上「物」として扱われる

ペット(動物)は,家族の一員と思っている飼い主の方々は納得できないかと思いますが,動物は,法律上「物」として扱われます。

また,わざと(故意に)動物に傷害を加えることは,刑法261条の動物傷害罪や動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法)で処罰される可能性がありますが,不注意(過失)により動物に傷害を加えてもこれらの罪は成立しません。

そして,不注意(過失)の場合でも,民事上の損害賠償責任を負う可能性はあります。
ペットは「物」ですから,物損としての損害は認められますが,時価を限度とします。
慰謝料はといいますと,「物」である以上,残念なことに慰謝料は認められないのが「原則」です。
ただ,「ペットは家族同然」と思われている飼い主の方々も多くいらっしゃると思います。最近では,時価を超える治療費や慰謝料が認められた裁判例もあるようです。
その場合でも飼い主がどのようにペットを管理していたのか,事故態様がどのようなものだったか等,案件によっては過失割合が問題となるケースは多いと思います。

●「危険防止等措置義務」と「報告義務」

では,道路交通法上はどのように扱われるのでしょうか。
道路交通法上,動物を轢いた場合に関する規定はなく,「原則として」減点や罰金などの罰則が科せられることもありません。
ただ,動物との交通事故は,車両等による物の損壊として「物損事故」となります。道路交通法72条1項は,物損事故を起こした者にも「危険防止等措置義務」と「報告義務」を課しています。
そして,危険防止等措置義務違反の場合には「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する」(道交法117条の5第1号)とされ,報告義務違反の場合には「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する」(道交法119条1項10号)とされています。
よって,ただ物損事故を起こしただけでは刑事責任を問われることはありませんが,危険防止等措置義務や報告義務に違反すると刑事罰を受ける可能性があり得るということになります。
危険防止等措置義務違反があれば,行政処分の対象となり,免許の点数が引かれてしまうことも考えられます(先ほど「原則として」と説明したのはこの点を考慮しています。)。他人のペットを轢き殺してしまった場合には物損事故となりますので,その場から立ち去るのではなく,危険防止措置を講じた上で,必ず警察に報告すべきです。

投稿者: 弁護士濵門俊也

承継的共同正犯の解説

2020.10.16更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかどとしや)です。

 

当事務所のルーキー弁護士は,出身大学の司法試験受験生の指導をしているのですが,明日のゼミで,旧司法試験刑法の論文過去問を使用するとのことで,レジュメを作成しておりました。そのうちの1問が平成3年度第1問であり,承継的共同正犯の肯否が論点となります。

何だか懐かしくなり,本ブログを書こうと思いました。今回は,承継的共同正犯を解説します。

 

①承継的共同正犯の意義

承継的共同正犯とは,先に犯罪の実行に着手した先行者の実行行為が終了する前に,後行者が,先行者と意思連絡して共謀した上で残りの実行行為に関与する形態の共犯をいいます。承継的共同正犯は,途中参加型の共同正犯であり,途中参加した後行者にどの範囲で共同正犯が成立するかが問題となります。
例えば,先行者が強盗をする意思で暴行・脅迫を加え被害者の反抗を抑圧していたところ,その後,後行者が,自分も利益を得たいと思い,先行者と意思の連絡をした上で被害者の意思に反して財物の占有を奪った場合において,少なくとも後行者は共謀後の犯罪事実については,共同正犯の成立要件(①犯罪の共謀,②正犯性,③共謀に基づく実行行為)を満たすのであれば,占有者の意思に反して財物を奪った行為について,窃盗罪の共同正犯の罪責を負うことはとくに問題ないと思います。ここで問題となるのは,後行者が,承継的共同正犯として強盗罪の共同正犯の罪責を負うかという点にあります。

 

②承継的共同正犯の理論的根拠

Ⅰ 全面肯定説

継続犯,結合犯,結果的加重犯など先行者の犯罪が一罪である犯罪については,単純一罪の犯罪は不可分であることから,後行者が先行者と意思を連絡して先行者に加担した場合には,後行者に行為全体について責任を問い得るとする見解があります。
この見解は,戦後間もないの下級審の裁判例やかつての学説では支持されていたようですが,何を一罪として扱うかは,後行者の可罰性とは無関係な立法政策により決まることなので,後行者が先行者による一罪の一部に加担したことだけを理由に後行者に共同正犯の罪責を負わせられないとの批判が向けられており現在は支持を失っているようです。

