「嘱託殺人罪」を学ぶー三重の女子生徒殺害事件を素材として
2015.09.30更新
こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。
三重県伊勢市の丘陵地で平成27年9月28日夜,県内の高校に通う女子生徒の遺体が発見された事件で,三重県警察に殺人の被疑事実で逮捕された同じ高校に通う男子生徒が,これまでの取調べに対し,「(女子生徒に殺害を)頼まれた」と供述していることが報道されています。
わが国の刑法は,通常の殺人罪のほかに「嘱託殺人罪・承諾殺人罪」(二罪合わせて「同意殺人罪」といいます。)を処罰しています。
そこで,今回は「嘱託殺人罪」について説明してみます。
●嘱託とは?
「嘱託」とは,被害者が積極的に殺害を依頼することです。
嘱託殺人罪の保護法益は,「人の生命」であるところ,被害者が自らの生命という法益の処分に同意しているわけですから,法益侵害行為がなく犯罪自体が成立しないのではないかとの疑問が生じます。
その疑問に対しては,被害者の承諾により生命侵害行為の違法性が減少するものの,なお処罰に値する違法性は残るというパターナリズムの観点からの説明がなされます。
●嘱託殺人罪の法定刑
嘱託殺人罪の法定刑は,「6月以上7年以下の懲役又は禁錮」とされており,「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」を法定刑とする通常の殺人罪よりは軽いです。
その理由は,嘱託殺人の場合,被害者が自らの生命を放棄していることから通常の殺人罪よりは違法性が減少しているためです。
●「嘱託」の主張・立証責任
「嘱託」という事実は,それが認められれば通常の殺人罪よりも法定刑が軽くなるわけですから,被告人にとって有利な事実です。
もっとも,刑事訴訟においては「疑わしきは被告人の利益に」という鉄則があり,検察官が犯罪事実の立証責任を負っています。すなわち,検察側で「嘱託がなかったこと」を立証しなければならないのです。
検察官としては,「嘱託」がなく通常の殺人罪が成立すると考える場合,被告人に被害者を殺害する強い動機があったこと,被害者が嘱託を行える状況になかったこと,被害者が自身の今後の生存を前提とする行動をしていたこと等を主張・立証して「嘱託がなかったこと」を証明することとなると思います。
●本件事案の見立て
女子生徒の友人らによると,女子生徒は日ごろから「18歳までに死にたい」などと周囲に漏らしていたといいます。これは,女子生徒が今後の生存を否定していた事実であり,「嘱託がなかったこと」の消極的事情(まどりくどい表現ですが,要するに嘱託があったことをうかがわせる事情ということです。)といえます。
また,司法解剖の結果,女子生徒の死因は「左胸」を「刃渡り約20cmの包丁」で「1回刺された」ことによる「失血死」で,「傷は心臓に達していた」そうです。「刺し傷以外に争ったような傷」はないとのことです。怨恨の線は難しいでしょうし,できるだけ苦痛を与えないように身体の枢要部である心臓のある左胸を一刺しして仕留めたとも考えられ,これまた「嘱託がなかったこと」の消極的事情といえます。
以上の事情から,本件事案は,十分嘱託殺人の可能性もあると思います。
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「死者に対する名誉毀損罪」を学ぶ
2015.09.26更新
こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。
今朝,電車に乗っていましたところ,ある雑誌の中刷り広告を見ました。その雑誌には,先日癌でお亡くなりになられたある女優さんの記事が掲載されていました。記事の内容からすると,その女優さんが亡くなられる前の状況を扱っているようでした。
そこで,今回は,「死者に対する名誉毀損罪」について,説明したいと思います。
●死者の名誉毀損罪(刑法第230条第2項)の法文
「死者の名誉を毀損した者は,虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ,罰しない。」
●保護法益
本罪の保護法益については,争いがありますが,「死者自身の名誉」と考えるのが通説的見解といえます。この説によると,生存中に有していた名誉に対して,その保護を死後にまで及ぼしたものと解するということとなります。
反対説として,「死者に対する遺族の敬愛の情」であるとする見解も有力です。ただし,これに対しては,遺族のない死者について本罪の成立を肯定できなくなるとの批判があります。
また,「遺族の名誉」とする説もあります。しかし,故人に関する事実であってもそれが遺族の名誉を毀損すれば,通常の名誉毀損罪(刑法第230条第1項)が成立し得るので妥当ではないとの批判があります。
●行為
本罪の行為は,公然と虚偽の事実を摘示して死者の名誉を毀損することです。
死者の名誉に関する事実については,摘示された事実が真実であれば,本罪は成立しないということです。歴史的批評の対象としての意味も含むからと説明されます。
結果として,真実であれば構いません。
ちなみに,事実摘示後に相手方が死亡した場合は,本罪ではなく,通常の名誉毀損罪(刑法第230条第1項)の問題です。したがって,事実が真実であったとしても処罰されるのが原則ですので注意してください。
●故意(構成要件的故意)
本罪の場合は,虚偽の事実を摘示することが構成要件的行為ですから,故意(構成要件的故意)の内容としても,事実が「虚偽」であることの認識が必要です。真実であると誤信したときは,(たとえ軽信であっても)故意を阻却します。
※虚偽であることを確定的に知っていたことを要し,未必的認識では足りないとするのが多数説です。
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『GIANT KILLING』!凄いぞ,ラグビー日本代表!
