法律一般

4月1日生まれの人は究極の早生まれ!その謎を解く!

2022.04.01更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 本日は令和4年(2022年)4月1日(金)。東京では桜が満開です。今日から新社会人となった方も多くいらっしゃると思います。本当におめでとうございます。コロナ禍はいまだ終息していませんが,ウクライナの民衆の安全も祈りながら,意気軒昂でいきましょう。

 

 さて,よく「早生まれ」といわれますが,わが国の現行制度では4月2日~翌年4月1日生まれの子どもたちが同学年となります。その意味において,4月1日生まれの方は「究極の早生まれ」となります(当職は,すぐに桑田真澄さんが浮かびます。ゆでたまご先生原作で現在も激熱連載されている漫画『キン肉マン』の主人公キン肉マンことキン肉スグル及び運命の5王子も4月1日生まれです。)。

 それでは,なぜ4月1日生まれの方が「早生まれ」なのでしょうか。これには理由があります。今日はエイプリルフールですが,この記事にはうそはありませんので,ご安心ください。

 

 まず,その根拠は,「年齢計算ニ関スル法律」(明治35年12月2日法律第50号)の第1条です。同法第1条は,「年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス」と規定しています。また,同法第2条は,「民法第143条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス」と規定しており,その起算日に応当する日の前日に満了することとされています。

 わが国では,明治以降,年齢の考え方を「数え年」(生まれた時を1歳とし,以降1月1日を迎えた時に1歳を追加する数え方)から,「満年齢」(生まれた時を0歳とし,以降,翌年の誕生日前日の終了をもって1歳を追加する数え方)に変更しました。

 満年齢の考え方によりますと,出生の日である誕生日から起算し,1年が満了すれば,1歳が追加されることとなります。そのため,4月1日が誕生日の方はその前日である3月31日午後12時(24時)に歳を取るわけです。

 ちなみに,この数え方によりますと,閏年の「2月29日生まれの人」は,通常年であっても,閏年であっても,「2月28日に歳を取る」こととなります。

 

 そして,学校教育法施行規則第59条には,「小学校の学年は,4月1日に始まり,翌年3月31日に終わる」と規定されていまして,さらに小学校の入学資格について学校教育法第17条第1項はつぎのように規定しています。

 「保護者は,子の満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから,満12歳に達した日の属する学年の終わりまで,これを小学校又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。」

 これにより,4月1日生まれの方は3月31日に満6歳に達するため,4月1日生まれの方までは小学1年生になれるわけですが,4月2日以降に生まれますと入学は翌年となるのです。

 

【参考条文】

年齢計算ニ関スル法律(明治35年12月2日法律第50号)

1 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス

2 民法第143条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス

3 明治6年第36号布告ハ之ヲ廃止ス

 

民法第143条(暦による期間の計算)

1 週,月又は年によって期間を定めたときは,その期間は,暦に従って計算する。

2 週,月又は年の初めから期間を起算しないときは,その期間は,最後の週,月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし,月又は年によって期間を定めた場合において,最後の月に応当する日がないときは,その月の末日に満了する。

投稿者: 弁護士濵門俊也

新型コロナウイルス感染症の事務は,法定受託事務か?自治事務か?

2022.02.02更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 

新型コロナウイルス感染症がまん延し,マスメディアは連日「過去最多」を報道しています。とくに変異株オミクロン株の流行もあり,依然終息の見通しが立っていない状況です。そのため多くの分野において先行きが不透明な状態です。ワクチンのブースター接種も始まり地方自治体が取り組むべき問題の局面も徐々に移行しています。

そもそも,地方自治体の目的は「住民の福祉の増進」(地方自治法1条の2第1項)です。そのため,各地方自治体は,新型コロナウイルス感染症に対し,多くの政策を実施してきましたし,現在も実施しています。

 

今回は,地方自治体が取り組む新型コロナウイルス感染症の対応について解説します。

 

 

  • 新型コロナウイルス感染症の事務は,法定受託事務か?自治事務か?

新型コロナウイルス感染症に対応する法的根拠は「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以下「特措法」といいます。)です。特措法は新型インフルエンザ等感染症に対する対策強化を図ることにより,国民の生命や健康を保護し,生活や経済への影響を最小にすることを目的としています。もちろん,現在,我が国に襲来している新型コロナウイルス感染症にも対応しています。

 

特措法74条には「この法律の規定により地方公共団体が処理することとされている事務は,地方自治法第2条第9項第1号に規定する第1号法定受託事務とする」と規定されています。すなわち,新型コロナウイルス感染症の対応は「法定受託事務」なのです。

 

 

  • 法定受託事務と自治事務の定義

ここにいいます「法定受託事務」とは「国が本来果たすべき役割に係る事務であって,国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの」(地方自治法2条9項)と定義されています。

他方,自治事務とは「地方公共団体の処理する事務のうち,法定受託事務を除いたもの」(同法8項)です。

 

法定受託事務なので,国が率先して方針等を決めていく必要があります(果たして現政権はどうでしょうか。)。しかし,特措法は知事に営業自粛の要請(31条の6)など多くの権限を与えています。そのため一見すると自治事務という錯覚に陥る場面があります。法定受託事務の趣旨からは,国がリーダーシップを発揮すべきと思うのですが,知事にもリーダーシップを認めているというイメージです。

 

 

  • 「臨時特別給付金」の給付事務は「自治事務」なのに!?