Ⅱ 全面否定説

共同正犯の一部行為全部責任の根拠を,複数の者が共同して犯罪を実行することで物理的,心理的に影響を及ぼし合うことによって犯罪の結果発生の蓋然性を高めたところに求める見解(因果的共犯論)から,後行者は,自己の関与前の先行者の行為によりもたらされた事象について物理的,心理的に影響を及ぼし得ないため,後行者は,関与以前の事象について罪責を負わないとする見解があります。原則論としては,全面否定説が説得力があるのではないでしょうか。

 

Ⅲ 限定肯定説

承継的共同正犯を一定の範囲で認める限定肯定説があります。これは原則否定説に立ちながらも,例外的に肯定する説であり,説明方法としてはいくつかあります。

見解の1つとして,共同正犯の処罰根拠につき相互利用補充関係説に立った上で,後行者が先行者の行為と結果を自己の犯罪の手段として積極的に利用した場合は,自己の関与前の行為と結果についても承継的共同正犯として共同正犯の罪責を負うとの見解があります(積極利用意思説と名付けます。)。後に述べる最決平 24.11.6刑集66巻11号1281頁(以下「平成24年最高裁決定」といいます。)が登場する以前は下級審の裁判例(大阪高判昭 62.7.10 等)でよくみられていた見解です。

別の見解の1つとして,共同正犯の処罰根拠についてき因果的共犯論(構成要件該当事実の共同惹起)に立った上で,後行者が,自己の関与以前の先行者の行為に因果性をもつことはあり得ないが,関与の時点で,先行者の行為の効果が継続して存在し,後行者がその効果を利用して先行者と共同して違法結果を実現した場合に,当該結果惹起について因果性を及ぼしたものとして承継的共同正犯として共同正犯の罪責を負うとの見解があります(結果共同惹起説と名付けます。)。平成24年最高裁決定の千葉勝美裁判官の補足意見はこの見解と整合します。この見解は,積極利用意思説のように後行者の積極的な利用意思は承継の要件とはなっていないのがポイントです。

 

③限定肯定説を採用したと解される最高裁

平成24年最高裁決定の事案は,先行者Aらが被害者に暴行を加えて傷害を負わせたところ,その後,後行者である被告人は,先行者の行為とそれによる結果を認識し,さらに,先行者と共謀の上,被害者に暴行を加えて先行者が生じさせた傷害の結果をより重くしたという事実関係のもとにおいて,後行者が,自ら被害者に負わせた傷害結果のほかに,傷害罪の承継的共同正犯として先行者が生じさせた傷害の結果についても罪責を負うのかが問題となったというものです。
平成24年最高裁決定は,被告人は,共謀加担前にAらが既に生じさせていた傷害結果については,被告人の共謀及びそれに基づく行為がこれと因果関係を有することはないから,傷害罪の共同正犯としての責任を負うことはなく,共謀加担後の傷害を引き起こすに足りる暴行によってCらの傷害の発生に寄与したことについてのみ,傷害罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当と判断しました。

 

ちなみに,平成24年最高裁決定には,千葉勝美裁判官の補足意見があります。

「承継的共同正犯において後行者が共同正犯としての責任を負うかについては,強盗,恐喝,詐欺等の罪責を負わせる場合には,共謀加担前の先行者の行為の効果を利用することによって犯罪の結果〔注:強取,喝取,詐取という犯罪の結果〕について因果関係を持ち,犯罪が成立する場合があり得るので,承継的共同正犯の成立を認め得るであろうが,少なくとも傷害罪については,このような因果関係は認め難いので(先行者による暴行・傷害が,単に,後行者の暴行の動機や契機になることがあるに過ぎない。),承継的共同正犯の成立を認め得る場合は,容易には想定し難い。」

平成24年最高裁決定は,傷害罪の事案で承継的共同正犯を否定したものですが,この決定の法廷意見だけからだけですと,最高裁が,承継的共同正犯について全面否定説を採用しているのか,限定肯定説を採用しているのかが不明でした。もっとも,平成24年最高裁決定における千葉勝美裁判官の補足意見をみると限定肯定説を採用しているのではないかということは推察できました。

