弁護士ブログ

相続問題,嫡出でない子の存在がどう影響する?

2022.02.21更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 

本日は,嫡出でない子の相続は,嫡出子とどう違うのか。相続問題において,どういう問題に発展する可能性があるのかについて解説していきます。

 

 

法律上の「子」には,嫡出子と嫡出でない子(講学上「非嫡出子」と呼ばれることが多いので,以下この用語を使用します。「婚外子」ともいわれます。)の2種類があります。

 

我が国においては,現状としては嫡出子の方が多数派となっていますが,近時の家族の在り方の多様性も反映してか,近年は,非嫡出子の数も増加傾向にあると言われています。

 

そこで,非嫡出子とはどのような子なのか,父母とはどのような法律関係があるのか等,基礎的な解説をいたします。

 

 

  • 非嫡出子(婚外子)とは

非嫡出子(「婚外子」ともいいます。)とは,婚姻関係にない男女間に生まれた子のことをいいます。

これに対し,嫡出子とは,婚姻関係にある男女間に生まれた子のことをいいます。

ここにいう「婚姻関係」とは,いわゆる「法律婚」のことであり,事実婚である内縁関係は含まれません。

嫡出子と非嫡出子は,生物学上の「子」であることはそのとおりなのですが,法律上の親子関係の観点からは,両者の間には,若干の法律上の取扱いの違いがあります。

 

 

  • 非嫡出子が父親と法律上の親子となるには認知が必要

非嫡出子は,嫡出子と同じく,実の母親の分娩により生まれてきます。

非嫡出子と母親との間に親子関係があることは分娩の事実により明らかなので,法律上の母子関係は当然に発生すると解されています(最判昭和37年4月27日民集16巻7号1247頁)。

 

これに対し,非嫡出子は,母親が婚姻中に懐胎した子ではないので,父親との間の親子関係が推定されません(民法772条1項)。

よって,非嫡出子と父親との間には,法律上の父子関係がないことが原則となります。

 

非嫡出子と父親との間に法律上の親子関係を発生させるには,「認知」という手続が必要となります(民法779条)。

父親が非嫡出子を認知しますと,出生の時にさかのぼって,両者は法律上の父子関係が発生します(民法784条)。

 

 

  • 非嫡出子の相続権及び法定相続分

民法887条1項によりますと,被相続人の子は相続人になると規定されています。

ここにいう「被相続人の子」は,被相続人と法律上の親子関係を有する者をいいますので,嫡出子か非嫡出子かは関係ありません。

すなわち,非嫡出子であっても,被相続人との間に法律上の親子関係があるのですから,相続権を有することとなります。

 

非嫡出子の相続権及び相続分については,つぎにように考えます。

 

①母親の相続

非嫡出子は,分娩によって,母親との間に法律上の親子関係が発生します。

 

よって,母親が亡くなり被相続人となった場合には,欠格事由,廃除,相続放棄等の場合を除き,非嫡出子は相続人となります。

 

②父親の相続

他方,非嫡出子と父親との間には,当然には法律上の親子関係が発生しません。

非嫡出子に父親の相続権を与えるためには,父親が非嫡出子を認知し,法律上の親子関係を発生させる必要があります。

認知は,戸籍法の規定にしたがって届出をする方法のほか(民法781条1項),遺言において認知する旨を記載する方法もあります(民法781条2項)。

 

③法定相続分

非嫡出子が相続人となる場合,法定相続分は嫡出子と同じです。

 

この点に関し,以前は,非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする規定があったのですが(民法旧900条4号ただし書),平成25年の最高裁大法廷決定により,その旧規定は憲法14条反し違憲であるとされました(最大決平成25年9月4日民集67巻6号1320頁)。

それを受けて民法旧900条4号ただし書前段は削除され,現在では非嫡出子の相続分は嫡出子と同等となっています。

 

 

  • 非嫡出子がいる場合に考えられる相続トラブル

 

非嫡出子がいる場合に考えられる相続トラブルとしては,つぎのようなことが想定されます。

非嫡出子は,嫡出子と共同生活をしていた時期がないことが多いことから,普段のコミュニケーションがとれていないことがあり得ます。

また,遺言による認知も認められていますので,そもそも嫡出子側で非嫡出子の存在自体を認識していないこともあり得ます。

あり得るケースとしては,非嫡出子を遺産分割協議に参加させないで協議をまとめてしまうことも考えられます。このようなケースでは,後々トラブルに発展してしまいますので,十分に調査する必要があります。

 

投稿者: 弁護士濵門俊也

新型コロナウイルス感染症の事務は,法定受託事務か?自治事務か?