また,国民一人当たり10万円が給付された「特別定額給付金」の給付事務は,実は,市区町村の「自治事務」なのです。

昨年末すったもんだがあった,「子育て世代への臨時特別給付金」の支給については,当初の政府の計画では、まず現金で5万円を支給した後,残りの5万円分はクーポンでの支給を基本とする想定でした。その後の議論で,クーポンではなく現金での支給が容認された結果,市区町村ごとに3つの方式がある形になっています。

そもそも「臨時特別給付金」の給付事務は「自治事務」なのですから,どうして上記のような混乱が生じたのかよく分からない点はあります。係る混乱が生じた背景には,当初,政府は「児童手当」の枠組みを利用しようとしたからということがあると思います。「児童手当」の給付事務は「法定受託事務」になります。既存の制度を利用できることからメリットも大きいと安直に考えたのかもしれませんが,かえって柔軟さを欠くことになり,手続も煩雑になるという愚を犯したことになります。このことはすぐに理解できたはずなのですが,「きほんのき」をおろそかにすると混乱を招くわけです。

 

 

  • ワクチン接種事務は「自治事務」

3回目のブースター接種が始まったワクチンの接種事務は「法定受託事務」です。新型コロナウイルス感染症の対応がケースにより主体が異なってくるわけです。そのため複雑化します。一見するとよく分からない状況ですが,国民からすれば,国であろうが,都道府県であろうが,市区町村であろうが,確実に新型コロナウイルス感染症の対策が実施されればいいのではないかと考えてしまいます。

 

さらに,保健所を設置しているか否かで,新型コロナウイルス感染症の具体的な対応も異なってきます。保健所は,都道府県,政令指定都市,中核市,特別区が設置しています(地域保健法第5条)。このような法的な限界により,地方自治体により新型コロナウイルス感染症の対応に差が出つつあるわけです。

しかし,そのような中でも,各地方自治体は創意工夫を凝らして,新型コロナウイルス感染症を終息させるべく,多様な政策(施策・事業を含みます。)を展開しているというわけです。

 

投稿者: 弁護士濵門俊也

ハズレの福袋、返品できないの? 今年も「鬱袋」に悲鳴あがる

2022.01.07更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

新年の楽しみのひとつといえば「福袋」です。主に、販売店がいろいろな商品を詰め込み、実際の合計額よりも安く販売しています。あらかじめ中身を明かしておくものもありますが、中身がわからないものが主流となっています。

そのため、充実したラインナップの商品をお得にゲットできることもあれば、その中身のあまりのひどさに落胆することもあります。

「ハズレの福袋」を意味する「鬱袋」というネットスラングがあり、ツイッターなどのSNSでは、その中身の写真をアップする人が少なくありません。

この年始にも、「福袋買ったらなぜか変な物が届いたよ〜。返品したい」とTシャツの写真を投稿した人や、ゲームソフト(5本中「モンスターハンター」3本、「がんばる私の家計ダイアリー」2本)の写真をアップし、「鬱袋を買った」と報告した人がいます。

中身が気に入らず、期待に沿わなかったという理由でも、福袋の返品はできるのでしょうか。

 

●原則として、返品・交換は認められない

もともと、「返品・交換は不可」という前提で購入するものですから、たとえ袋の中身が「鬱袋」(ちなみに、秋葉原では年中「鬱袋」が売られているお店があります。)だったとしても、法律的には、動機の錯誤にすぎず、売買契約としては有効となります。

よって、原則として、返品・交換は認められないです。

もちろん、明らかに袋の表示と中身に著しい食い違いがあった場合は、例外があり得ると思います。たとえば、アパレルショップで「サイズL」として販売していた福袋の中身が「サイズS」であったとか、明らかに商品に傷があったり、設定されていた数量に満たないなど、販売側の瑕疵が認められる場合は返品できる可能性があります。

●「◯◯円相当」なのに、合計額が満たされていない!

また、「◯◯円相当」として売っていた福袋の中身の合計額が満たない場合も、返品が認められると考えられるのですが、「◯◯円相当」というのが曲者です。

つまり、「◯◯円相当」という値段が、時価なのか、メーカー小売価格なのか、卸値なのか、何を物差しにしているかによるからです。当事者の合理的な意思として、どの程度の金額を想定していたかを探る必要もあるでしょう。ケースバイケースだと思います。

ただ、「鬱袋」であったとしても、あまり気に病む必要はありません。友人・知人と共同購入してトレードしあい、交流を深めたり、フリマアプリでお小遣い稼ぎもできます。変なところで運を使わなくてよかった、と前向きにとらえることもできるでしょう。

福袋の中身が何であろうと、一喜一憂せず、新たな年の出発としたほうがよいかもしれませんね。

投稿者: 弁護士濵門俊也

破産の免責許可決定と詐害行為取消権

2021.12.22更新

こんにちは。東京中央区日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

本日は,破産の免責許可決定後に,免責対象となった債権について詐害行為取消権を行使できるかを判断した最高裁判決(最判平成9年2月25日判時1607号51頁,判タ944号116頁)を紹介します。この事案では,債務者が破産の免責許可決定を受け,確定した後,免責の対象となった債権について,破産申立前に債務者が行った財産処分行為について,詐害行為取消権を行使できるかが争われました。

【事案の概要】
 Xは,甲社及びその代表取締役との間で基本取引契約を締結するとともに,代表取締役の妻Aとの間で,取引から生じる債務につき二億円の限度での連帯保証契約を締結し,Aに対し,二億円の連帯保証債権を有していた。Aは,甲社が倒産する数か月前に,自己の所有するAの親族の経営する会社の株式を同社の従業員であるYらに譲渡したが,当時Aには他にめぼしい資産はなかった。