2015.09.21更新
こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。
秋の大型連休(シルバーウィーク)の初日。とんでもないニュースが飛び込んできました。
2015年9月19日,イングランド・ブライトンのブライトン・コミュニティースタジアムで行われた,ラグビーワールドカップ2015。
グループリーグ・プールBにおいて,世界ランキング第13位の日本代表は,初戦から過去2度の優勝を誇る世界ランキング第3位の南アフリカ代表との対戦となりました。
これまでワールドカップで通算わずか1勝しか挙げておらず,2引き分けを挟んで同大会16連敗中だったという日本代表の戦績を考えますと,誰もが南アフリカ代表の勝利を信じて疑わない試合のはずでしたが……。何と!日本代表は南アフリカ代表を34-32で破ったのでした。連合王国(英国)の地元紙であるガーディアンは,「ワールドカップ史上,比類のない試合。世界に波紋を広げた」と報道し,同じくデイリー・テレグラフは電子版のトップで,「史上最大の番狂わせ」と伝えたそうです。
まさに,『GIANT KILLING』(ジャイアントキリング)!この歴史的な勝利に興奮しました(当職の世代は大映ドラマ『スクール☆ウォーズ〜泣き虫先生の7年戦争〜』を観てラグビーに興味を持ちました。いまだに『ヒーロー』のイントロと滝沢賢治先生の声が聞こえてきます。)。
2019年にわが国で開催されるラグビーワールドカップに花を添えるべく予選を突破したいところです。
しかし,どのくらい凄いことなのかいまいちよく分からないという声も多いようです。
インターネット上に,分かりやすい例えが多数出ていたのでご紹介します。
【機動戦士ガンダム】
・ボール(フラウ・ボゥ搭乗)がジオング(シャア・アズナブル搭乗)を撃墜し,さらにビグ・ザムを墜とし,テム・レイ(アムロ・レイの父親,酸素欠乏症になってしまう。)を正気に戻す。
・ザク(おそらく量産型と思われる。)がνガンダムにヒートホークを1回当てる。
【ドラゴンボール】(なぜか,ヤムチャネタが多い。)
・ヤムチャがベジータに勝つ。
・ヤムチャがフリーザ様を1回変身させる。
【他のスポーツ】
・J2のチームがイングランド代表に勝つ。
・県大会ベスト4の高校がソフトバンク・ホークスに勝つ。
【変わり種】(個人的にはこれが一番笑えました。)
・女優の桐谷美玲さんが吉田沙保里選手に本気勝負で勝つ。
ユニークな例えの数々です。ちなみに,『ハリー・ポッター』の作者J.K.ローリングさんは,南アフリカ代表と日本代表の劇的な試合を観て「こんなの書けない」とつぶやいたそうです。
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テレビドラマ『民王』・大団円!!