2022.02.02更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 

新型コロナウイルス感染症がまん延し,マスメディアは連日「過去最多」を報道しています。とくに変異株オミクロン株の流行もあり,依然終息の見通しが立っていない状況です。そのため多くの分野において先行きが不透明な状態です。ワクチンのブースター接種も始まり地方自治体が取り組むべき問題の局面も徐々に移行しています。

そもそも,地方自治体の目的は「住民の福祉の増進」(地方自治法1条の2第1項)です。そのため,各地方自治体は,新型コロナウイルス感染症に対し,多くの政策を実施してきましたし,現在も実施しています。

 

今回は,地方自治体が取り組む新型コロナウイルス感染症の対応について解説します。

 

 

  • 新型コロナウイルス感染症の事務は,法定受託事務か?自治事務か?

新型コロナウイルス感染症に対応する法的根拠は「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以下「特措法」といいます。)です。特措法は新型インフルエンザ等感染症に対する対策強化を図ることにより,国民の生命や健康を保護し,生活や経済への影響を最小にすることを目的としています。もちろん,現在,我が国に襲来している新型コロナウイルス感染症にも対応しています。

 

特措法74条には「この法律の規定により地方公共団体が処理することとされている事務は,地方自治法第2条第9項第1号に規定する第1号法定受託事務とする」と規定されています。すなわち,新型コロナウイルス感染症の対応は「法定受託事務」なのです。

 

 

  • 法定受託事務と自治事務の定義

ここにいいます「法定受託事務」とは「国が本来果たすべき役割に係る事務であって,国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの」(地方自治法2条9項)と定義されています。

他方,自治事務とは「地方公共団体の処理する事務のうち,法定受託事務を除いたもの」(同法8項)です。

 

法定受託事務なので,国が率先して方針等を決めていく必要があります(果たして現政権はどうでしょうか。)。しかし,特措法は知事に営業自粛の要請(31条の6)など多くの権限を与えています。そのため一見すると自治事務という錯覚に陥る場面があります。法定受託事務の趣旨からは,国がリーダーシップを発揮すべきと思うのですが,知事にもリーダーシップを認めているというイメージです。

 

 

  • 「臨時特別給付金」の給付事務は「自治事務」なのに!?

また,国民一人当たり10万円が給付された「特別定額給付金」の給付事務は,実は,市区町村の「自治事務」なのです。

昨年末すったもんだがあった,「子育て世代への臨時特別給付金」の支給については,当初の政府の計画では、まず現金で5万円を支給した後,残りの5万円分はクーポンでの支給を基本とする想定でした。その後の議論で,クーポンではなく現金での支給が容認された結果,市区町村ごとに3つの方式がある形になっています。

そもそも「臨時特別給付金」の給付事務は「自治事務」なのですから,どうして上記のような混乱が生じたのかよく分からない点はあります。係る混乱が生じた背景には,当初,政府は「児童手当」の枠組みを利用しようとしたからということがあると思います。「児童手当」の給付事務は「法定受託事務」になります。既存の制度を利用できることからメリットも大きいと安直に考えたのかもしれませんが,かえって柔軟さを欠くことになり,手続も煩雑になるという愚を犯したことになります。このことはすぐに理解できたはずなのですが,「きほんのき」をおろそかにすると混乱を招くわけです。

 

 

  • ワクチン接種事務は「自治事務」

3回目のブースター接種が始まったワクチンの接種事務は「法定受託事務」です。新型コロナウイルス感染症の対応がケースにより主体が異なってくるわけです。そのため複雑化します。一見するとよく分からない状況ですが,国民からすれば,国であろうが,都道府県であろうが,市区町村であろうが,確実に新型コロナウイルス感染症の対策が実施されればいいのではないかと考えてしまいます。

 

さらに,保健所を設置しているか否かで,新型コロナウイルス感染症の具体的な対応も異なってきます。保健所は,都道府県,政令指定都市,中核市,特別区が設置しています(地域保健法第5条)。このような法的な限界により,地方自治体により新型コロナウイルス感染症の対応に差が出つつあるわけです。

しかし,そのような中でも,各地方自治体は創意工夫を凝らして,新型コロナウイルス感染症を終息させるべく,多様な政策(施策・事業を含みます。)を展開しているというわけです。

 

投稿者: 弁護士濵門俊也