その後,最決平29.12.11刑集第71巻10号535頁(以下「平成29年最高裁決定」といいます。)は,先行者が欺罔行為をした後に後行者が財物の受領行為にだけ関わったが未遂に終わったという詐欺未遂罪の承継的共同正犯の成否が問題となった事案で「被告人は,本件詐欺につき,共犯者による本件欺罔行為がされた後,だまされたふり作戦が開始されたことを認識せずに,共犯者らと共謀の上,本件詐欺を完遂する上で本件欺罔行為と一体のものとして予定されていた本件受領行為に関与している。そうすると,だまされたふり作戦の開始いかんにかかわらず,被告人は,その加功前の本件欺罔行為の点も含めた本件詐欺につき,詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当」と判示して共同正犯の成立を肯定したのです。この平成29年最高裁決定により,最高裁が,承継的共同正犯につき限定肯定説を採用していることが明らかとなりました。

投稿者: 弁護士濵門俊也

大麻取締法が「所持」のみを処罰し,「使用」を処罰していないわけ

2020.09.10更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

本日,被疑者国選担当日なのですが,早速,事件の配点がありました。罪名は「大麻取締法違反(所持)」の罪です。数日前には,著名な俳優さんが同罪で逮捕されたというニュース報道がありました。結構見たい作品に出演されておられたので,作品がお蔵入りしないことを切に希望します。大麻取締法違反といいますが,具体的な実行行為は「所持」です。「所持」罪について所有の意思,所有権の有無は問われません(覚せい剤の所持について,東京高判昭和50年4月28日高検速報2100参照)。

皆さんもご存じかもしれませんが,大麻の使用は,一般には処罰の対象とはされていません。大麻取扱者が所持の目的以外の目的に大麻を使用した場合に処罰されるだけです(大麻取締法3条2項,同法24条の3)。この場合の法定刑は,5年以下の懲役,営利の場合,7年以下の懲役又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金です(未遂罪も処罰されます。)。

そもそも,大麻取締法は,大麻草全体を規制対象にはしていません。大麻取締法が規制対象としている大麻とは,大麻草(カンナビス・サティバ・エル…学名)及びその製品をいい,大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く),大麻草の種子及びその製品は除かれます(大麻取締法1条)。すなわち,大麻草の成熟した茎や種子を持っていたとしても「所持」には当たらないのです。

そうしますと,その理由が気になりますよね。そこで今回は,大麻取締法違反が大麻草の成熟した茎や種子を持っていることを「所持」として処罰していない理由や「使用」を処罰していない理由を解説します。

●大麻草の成熟した茎や種子を持っていても「所持」にならない理由:大麻草全体に有害な物質が含まれているわけではないから

理由ですが,「大麻草全体に有害な物質が含まれているというわけではないから」です。大麻は,その成分中のテトラヒドロカンナノビールが中枢神経に作用し,著しい向精神作用を示すのです。このテトラヒドロカンナノビールという成分が,大麻特有の妄想,幻覚,恐怖状態,錯乱状態などを引き起こし,有害性があるとされるのです。また,テトラヒドロカンナノビールは,大麻草の樹液に多く含まれ,大麻草の花や葉っぱにはこの樹液が多く含まれているのに対し,成熟した茎や種子にはテトラヒドロカンナノビール成分はほとんど含まれていないのです。
日本在来種の麻も大麻なのですが,日本では伝統的に茎の部分は麻織物や麻縄に利用され,種子の部分は七味唐辛子に使用されるなどして日常生活に深く染み込んでいます。こうしたことから「成熟した茎や種子の部分は有害性がほとんどない」として規制対象から外されたのです。