2015.09.19更新
こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。
昨日(平成27年9月18日),テレビ朝日の金曜深夜ドラマ『民王(たみおう)』が最終回を迎えました。このドラマは,池井戸潤さんの小説『民王(たみおう)』を原作としており,当職も原作は読んでおりましたが,本ドラマは期待以上,ある意味原作を超えた愉快,痛快な内容となっており(内閣総理大臣・武藤泰山を演じた遠藤憲一さんはズルかったですね。「ワニ顔」,さすがでした。泰山の公設第一秘書の貝原を演じた高橋一生さんも慇懃無礼な感じを好演されました。),2015年7月期のドラマとしては,個人的に1位となりました(ちなみに,2位は『デスノート』,3位は『花咲舞がだまってない』です。我ながらなかなかミーハーですね。)。
池井戸潤さんといえば「半沢直樹」シリーズに代表されるように,企業物の小説がよく知られていますが,『民王』は,内閣総理大臣(わが国の政治のリーダーであり,日本版『民王』です。)を主人公とした,肉体と精神が入れ替わるタイプの小説です。
内容はネタばれするので触れませんが,『民王』を貫く哲学としては,「理想論」があるように思います。バカ息子・武藤翔(菅田将暉さんが好演しました。若手の俳優さんには実力のある方が多いです。)を採用したアグリトラディショナル社長(大場健二さんがゲスト出演されました。当職世代では『宇宙刑事ギャバン』です。ちなみに,面接官を務めた渡洋史さんは『宇宙刑事シャリバン』です。そうすると,アグリトラディショナル社はバード星の企業なのでしょうか。)は,「君みたいにさ,理想論ばかりを言っている若者はたちが悪い」,「だが,理想論すら語らない若者はもっと立ちが悪い」と言っていましたが,この社長の言葉こそ,池井戸潤さんからのメッセージかもしれません(社長が最後に「よろしく,勇気!」と語り,翔と握手した場面では,「ありがとう!ギャバン!」と言ってしまいました。当職の横で無表情だった妻の態度は言うまでもありません。)。
ちなみに,最終回には,レインメイカーでお馴染みのオカダ・カズチカ選手も登場しました。いやぁ豪華です。
「浅きを去って深きに就くは丈夫の心なり」という箴言があります。
本日未明ついに平和安全法制が可決されました。わが国の「民王」はかつてないほどの強権をもちました。まさに「一強」です。「本懐」を遂げたともいえる「民王」が,何を思い,どこに向かっていくのか,不断の監視をつづけなければなりません。
しかし,今回の平和安全法制の一部野党の対応は目に余るものがありました。とくに,かつて集団的自衛権の行使容認を検討していた政権も担当したことのある政党が,世論が動いたのをみるや議論を放棄し,安易な違憲論を展開したことを許すことはできません(失われた3年の反省をまったくしていないことの証左といえます。)。
「浅き」に就いた勢力と「深き」に就いた勢力をしっかり見極める必要があります。
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名言シリーズ・「わが国の刑事裁判はかなり絶望的である」(by平野龍一先生)
2015.09.18更新
こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。
「わが国の刑事裁判はかなり絶望的である」という言葉は,著名な刑事法学者である平野龍一先生(以下「平野先生」といいます。)が『現行刑事訴訟の診断』(団藤重光博士古稀祝賀論文集第四巻,初版第1刷昭和60年8月30日,有斐閣,以下頁数で引用します。)で述べられている最後の言葉です。
平野先生は,当時わが国の裁判が「調書裁判」といわれていたことに対し,「公判廷は,単に証拠を受け渡す場所,あるいはせいぜい証拠収集の場所(公判廷で証言させ,それを公判調書又は裁判官のメモに転換する場所)であるにすぎない。本来,心証をとる行為が『証拠調べ』だとすれば,わが国では『証拠調べ』は裁判官の自室・自宅でなされるといってよい。」と痛烈に批判しておられました(418頁)。
平野先生が「わが国の刑事裁判はかなり絶望的である」との結論に至られた部分について,以下引用します(422頁~423頁)。
「…………日本の裁判官その他の司法関係者は,そもそも法廷というところは真実を明かにするのに適したところではないと考えているように思われる。人が相手に真実を語るのは,二人だけのところで,心を打ちあけて語るときであって,法廷のような公開の場所では,いろいろな方面への配慮から,思い思いのことをいうにすぎない。法廷とは,いいたいことをいわせる儀式にすぎない,だから真実は,後でその模様を考えあわせながら静かに調書を読みこれとつきあわせることによってえられるものである,ということなのであろう。