 甲社の倒産後,Aは,自己破産の申立てをし,破産宣告及び破産廃止の決定(同時破産廃止決定)を受けた。その後,Xは,Yらに対して,Aに対する前記連帯保証債権に基づいて,Aが破産申立て前にした株式譲渡行為について,詐害行為による取消し等を求める本件訴訟を提起した。その一審係属中に,Aは,破産免責を受けて,同決定は確定した。

【原審の判断】
 原審は,以下のように,詐害行為取消権を行使することはできないと判断しています。

 「Aが破産法上の免責決定を受けて,AのXに対する連帯保証債務にも免責決定の効力が及んでいるから,Xは,Aの連帯保証債務について,Aに対する強制執行が許されず,その準備行為としての詐害行為取消権の行使も許されない。」

最高裁の判断
 最高裁は,以下のように,原審の判断を是認しています。

 「詐害行為取消権は,債務者の責任財産を確保し将来の強制執行を保全するために債権者に認められた権利であるところ,原審の適法に確定した事実関係の下においては,XがAに対する本件連帯保証債務につき免責決定を受けてこれが確定したことにより,AのXに対する連帯保証債務履行請求権は,訴えをもって履行を請求しその強制的実現を図ることができなくなったものであり,その結果,詐害行為取消権行使の前提を欠くに至ったものと解すべきであるから,Aにおいて,Xが自己破産の申立て前にした財産処分行為につき,債権に基づき詐害行為取消権を行使することは許されないと解するのが相当である。」

投稿者: 弁護士濵門俊也

財産開示制度の拡充と新制度(民事執行法の改正)

2020.03.13更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。

ここ最近,令和2年4月1日施行の改正法(主に民法)の解説をしておりますが,これまた実務上重要な改正法が施行されることを説明したいと思います。それは,民事執行法の改正です。

●債権回収は難しい…

友人にお金を貸したんだけど,返してくれない…。
養育費を取り決めたのに支払ってくれない…。

このような場合,どうすればいいのか困る場面は多いと思います。この手の相談も後を絶えません。
話合いで解決できない場合,裁判所に対し訴訟を提起したり,調停・審判を申し立てたりして,「●●円を支払え」という内容の判決や審判を下してもらうという手続があります。この手続のお手伝いをさせていただくことが多いです。
ただ,請求が認容された判決書や審判書を得れば,お金を貸した相手(お金を借りた人)や養育費を支払う義務のある人が,皆必ずお金を返したり,支払ってくれたりするのかといえば,残念ながら,そうではない人もいます(とくに,養育費未払い問題は深刻な社会問題です。)。
それでは,上記判決書や審判書を得る必要性はどこにあるのでしょうか?
それは,「強制執行ができる紙切れ(これを「債務名義」といいます。)を獲得する」という点です。

●強制執行とは?

それでは,強制執行とは何でしょうか?
強制執行とは,お金を貸した人(債権者)の申立てによって,裁判所がお金を返済しない人(債務者)の財産を差し押さえてお金に換えたり(換価),債権者に分配したりする(配当)などして,債権者に債権を回収させる手続です。
債権者は,上記判決書や審判書といった債務名義を得れば,強制執行の申立てをすることによって,お金を返済せず,支払わない人に対して,強制的にその財産から自分の債権の回収を図れることとなるのです。
ただし,つぎのハードルがあります。すなわち,強制執行をするためには,

「債務者所有の●●所在の土地(実際には,「物件目録」等の目録を末尾に添付して不動産の特定をするのが通常です。)に対する強制競売手続の開始を求める。」
「債務者の▲▲銀行▼▼支店に対する預金債権(こちらも「差押債権目録」等の目録を添付して特定します。)の差押命令を求める。」
「債務者の■■株式会社に対する給料債権(こちらも「差押債権目録」等の目録を添付して特定します。)の差押命令を求める。」

というように,相手方債務者の財産の具体的な内容を明らかにしたうえで申立てをしなければならないのです。
しかし,相手方債務者が有している財産の具体的な内容など知らないということの方が通常です。
このように,債務名義を得ても,強制執行ができないことから,泣き寝入りをするしかないというケースも多くありました。
このような事態をできる限り防ぐために,令和元年5月10日に改正民事執行法が成立し(同月17日に公布され,いよいよ令和2年4月1日に施行されるのです。),以下のように,債務者の財産の内容を明らかにすることについて,元々存在した制度が拡充されるとともに,新しい制度が設けられました。

●改正民事執行法により拡充された制度(財産開示制度)

① 財産開示手続の拡充(改正民事執行法196条以下)
平成15年(2003年)の民事執行法改正により,「財産開示手続」という制度が新設されました。
この財産開示手続は,強制執行をしても完全な債権の回収ができなかった場合や,できる限りの調査をしても債務者にめぼしい財産がなかった場合等に,執行力のある債務名義の正本(ただし,仮執行の宣言を付した判決,仮執行の宣言を付した損害賠償命令,確定判決と同一の効力を有する支払督促等は除かれていました。)を有する債権者の申立てにより,裁判所が債務者を呼び出し,財産開示期日(非公開とされています。)において,債務者に自己の財産について陳述させる手続です。
しかし,裁判所から呼出しがあっても,出頭しない債務者も多かったようで,この制度には実効性に疑問があり,あまり利用されていませんでした(年間で1000件程度)。
そこで,以下のような改正がなされました。

◎申立権者の範囲の拡大
前述したとおり,財産開示制度を利用できる債権者の債務名義のうち,執行力のある債務名義の正本のうち,仮執行の宣言を付した判決,仮執行の宣言を付した損害賠償命令,確定判決と同一の効力を有する支払督促等は除かれていました。
改正民事執行法は,その制限を外し,債務名義を有する債権者はすべて財産開示制度を利用できるようになりました。