●大麻の「使用」を処罰していない理由:罪刑法定主義の要請

「有害性がほとんどない」といいましたが,これは成熟した茎や種子にまったくテトラヒドロカンナノビールが含まれていないというわけではなく,微量なテトラヒドロカンナノビールが含まれていることがあることを意味します。そのため,この茎や種子が体内に入った場合に,尿検査で微量な大麻成分(テトラヒドロカンナノビール)が検出されることが絶対にないとはいえないわけです。
そしてもっと重要なことは,尿として排出された大麻成分が,大麻の茎の部分であったのか,種子の部分であったのか,それとも樹脂(樹液が固まったもの)や花の部分や草の部分であったのか,特定できないことです。すなわち,尿検査で大麻の陽性反応が出たからといって,それが規制対象である大麻の花や葉っぱ,あるいは大麻樹脂といわれるものをその人が摂取したとは必ずしも言えなくなるわけです。
そこで,覚せい剤とは異なり,大麻について,使用罪は処罰範囲から除外されたのです。決して有害性がほとんどないから大目に見て処罰していないわけではありません。刑法の大原則である罪刑法定主義の要請から処罰範囲を限定化・明確化すべく不処罰とされているのです。

【参考文献】 シリーズ捜査実務全書8・藤永幸治編集代表『薬物犯罪』(第2版・東京法令出版)

 

投稿者: 弁護士濵門俊也

甲子園球場ライブ『安全地帯 IN 甲子園球場 “さよならゲーム”』

2019.11.18更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかどとしや)です。

去る11月16日,初の甲子園球場ライブ『安全地帯 IN 甲子園球場 “さよならゲーム”』に行ってきました(高校球児の聖地・甲子園球場にテンションも上がりました。)。
1985年8月の横浜スタジアム公演(DVDで何度も視ました。)以来34年ぶりのスタジアムライブで3万8000人を動員したそうです(この3万8000分の1になれたことを光栄に思います。)。
脳内出血によるリハビリ中のドラムス・田中裕二さんはいませんでしたが(もちろん,魂はドラムスティックに投影されていました。),アンコールを含む全22曲(SEのEndlessを含めると24曲),2時間のステージを満喫しました。

開催時間はおして15時20分すぎにスタート。オープニングアクトは「We’re Alive」。ライブの鉄板曲です。“見渡す限りの甲子園球場に”とお約束の歌詞を替えて歌ってくれました。その後「情熱」「銀色のピストル」と続き,「1991年からの警告」へ(最近「1991年の警告」を歌われるライブが多い気がしますが気のせいでしょうか。)。甲子園球場の熱気が高まっていきました。「熱視線」では,曲に合わせてステージ前方から火柱が上がる演出もありました。

前半のクライマックスは「恋の予感」「碧い瞳のエリス」「Friend」の怒涛の三連打。前半戦でほぼ勝利は確定です。

ワタユタケさんと六土さんによるインストゥルメンタル「夕暮れ」を挟み,衣装替えした玉置さんが再登場しての後半戦は,「夢のつづき」から(「夢のつづき」を最近歌ってくださるのが嬉しいです。)。ようやく日が暮れて,いい感じのシチュエーションとも絶妙にシンクロしての「あなたに」。お待ちかねの「ワインレッドの心」,「蒼いバラ」と畳み掛けます(今回の「蒼いバラ」はぐっと来ましたね。)。
「真夜中すぎの恋」では,ダンサブルなビートと激しいスクラッチで最高潮へ(「真夜中すぎの恋」は2010ver.で大きく変貌を遂げました。実にいい。)。曲間では玉置さんがギターを抱えたままステージから降りて,阪神甲子園球場の外野センターからライト,一塁側,ホームベース,三塁側,レフトと広大なグランドの外周を走り抜けるというサプライズが。場内はさらに熱狂し,ロングランニングを終えた玉置さんがステージ上に戻ってくると,「じれったい」へと突入。甲子園球場を怒涛のピークタイムへと誘いました。

本編のクライマックスは,ドラムスの田中さんの代役を務めたホセ・コロンさんを含むメンバー全員の紹介を挟んで,「悲しみにさよなら」へ。すっかり日が暮れてきた中で奏でられたラストの「ひとりぼっちのエール」では,曲の後半に観衆が携帯電話の画面をライト代わりに掲げました。期せずして,甲子園全体が光の渦に覆われていくようなフィナーレを演出することとなりました。