もしほんとうにそうであるならば,むしろ公判廷が証拠調べの場所すなわち心証をとる場所であるというフィクションは脱ぎ捨てた方がいいだろう。しかし,アメリカやドイツで本気で公判廷で心証をとろうとしているのを単なる教条主義とみていいものであろうか。調書もまた『種々の配慮』から,多くの真実でないものを含んでいる。それを『自室』で見抜く眼力を持つと裁判官が考えるのは自信過剰であり,大部分は実は検察官・警察官の考えにのっかっているにすぎないのではなかろうか。最近の再審事件は氷山の一角としてそのことを示したのでなかろうか。
ではこのような訴訟から脱却する道があるか,おそらく参審か陪審でも採用しない限り,ないかもしれない。現実は,むしろこれを強化する方向に向ってさえいるように思われる。わが国の刑事裁判はかなり絶望的である。」
当職は,受験時代に平野先生の言葉に出会いました。現行の刑事裁判は,「参審」でも「陪審」でもなく,「裁判員裁判」を採用しました。平野先生は,現行の裁判員裁判をどう思われるでしょうか。「絶望」は,「希望」となっておりますでしょうか。「失望」にならないように精進いたします。
「待て,しかして希望せよ!」(アレクサンドル・デュマ著,山内義雄訳『モンテ・クリスト伯 七』(岩波文庫)より)
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刑の執行猶予を学ぶ
2015.09.17更新
こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。
ニュース報道等をみますと,「執行猶予付きの有罪判決が下されました」などというコメントを聴くことがあります。この「執行猶予」とは何でしょうか?今回は,刑の執行猶予について学んでいこうと思います。
●刑の執行猶予とは?
これは,刑の執行(たとえば,刑務所に入所させる懲役刑や,罰金を払わせる罰金刑を執行して,実際に刑務所に入れたり,罰金を払わせたりすること)を,猶予してあげる制度です(ちなみに,罰金刑の執行猶予はあまりお目にかかりません。)。
たとえば,「懲役1年6月,執行猶予3年」という判決が下された場合には,本来であれば,刑務所に1年6か月入らなければいけないという刑ですが,3年間何事もなく過ごすことができれば,刑務所に入らなくて済みますよというものなのです。
そして,その3年の間に罪を犯すようなことがなければ,刑の言渡し自体が失効します(刑法27条)。
執行猶予と聴くと,悪いことをした人なのに自由にしていいのかと思われる方もおられるかもしれません。
しかし,あくまでも有罪判決ですから,猶予期間経過後もう一度何か犯罪行為をすれば,ほぼ確実に刑務所に行くこととなります。再度の執行猶予判決ということも,法律上はあり得ますが,非常にレアなケースです。
執行猶予付き判決を受けた被告人は,もちろん自身も深く反省していますが,同時に,外部から,もう二度と悪いことはできないという無言の心理的圧力を受けながら生活することとなります。
現実社会には困難や試練が多いのは,ご承知のとおりです。刑務所に入って生きるよりも,自由で,なんでもできる社会の中でまっとうに生きていくことの方が難しいかもしれません。
そういう方が,社会内で更生し,ふたたびやり直せるように,社会内で生きていく試練を与える制度が執行猶予といえるでしょう。
●執行猶予の要件は難しい…
そのような執行猶予制度ですが,要件が,少し法文からは分かりにくいと思います。
刑法25条には,以下のように記載があります(刑の一部の執行猶予が認められ,平成28年から施行されますが,まだ施行前ですので,現行法のまま掲載します。)
第25条 次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは,情状により,裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間,その執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け,情状に特に酌量すべきものがあるときも,前項と同様とする。ただし,次条第1項の規定により保護観察に付せられ,その期間内に更に罪を犯した者については,この限りでない。
これを読むと,執行猶予の要件は,
① 「次に掲げる者」であること : 25条1項1号または2号に掲げる者であること
② 3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたこと
③ 執行を猶予するべき情状が認められること
の3点となります。
このうち,①「次に掲げる者」であること : 25条1項1号または2号に掲げる者であること
の要件のうち,
25条1項1号の「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」は分かりやすいと思います。
しかし,25条1項2号の
「前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」
は,少し分かりづらいです(当職も受験時代苦労しました。)。
たとえば,懲役刑を受けて3年前に刑務所から出所した人は,25条1項2号に該当するのでしょうか。
この点,懲役刑を受けたのですから,「前に禁錮以上の刑に処せられたことがある」といえます。