◎罰則の強化(刑事罰の導入)
旧民事執行法206条1項は,

「次の各号に掲げる場合には,30万円以下の過料に処する。
1 開示義務者が,正当な理由なく,執行裁判所の呼出しを受けた財産開示期日に出頭せず,又は当該財産開示期日において宣誓を拒んだとき。
2 財産開示期日において宣誓した開示義務者が,正当な理由なく第199条第1項から第4項までの規定により陳述すべき事項について陳述をせず,又は虚偽の陳述をしたとき。」

と規定していました。
しかし,「過料」は軽い行政罰にすぎず(軽い刑事罰である「科料」と区別するために「あやまちりょう」ともいいます。ちなみに,「科料」は「とがりょう」といわれます。),財産開示制度の実効性に不安をもたせるものといえました。
そこで罰則を強化し,上記の場合に,6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられるようなりました(改正民事執行法213条1項)。
このように,場合によっては,懲役刑まで科せられてしまうのですから,開示義務者にはかなりの心理的強制力が働くものといえます。

●改正民事執行法により新設された制度(情報取得手続)

② 不動産に関する情報取得手続(改正民事執行法205条)
債務名義を有している債権者等が裁判所に申し立てることによって,裁判所が登記所に対して,当該債務者が登記名義人となっている不動産を網羅した形で情報の提供を命じる手続です。
この手続によって,債務者名義の不動産の存在が明らかになれば,この不動産に対して強制執行することができます。
なお,この手続を利用するためには,まずは,①で述べた財産開示手続を経なければなりません。

③ 給与債権に関する情報取得手続(改正民事執行法206条)
養育費や婚姻費用等の扶養料債権,人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権についての債務名義を有している債権者が裁判所に申し立てることによって,裁判所が,市町村,日本年金機構又は厚生年金の実施機関に対し,債務者の給与債権の情報(勤務先の情報等)の提供を命じる手続です。
この手続によって,債務者の勤務先が明らかになれば,やはり,給与の差押えなどの強制執行をすることができます(給与額の4分の1の金額まで,又は,33万円を超える部分について差し押さえることができます。ちなみに,養育費や婚姻費用等の扶養料債権の場合は,給与額の2分の1まで差し押さえることができます。)。
この手続を利用するためにも,まずは,①で述べた財産開示手続を経なければなりません。

④ 預貯金債権等に関する情報取得手続(改正民事執行法207条)
債務名義を有している債権者等が裁判所に申し立てることによって,裁判所が銀行等の金融機関に対して,預貯金債権の存否,その預貯金債権が存在するときには,その預貯金債権を取り扱う店舗,その預貯金債権の種別(普通預金や定期預金等),口座番号,その金額といった情報の提供を命じる手続です。
この手続によって,債務者名義の預貯金の存在,その預貯金に関する情報が明らかになれば,この預貯金債権に対して強制執行をすることができます。
なお,この手続については,②の不動産に関する情報取得手続や③の給与債権に関する情報取得手続とは異なり,①で述べた財産開示手続を経る必要はありません。

●法改正の意義・今後の課題

今回の民事執行法改正によって,債権者が泣き寝入りをしなくてはならないケースは大幅に減ると考えられます。
とくに,子どもの養育費の未払い等で困っている人にとっては,非常に意義の大きい改正だと思います。
他方,低収入の債務者に対する給与の差押えが容易になることにより,債務者の生活を崩壊させる可能性が高まるのではないか等の課題もあります。
今後は,このような課題についても充分な議論をしていく必要があるでしょう。

 

投稿者: 弁護士濵門俊也

債権関係に関する民法の改正

2020.03.06更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

いよいよ約120年ぶりに改正された民法の施行が近づいてまいりました(施行期日は令和2年4月1日)。当職も10数年ぶりに択一受験六法(いろいろ吟味した結果,LECの『司法試験&予備試験 完全整理択一六法 民法』にしました。)を購入し,施行に備えております。
先日,「特別養子縁組」に関する民法等の改正について解説しましたが,今回は,大本丸である債権関係の見直しについて,概要を説明したいと思います。

●改正の目的

現在の民法は,明治29年(1896年)に制定されたのですが,債権関係の規定(契約等)については,約120年もの間ほとんど改正はありませんでした(ちなみに,平成17年(2005年)4月1日から現代語化・口語化された民法典が施行されています。)。
しかし,明治の時代から社会・経済は大きく変化しました。取引の複雑高度化,高齢化,情報化社会の進展等,挙げればきりがありません。
また,大審院・最高裁が下した多数の判例や解釈論が実務に定着しているにもかかわらず,基本的ルールが見えない状況にありました。
そこで,平成21年(2009年)10月から5年余りの審議を経て,法制審議会民法(債権関係)部会において要綱案を決定しました。
改正検討項目の観点としては,

① 「社会・経済の変化への対応」の観点
② 「国民一般に分かりやすい民法」とする観点

が挙げられます。

●ポイント① 「社会・経済の変化への対応」の観点からの改正検討項目
大きく5つの分野で改正が検討されました。

【消滅時効・第166条関係】 
業種ごとに異なる短期の時効を廃止し,原則として「知った時から5年」というようにシンプルに統一しました。その趣旨は,時効期間の判断を容易化する点にあります。

【法定利率・第404条関係】
法定利率を現行の年5%から年3%に引き下げた上,市中の金利動向に合わせて変動する制度を導入しました。その趣旨は,法定利率についての不公平感の是正をする点にあります。

【保証・第465条の6~9関係】
事業用の融資について,経営者以外の保証人については,公証人による意思確認手続を新設しました。その趣旨は,安易に保証人となることによる被害の発生防止を図る点にあります。