そして,アンコール前にはステージ上のスクリーンに入場時に配られていたジェット風船を膨らませてご準備くださいという指示が映され,場内が白いジェット風船で鮮やかに埋め尽くされると,「I Love Youからはじめよう」が始まるとともに一斉に風船が宙に舞い,甲子園ならではの演出で再び盛り上がりをみせ,後半にはカラフルな花吹雪も舞っての大団円へ。
続くアンコール2曲目の「あの頃へ」では,スクリーンにメンバーの出身地である北海道を連想させる雪山の映像が映され,エンディングはステージ上に白い雪が美しく舞い始め,SEの「Endless」が流れます。
“さよならゲーム”の名にふさわしい劇的で大興奮のライブでした。日曜は東京で私を待っている人らがいたので,大阪には滞在せず,帰京しました。

投稿者: 弁護士濵門俊也

私戦予備・陰謀罪の解説

2019.07.03更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

ニュース報道によりますと,過激派組織「イスラム国」(IS)の戦闘員になるため,シリアへの渡航準備をしたなどとして,警視庁公安部は3日,私戦予備罪の被疑事実で,当時北海道大生であった男性(31歳)とイスラム法学者の元同志社大学教授(58歳)ら5人を書類送検したそうです。公安部は起訴を求める厳重処分の意見を付けたそうです。刑法の施行以降,同被疑事実の適用は初めてです。
他に書類送検されたのは,元北大生と同様に戦闘に参加しようとした千葉県在住の20代男性や,支援したジャーナリスト(50歳),30代の男性です。
公安部などによりますと,一部は「ISに加わり,戦闘員として働こうとしていた」と被疑事実を認めているようです。元教授とジャーナリストらはIS側と連絡を取って支援を依頼したり,航空券を購入したりしていたといいます。
送検被疑事実は平成26年(2014年)8月ころ,ISの戦闘活動に参加する目的でシリアへの渡航を企てたというものです。
「私戦予備罪」「刑法施行初の適用」とは,注目せざるを得ません。今回は,私戦予備・陰謀罪について解説します。

●保護法益(本質)

私戦予備・陰謀罪は国交に関する罪の一つです。その保護法益(本質)については,①正常な外交関係を危うくし,ひいては国家の対外的安全を害する罪と解されてきました。これに対し,戦後の多数説は,②国際法上の義務に基づいて外国の法益を保護する罪と解しています。しかし,日本の刑法が外国の法益を保護するのは不自然であるとして,③日本の外交上の利益であるとする見解が近時有力となっているようです。

●条文

刑法第93条 外国に対して私的に戦闘行為をする目的で,その予備又は陰謀をした者は,3月以上5年以下の禁錮に処する。ただし,自首した者は,その刑を免除する。

●構成要件

本罪は目的犯です。
「外国」とは,外国の一地方や特定の外国人の集団ではなく,国家としての外国です。よって,外国において外国人を殺傷したり,略奪行為を行う場合は含まれません。
「私的な戦闘行為」とは,わが国の意思によらない組織的な武力行為(武力による攻撃・防御)をいいます。ご承知のとおり,日本国憲法第9条1項は,国権の発動としての戦争と武力による威嚇又は武力の行使を禁じています。
「予備」とは,兵器の調達や兵士の訓練等,外国との戦闘の準備行為一般を指します。
「陰謀」とは,私戦の実行を目指して複数の者が犯罪意思をもって謀議することです。
本罪は,予備・陰謀を処罰するのみであり,私的な戦闘行為自体は処罰されていません。それは,殺人罪(刑法199条)や放火罪(刑法108条以下)等によって処罰されることとなります。
本罪では,私戦を未然に防ぐという政策的理由から,自首による刑の免除が認められています(刑法93条ただし書)。通常の自首(刑法42条1項,刑の任意的減軽)の特別規定です。

●コメント

私戦予備・陰謀罪の法定刑は「3月以上5年以下」ですから,公訴時効は5年です(刑事訴訟法250条2項5号)。公訴時効にかかる前に何とか書類送検したということがいえます。今回,公安部は起訴を求める厳重処分の意見を付けたそうですが,上記にみたとおり,「外国に対して」の構成要件を満たすかどうかが問題となりそうです。果たして初の起訴となるか注目です。

【参考文献】
前田雅英著『刑法各論講義』(東京大学出版会)
大塚裕史・十河太朗・塩谷毅・豊田兼彦著『基本刑法Ⅱ』(日本評論社)

 

投稿者: 弁護士濵門俊也