では,「その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない」とはいえるでしょうか。
この点,3年前に刑務所から出所したのだから,出所した日(その執行を終わった日)から今回までに,禁固以上の刑に処せられていなければ,「その執行を終わった日(中略)から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない」といえるようにも思います。「5年以内は,ちゃんとやってたよ」といえるような気もします。
しかし,「その執行を終わった日(中略)から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない」(刑法25条1項2号)という文言は,禁錮以上の刑に処せられることなく5年以上の期間が経過していることをいう,と解釈されています。
すなわち,出所してから5年以上経過していないと,「その執行を終わった日(中略)から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない」とはいえないのです。
そうしますと,上記の例でいえば,3年前に刑務所から出所した人は,「次に掲げる者」(刑法25条)に当たらず,執行猶予判決はもらえないのです。
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「司法試験考査委員による試験問題漏えい事件」
2015.09.08更新
こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。
本日は,平成27年度の司法試験の合格発表の日です。それに合わせるように,昨日,今年の司法試験の内容が漏えいした問題がニュース報道されました。法務省は本日(9月8日),「司法試験考査委員」を務めていた明治大学法科大学院の憲法学の教授(以下「明治大教授」といいます。)が,試験前に教え子の受験生に問題の内容を漏らしていたと発表しました。
あらためていうまでもありませんが,司法試験考査委員は,非常勤の国家公務員として守秘義務が課せられています。法務省の司法試験委員会は,本日,国家公務員法違反(守秘義務違反)の被疑事実で,先の明治大教授を東京地方検察庁に告発しました。
法務省の調査に対し,明治大教授と受験生は漏えいの事実を認めており,同省は同教授を考査委員から解任したそうです。告発を受けた東京地検特捜部は,漏えいの経緯などについて本格的に捜査を始めたようです。
法務省などによりますと,明治大教授は作成に関わった憲法の論文式試験第1問の出題内容を,今年5月の試験前,教え子の20代女性に漏らしたとのことです。漏えい先はこの女性1人で,同省は女性を採点の対象から除外するとともに,今後5年間,司法試験などを受験することを禁止する行政処分を行ったそうです。この処分により,女性は司法試験の受験資格を失うこととなります。
明治大教授は,自分が作問に関わった憲法についての論文式試験の内容だけでなく,解答する上で必要な論述のポイントまで,事前に教えていたということも分かっているようです。論文式試験の採点が始まると,この女性の答案だけが「情報漏えいがなければ作成困難」な内容だったそうであり,疑問に感じた別の考査委員が情報提供し,法務省が調査に乗り出したそうです。
「司法試験考査委員による試験問題漏えい事件」は,忘れたころにやってくる感じで問題が発生します。最近ですと,司法試験考査委員だった元慶応義塾大学法科大学院教授が,平成19年,実際の出題に類似した論点を試験前の学生に説明していたという事件がありました(この慶応大教授は不起訴処分となっています。)。
その後,法務省はこの問題を受け,法科大学院で教授などを務める学者と,弁護士や裁判官などの実務家がほぼ半数ずつだった司法試験考査委員の割合について,翌平成20年の試験から学者枠を減らすなど再発防止に取り組んでいました。
ある司法試験考査委員が,「その後は問題漏えい対策を強化していたはずなのになぜこんなことが起きたのか,信じられない」という趣旨の発言があったことを紹介している報道もありましたが,「『ありえない』なんて事(こと)はありえない」(英語ですと”Nothing is impossible.”)(by 荒川弘さん原作の漫画『鋼の錬金術師』に登場するホムンクルス・グリードの言葉)と肝に銘じるべきです。また,尾田栄一郎さん原作の漫画『ONE PIECE』にも,「人が空想できる全ての物事は起こりうる現実である」との言葉が出てきます。
今回の問題は,平成19年の漏えい事件とは比較にならないほど,「司法試験の公正性」を揺るがす問題に発展しそうです。「氷山の一角」にすぎないということにならないようにしていただきたいと思います。
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『玉置浩二~故郷楽団~concert tour2015』を見に行ってきました!