【約款・第548条の2~4関係】
定型約款を契約内容とする旨の表示があれば,個別の条項に合意したものとみなしますが,信義則(民法1条2項)に反して相手方の利益を一方的に害する条項は無効となると明記し,定型約款の一方的変更の要件を整備しました。その趣旨は,取引の安定化・円滑化を図る点にあります。

●ポイント② 「国民一般に分かりやすい民法」とする観点からの改正検討項目
確立した判例や解釈論などの基本的なルールを明文化しました。

【意思能力・第3条の2関係】
意思能力(判断能力)を有しないでした法律行為は無効であることを明記しました。

【将来債権の譲渡・第466条の6関係】
将来債権の譲渡(担保設定)が可能であることが明記されました。

【賃貸借契約・第621条,第622条の2関係】
賃貸借終了時の敷金返還や原状回復に関する基本的なルールを明記しました。

●関係団体からの要望
関係団体からは2つの要望が出されました。

【要望①】 改正内容の周知徹底
関係者の実情に応じた効果的な周知を図るよう要請がありました。
具体的には,
☑様々な媒体による国民への周知
☑担当者による説明会を全国で実施
☑関係省庁と連携した業界団体への周知
でした。

【要望②】 十分な準備期間の確保
施行日を「公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日」とされました。

●成立までの経緯
平成27年(2015年)2月10日 法制審議会民法(債権関係)部会 要綱案決定
            2月24日 法制審議会総会 要綱決定(全会一致)⇒答申
            3月31日 閣議決定・法案提出
平成29年(2017年)5月26日 成立
            6月 2日 公布

●施行期日
令和2年4月1日施行

投稿者: 弁護士濵門俊也

『なつぞら』の千遥の「遥」は当時使用できたのか?!

2019.07.02更新

連日絶賛放送中の女優の広瀬すずさんが主演するNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「なつぞら」。今週(7月1日~6日)放送分から,広瀬さん扮するヒロイン・なつの生き別れた妹・千遥(ちはる)役で清原果耶さんが登場しています(清原さんはいい女優さんですね。雰囲気があります。今後の活躍に期待します。)。

千遥の「遥」の漢字ですが,何気なく見ている方もいるのではないでしょうか。たしかに,現在は「遥」は人名用漢字ですから何ら違和感はありません。ただ,昨年亡くなった私の妻(昭和46年3月生まれ)は,両親が命名する際,「遥」の漢字を使いたかったけれど,使えなかったという話を聴いておりましたので,興味をもちました。
そこで,今回は人名用漢字「遥」について解説します。

まず,「千遥」の名づけが戦前・戦中可能であったかという点ですが,「可能であった」というのがその答えです。なぜなら,昭和17年6月17日に国語審議会が答申した標準漢字表には,旧字の「遙」が収録されていたからです(標準漢字表はインターネットでも閲覧できます。)。そういえば,「坪内逍遥」という文学者もいましたよね。

つぎに,昭和46年3月生まれの妻に「遥」の漢字が使えなかった理由ですが,昭和21年11月16日に内閣告示された当用漢字表には,「遙」も「遥」も収録されていなかったことに由来します。その後,戸籍法が昭和23年1月1日に改正された結果,旧字の「遙」も,新字の「遥」も,子どもの名づけに使えなくなってしまったのです。
「遥」の漢字が人名用漢字に追加されたのは,1981年(昭和56年)10月1日のことです。

そして,2004年(平成16年)9月27日,戸籍法施行規則は改正され,旧字の「遙」も人名用漢字になりました。これは,「遥」の使用が認められたのちも,旧字の「遙」を出生届に書く親があとを絶たなかったからのようです。

『なつぞら』の今後の展開も気になりますが,時代考証もしっかりしていたことを感じました。

投稿者: 弁護士濵門俊也

令和元年5月1日は祝日か?休日か?-「10連休」の謎に迫る

2019.04.26更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

今朝クリーニング屋さんにスーツを持って行ったところ,「濵門さんは10連休ですか?」と尋ねられました。私は「カレンダーどおりですかね。」と答えました。
今年のゴールデンウィークは,「平成」から「令和」への改元,今上天皇の退位と新天皇の即位といった重大な節目となりそうです。ただ,「10連休」の理由について深く考えていない日本国民も多くいらっしゃると思います(チコちゃんに叱られそうです。)。
そこで,今回は,「10連休」の謎について解説してみます。

●祝日と休日とは何が違うの?

祝日と休日とでは大きな違いがあります。

祝日に関する法律といえば「国民の祝日に関する法律」(以下「祝日法」といいます。)に祝日についての様々な決まりが規定されています。祝日法第1条には,「国民の祝日」(祝日)とは,「自由と平和を求めてやまない日本国民が,美しい風習を育てつつ,よりよき社会,より豊かな生活を築きあげるために,国民こぞって祝い,感謝し,又は記念する日である。」と定義されています。

この祝日法がさす「休日」には,国民の祝日,振替休日,祝日と祝日に挟まれた日,の3種類が含まれます。これを祝日法に基づく休日といい,同法第3条に規定されています。

祝日法第3条(休日)
1 「国民の祝日」は休日とする。
2 「国民の祝日」が日曜日に当たるときは,その日後においてその日に最も近い「国民の祝日」でない日を休日とする。
3 その前日及び翌日が「国民の祝日」である日(「国民の祝日」でない日に限る。)は,休日とする。

●2019年のゴールデンウィーク

ところで,5月1日が祝日か休日かでどう変わるのでしょうか?
もし祝日となりますと,4月29日は「昭和の日」,5月3日は「憲法記念日」という祝日ですから,5月1日が祝日だとしますと祝日法第3条第3項により,祝日と祝日の間に挟まれた4月30日及び5月2日の平日が休日に変わります。

そうすると,4月28日~5月6日までの9日間の大型連休が出現します。土曜日の4月27日も含めると,10日間の超大型連休になります。これが10連休の理由です。

もし5月1日がただの「休日」だとしますと,祝日法第3条第3項は適用されませんので,4月30日及び5月2日は平日のままとなり,「大型飛び石連休」に様変わりです。

さて,実際はどうなのでしょうか。
実は法律があります。2019年は,新天皇が即位する5月1日と「即位礼正殿の儀」が行われる10月22日を「国民の祝日」とすることが法律で定められました。
そうしますと,2019年のゴールデンウィークも,つぎの3種類に分けることができます。

【国民の祝日】4月29日(昭和の日),5月1日(新天皇即位),3日(憲法記念日),4日(みどりの日),5日(子どもの日)

【振替休日】5月6日(5日が日曜のため)

【休日】4月30日,5月2日(祝日と祝日に挟まれた日)

●君は「10連休」を取ることができるか?!

冒頭で「カレンダーどおり」と発言した私は「10連休」となりますが,あなたは「10連休」を取ることができるでしょうか。雇用されている従業員にとって会社に出勤しなくてもよい日,すなわち労働義務がない日というのは,国民の祝日に関する法律に拘束されません。実際は,就業規則や労働契約の規定によって決まるのです。

例えば,就業規則で「休日は土曜日,日曜日,国民の祝日とする。」とだけ規定されているだけであれば,規定を杓子定規に適用すれば,2019年の場合,4月30日や5月2日,6日は,会社所定の休日には該当しないこととなります。

その理由は,たしかに,祝日法によれば,祝日と祝日に挟まれた日なので休日とはなりますが,それは,あくまで法律上は休日となるというだけであり,労働者が勤務している会社の休日は別のルール,つまり就業規則や労働契約で決まるという点にあります。

4月30日や5月2日及び6日は,「土曜日」でもありませんし,「日曜日」でもありません。もちろん,「国民の祝日」でもありません。カレンダーでは赤字になっていても,国民の祝日ではない休日ですから会社所定の休日にならないわけです。

かりに上記の規定のような就業規則とはなっていても,「祝日法に基づく休日」には会社に出勤しない,という慣行が認められるような職場も多いと思います。
このような職場であれば,労働者と使用者側の間において,規則に明確なルールがないものの,長年守られてきた労使慣行のひとつとして,「4月30日や5月2日は会社に出勤する義務のない日である」という主張も成り立ち得ると思います。労使慣行といいますのは,就業規則等で明文化されているものではないものの,労働条件を補完するものです。

●5月1日は亡き妻の祥月命日

最愛の妻を亡くし,1年が経とうとしています。アニメ機動戦士Zガンダムに登場するクワトロ・バジーナ大尉の名言につぎ台詞があります。

「生きている間に,生きている人間のすることがある。それを行うことが,死んだ者への手向けだ。」

先日鑑賞してきた映画『キングダム』(原作ファンも納得の最高の出来栄えでした。あの個性的なキャラクター達を見事に演じられていました。戦闘シーンのアクションもすごかったです。)の冒頭でも信が漂の死を乗り越えて,「天下の大将軍」を目指します。「天下の代将軍」は目指せませんが,大志を抱いて自身の使命を全うしたいと思います。

投稿者: 弁護士濵門俊也

肖像権とSNS

2017.01.18更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

先日とあるテレビ局の取材を受ける機会がありました。当職も毎週視聴している人気番組ですので,名前がクレジットされるといいなと思っています。取材を受けた内容に関連する事項について今回は解説してみたいと思います。

インターネットを利用している場合,ツイッターやフェイスブック,YouTubeなどでいろいろな写真や動画を投稿したり,他人の投稿内容を見たりして楽しむことが多くなっています。
しかし,このようなSNSサイトや動画サイトでは,自分やそのご家族のお顔が写った写真や動画が勝手に投稿されてしまうことがあり得ます。
インターネット上で自分の画像が勝手に利用された場合,肖像権の侵害が問題になり得ますが,そもそも肖像権とは具体的にどのような権利で,その侵害はどのような場合に認められるのでしょうか?肖像権侵害を受けた場合の対処方法も知っておく必要があります。
そこで今回は,インターネット上の画像投稿で問題になりがちな肖像権の問題について解説してみます。

●肖像権とは?

 

インターネット上で自分が写っている画像や動画を勝手に投稿された場合,肖像権侵害が問題になり得ます。
「肖像権」とは,「みだりに自己の容ぼう等を撮影され,これを公表されない権利」(最大判昭和44年12月24刑集23巻12号1625頁参照)のことです。著作権などと異なり,法文による明文化はされておらず,最高裁判例によって確立されてきた権利です。
肖像権の根拠は日本国憲法第13条後段の幸福追求権にあるとされています。
肖像権というと,有名人にのみ認められるようなイメージもあるかもしれませんが,そのようなことはなく一般人にも認められます。このことは,最高裁の判例などでも明らかにされています(最判平成17年11月10日民集第59巻9号2428頁,これはいわゆる「和歌山毒入りカレー事件」の被告人について問題となった事件でした。)。
なお,有名人には,それとは別に財産的権利である「パブリシティ権」という権利も認められます。
一般人にも認められる肖像権には財産的な性質はなく,単純に「勝手に自分の写真を撮影されたり公表されたりしない」という人格的利益です。

●プライバシー権侵害と肖像権

 