2015.09.05更新
こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。
昨日(平成27年9月4日)の東京の空は,異常な暑さから一転,ゲリラ豪雨が降り嵐となりました。その後,再び晴れ間が現れ,まさに疾風怒涛の人生を象徴する天候でした。
その日の夕方,当職は妻と待ち合わせし,東京国際フォーラムに『玉置浩二~故郷楽団~concert tour2015』を見に行ってきました。
LIVEはまさに圧巻!昨年の『GOLD TOUR』は,安全地帯メンバーを帯同した大変盛り上がった内容でしたが,今回のtourは,比較的静かに,穏やかに,しっとりとしている内容となりました(ネタばれしないように詳細は書きません。)。
ただ,その反動からか,『田園』が演奏された際は,皆で総立ちとなり,盛り上がりました。
いやはや,それにしても玉置さんの声は,胸をわしづかみにします。個人の感想ですが,昨年よりもさらにパワーアップしている気がしました。唸りまくりでした。本当に凄い方です。
12月に行われる『KOJI TAMAKI PREMIUM SYMPHNIC CONCERT 2015-THE FINAL』のチケットも取れましたので,年末も玉置さんに会いに行きます。
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9月1日は『防災の日』
2015.09.01更新
こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。
本日裁判所に行きますと,防災訓練が実施されておりました。裁判官と話をする際に放送が流れたりしますと,なかなか聞きづらくて困りました。しかし,本日は,ありとあらゆる自然災害を避けることができない日本という国土に住む我々にとっては,極めて重要な日です。そうです。本日は,「防災の日」です。
「防災の日」は,昭和35年(1960)年6月11日,内閣の閣議了解によって制定されました。「政府,地方公共団体等関係諸機関をはじめ,広く国民が台風高潮,津波,地震等の災害についての認識を深め,これに対処する心構えを準備する」こととし,毎年9月1日を中心として「防災思想の普及,功労者の表彰,防災訓練等これにふさわしい行事」が実施されます。また,「防災の日」を含む1週間を防災週間として,様々な催しが行われます。
9月1日の日付は,大正12年(1923年)9月1日に発生した関東大震災にちなんだものです。
大正12年(1923年)年9月1日午前11時58分,震度7(マグニチュード7.9)の大地震が関東地方を襲い,死者・行方不明合わせて10万5千余名の尊い人命が失われました。
関東大震災については,震災後の混乱に乗じて社会主義や自由主義の指導者を殺害しようとする動きがありました。また,朝鮮人による凶悪犯罪や暴動が行われているなどのデマが行政機関や新聞,民衆を通じて広まり,民衆,警察,軍によって朝鮮人,またそれと間違われた中国人,日本人(聾唖者など)が殺傷されるという被害が発生したりもしました(ヘイトスピーチもその背景にあったようです。)
また,例年8月31日,9月1日付近は,台風の襲来が多いとされる「二百十日」にあたり,「災害への備えを怠らないように」との戒めも込められています。
制定前年の昭和34年(1959年)9月26日,「伊勢湾台風」によって,戦後最大の被害(全半壊・流失家屋約15万戸,浸水家屋約36万戸,死者約5,000人,行方不明約400人,傷者約4万人)を被ったことが契機となっています。
ところで,「防災」とは,どんな言葉の意味があるのでしょうか。
『広辞苑[第六版]』(岩波書店)には,「災害を防止すること。」と記載されていますが,災害対策基本法では,「災害を未然に防止し,災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ,及び災害の復旧を図ることをいう。」(同法第2条第2号)と定義しています。
ちなみに,『広辞苑』に「防災」という語が掲載されたのは,昭和44年(1969年)5月発刊の第二版第一刷からで,昭和30年(1950年)5月に発刊された初版本には載っていません。「防災意識」の高まりが『広辞苑』に掲載される語に影響を及ぼした証左といえるでしょう。
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