肖像権は,プライバシー権侵害ととても似た性質をもっています。
プライバシー権とは,みだりに私生活に関する事実を公開されない権利であり,たとえば,生い立ちや家族構成,今の生活様式や場所,勤務先や交際相手などの情報がプライバシー権によって保護されます。
また,自分の容ぼうもプライバシー権の保護の対象となり得ます。そこで,自分の写真を勝手に公開された場合,肖像権だけではなくプライバシー権侵害も問題になり,この場合にはプライバシー権と肖像権は同じ内容となります。
ただ,プライバシー権の場合,情報が他人に知られる状況にならないと侵害にならないので,たとえば勝手に他人の写真に自分の姿が写り込んだだけのケースなどでは,プライバシー権侵害にならない可能性があります。
これに対し,肖像権が問題となるのは,写真を撮影されたり公開されたりした場合なので,勝手に撮影されて偶然自分の姿が写り込んでしまった場合などでも肖像権侵害になります。
また,肖像権は,自分の容ぼうを撮影された場合のみに問題となりますので,文書などによって個人的な情報や私生活を公表された場合などには肖像権による保護は及ばず,プライバシー権の適用を問題にする必要があります。
以上のとおり,プライバシー権と肖像権はとても似た権利であり,適用場面が重なることも多いのですが,細かく見ていくと適用場面が異なることもありますので,別個独立の権利として認める必要があります。

 

●肖像権侵害になる場合の基準

 

インターネット上で自分の写真が勝手に利用された場合など,肖像権侵害が成立するにはどのような基準で判断されるのかが問題となります。
肖像権侵害があるかどうかについては,基本的に,その撮影や公開が被写体の受忍限度を超えるかどうかによって判断されますが,受忍限度を超えるかどうかの判断に際しては,以下のような事情が考慮されます。
• 撮影対象の人物をはっきり特定できるかどうか
• 被写体がメインになっているかどうか
• 拡散可能性が高い場所に公開されたかどうか
• 撮影対象の人物をはっきり特定できるかどうか
写っている人がはっきり特定できる場合には,肖像権侵害が認められる可能性が高くなり得ます。反対に,ぼんやりしていて顔などがよく分からない場合には,肖像権侵害にはなりません。
• 被写体がメインになっているかどうか
写真の中で,人物がメインになっている場合には肖像権侵害が認められやすくなります。これに対し,風景などがメインになっている場合には肖像権侵害にはなりにくいです。
• 拡散可能性が高い場所に公開されたかどうか
たとえばネット上のSNSなどでは,拡散可能性が高いので肖像権侵害が認められやすいです。これに対し,公開せずに自分一人や限られた少人数で共有するにすぎない場合には,肖像権侵害が認められにくいです。
また,肖像権侵害が起こるのは,被写体の承諾がないからであり,権利者である被写体が撮影や公開について許可をしている場合には,肖像権侵害になりません。
かかる撮影と公開については別個の承諾が必要になるので,撮影の承諾をしていても,公開の承諾がない限り,勝手に公開したら肖像権侵害になることにも注意が必要です。

●SNSで肖像権侵害が行われるケース

それでは,SNSで肖像権侵害が行われる具体的なケースをご紹介します。
【ケース①】自分と子どもの写真が勝手にSNSに投稿された
たとえば,子どもと一緒にお出かけをしていたとき,外出先で写真を撮影していた人が勝手に自分たち親子の写真を撮って,SNSに公開することなどがあります。この場合,自分と子どもの両方の肖像権侵害となります。
【ケース②】友人が自分の顔写真をフェイスブックに投稿した
フェイスブックでも問題は起こります。友人が自分の顔写真を許可なくフェイスブックに投稿したケースでも,肖像権侵害となります。
肖像権は,勝手に撮影されない権利であるだけではなく,勝手に公表されない権利も含むので,友人に対して撮影の許可をしていても,公表の許可をしていない限りはSNSへの写真投稿が違法になるからです。
【ケース③】知り合いが秘密の画像を勝手に公開した
誰でも,人には見られたくない秘密の画像があるものです。昔の高校時代の写真や水着の写真,写りが悪い写真など,いろいろな事情があるでしょう。
このような画像を,ふとしたきっかけで他人が取得して勝手に公開してしまうことがあります。元恋人などが,嫌がらせで性的な写真を公開するケースもありますし,今の恋人が悪気なしに性的な写真を公開することもあるかもしれません。
このようなケースでは肖像権侵害と認められるので,相手に対して法的な手続きをとることができます。

●肖像権侵害を受けた場合の対処方法

肖像権侵害を受けたら,具体的にどのような対処が可能になるのでしょうか?

まずは,画像や動画の利用差止め請求ができます。肖像権侵害によって画像などが公開されている場合,放っておきますとどんどん拡散してしまうので,一刻も早く公開を止めさせる必要があります。そこで,肖像権にもとづく差止め請求をすることによって,画像や動画の削除を求めることが可能です。

つぎに,損害賠償請求も可能です。肖像権侵害によってこちらは精神的な苦痛を被ることになりますから,その賠償として慰謝料請求をすることができるのです。

投稿者: 弁護士濵門俊也

地裁でもあり得る「17条決定」

2016.10.27更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

「ねぇ濵門君。『17条決定』って知ってる?」
本日午後,裁判所の期日から戻ってきた先輩弁護士にそう聴かれました。「17条決定」にいう「17条」が民事調停法上のものであることは知っていましたが,先輩弁護士の取り扱っている事件は地方裁判所管轄の事案です。
そこで,今回は「17条決定」について解説します。

●「17条決定」とは?

民事調停は,原則的に,当事者の話合いによって紛争解決に向けた合意の成立を目指す,という制度です。
ただ,一風変わった制度として,裁判所が解決内容を決定する,というものもあります(民事調停法17条)。これが,「調停に代わる決定」とか「17条決定」と呼ばれる制度です。条文上は職権で行われることと規定されています。

紛争の状況によっては,ある程度まとまりそうになっているのに,お互いに意地になって調停が成立しない,あるいは,会社の稟議,地方公共団体の議会対策など,裁判所の「お墨付き」が欲しい場合もあります。
裁判所の決定であれば,「面子がたもてる」「稟議もとおりやすい」「後から責任追及されない」ということです。
このような場合,裁判所は職権で「調停にかわる決定」,通称「17条決定」をすることがあるのです。

実際の民事調停の場面では,案件内容の専門家が調停委員,専門委員として関与している場合に,調停に変わる決定が活用されることが多いようです。
例えば,建築瑕疵について,建築の専門家が瑕疵の有無,損害の内容・金額を評価,判断する,という形で積極的に関与するという状況です。

●17条決定に対しては異議申立てができる!

調停に代わる決定がなされた場合,何もしませんと,その内容は調停成立と同様に,強制執行可能な状態となります(民事調停法18条5項)。
他方,内容に納得できない場合は,告知後2週間内に異議申立をすることができます(民事調停法18条1項)。
異議申立てがなされますと,「裁判所の決定」は効力を失います(民事調停法18条4項)。
そして,異議申立てに際しては,とくに不服の理由は必要とされていません。
逆に言いいますと,まずは裁判所(調停委員や専門委員)の案をみてからそれを承服するか否かを考えるという様子見的に利用することもできるわけです。
ただし,この決定内容が,その後の訴訟などで資料(証拠)として利用されることはあり得ます。とくに,案件内容の専門家の判断であれば,訴訟などの別の手続でも重視されることが多いです。

●訴訟から調停に手続が移行される場合もある:付調停

民事訴訟において,専門的な調停委員に和解案を出してもらいたい,という場合に「付調停」が有用となる場面があります。「付調停」とは,一般の民事訴訟において,手続を訴訟から調停に変更するという制度のことです。条文上,調停に付すると規定されているので付調停と呼ばれています(民事調停法20条)。
条文上は「職権」とされていますが,実務上は,当事者からの要請により,裁判所が判断する,ということが多そうです。

たとえば,過払金返還請求事件などですが,経営が苦しく,まともな言い分のない消費者金融などについて,弁論期日を2,3回続行し,弁論を終結して判決を「淡々」とする裁判官が多いのですが,ある程度,双方の「本音」を聞き,ある程度歩み寄った17条決定をする裁判官も増えているようです。

付調停の後,「17条決定」の文例としてはつぎのようになります。

当事者の表示  原 告
        被 告
  (注)従前は申立人(原告)とかの表示例もあったようですが,付調停の場合,申立てがありませんので,そのまま「原告」と表記するようです。

 上記当事者間の平成28年(ノ)第○○号○○請求調停事件について,当裁判所は,次のとおり決定する。

6 原告及び被告は,原告と被告との間には,本件に関し,主文掲記の条項に定めるもののほかに何ら債権債務がないことを相互に確認する。
7 訴訟(○○地方裁判所平成26年(ワ)第○○号)費用は,各自の負担とする。

                    事実及び理由
1 請求の表示
 ⑴ 請求の趣旨

 ⑵ 請求の原因
   別紙記載のとおり

2 本決定をした理由
  当事者双方から聴取した事情を考慮した結果。本件は主文どおりの条項で解決するのが相当であると認め,民事調停法第17条に基づき主文どおり決定する。

●先輩弁護士への回答

冒頭の先輩弁護士への回答としては,「受訴裁判所である地裁が,本件を調停に付したうえで,自庁処理をしようとしているのではないか。処理としては『17条決定』をする予定なのであろう。」ということとなります。

参照条文
[民事訴訟法]
(裁判所等が定める和解条項)
第265条  裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は,当事者の共同の申立てがあるときは,事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる。
2  前項の申立ては,書面でしなければならない。この場合においては,その書面に同項の和解条項に服する旨を記載しなければならない。
3  第一項の規定による和解条項の定めは,口頭弁論等の期日における告知その他相当と認める方法による告知によってする。
4  当事者は,前項の告知前に限り,第一項の申立てを取り下げることができる。この場合においては,相手方の同意を得ることを要しない。
5  第三項の告知が当事者双方にされたときは,当事者間に和解が調ったものとみなす。

[民事調停法]
(調停に代わる決定)
第17条  裁判所は,調停委員会の調停が成立する見込みがない場合において相当であると認めるときは,当該調停委員会を組織する民事調停委員の意見を聴き,当事者双方のために衡平に考慮し,一切の事情を見て,職権で,当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で,事件の解決のために必要な決定をすることができる。この決定においては,金銭の支払,物の引渡しその他の財産上の給付を命ずることができる。

(異議の申立て)
第18条  前条の決定に対しては,当事者又は利害関係人は,異議の申立てをすることができる。その期間は,当事者が決定の告知を受けた日から二週間とする。
2〜4(略)
5  第一項の期間内に異議の申立てがないときは,前条の決定は,裁判上の和解と同一の効力を有する。

(付調停)
第20条  受訴裁判所は,適当であると認めるときは,職権で,事件を調停に付した上,管轄裁判所に処理させ又は自ら処理することができる。ただし,事件について争点及び証拠の整理が完了した後において,当事者の合意がない場合には,この限りでない。
2〜4(略)

投稿者: 弁護士濵門俊也