弁護士ブログ

霊感商法と消費者契約法

2022.07.27更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 

安倍元首相の暗殺以降、某宗教団体の霊感商法が取り沙汰されています。某宗教団体の前身となる団体の霊感商法と戦ってきた弁護団もいます。しかし、これまで、国会は何もしてこなかったのかといえば、そのようなことはありません。

実は、平成30年(2018年)の消費者契約法改正により「霊感」という文言が規定され、法律用語となっています。当時国会議員であった方は、ご自身の仕事を忘れておられるようです。

某宗教団体に限らず、現在、コロナ禍に乗じて、霊感商法の被害者が再び増加傾向にあるようです。

そこで今回は、霊感商法に騙されてしまった時の対処法について解説していきます。

 

 

●霊感商法とは

 

 

霊感商法について、消費者契約法4条3項6号には「消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること」と規定されています。

ここで「霊感」とは、除霊、災いの除去や運勢の改善など、超自然的な現象を実現する能力を指し、「その他の合理的に実証することが困難な特別な能力」としては、いわゆる超能力が当たります。

簡単に言えば霊感商法とは、「単なるつぼや印鑑・置き物などに、あたかも超自然的な霊力があるように、言葉たくみに思わせて、不当に高い値段で売り込む商法」のことをいいます。

 

【具体例】

・水子の霊を供養しなければならないなどといって消費者の心理を突き、加持祈祷の費用などをだまし取った。

・自分の家系や配偶者の家系を救うことがあなたの使命であり、献金することによってあなたも家族も家系も救われるなどと言って自分や家族の金を拠出するように指示し、家族の財産を家族に内緒で、献金という名目で交付させた。

・コロナ禍の健康不安に付け込んで、このお札を買わなければあなたもコロナに感染しますよと言ってお札を購入させた。

 

 

●騙されて買ってしまった場合はどうするの?

 

 

では霊感商法に騙されて、商品を購入してしまった場合はどうすればいいのでしょうか。

以下では、騙されて購入してしまった商品の代金を返金してもらうための方法を紹介します。

 

①クーリング・オフ

霊感商法によって契約を締結してしまった後でも、その契約を解約することができる制度を「クーリング・オフ」といいます。

ただし、クーリング・オフには期間制限があり、契約書面を受け取った日から8日以内に手続きをする必要があるので注意が必要です。

騙されたと思ったら、必ず期間内に手続するようにしましょう。

また、期間内であっても、クーリング・オフができない場合もあります。

 

②消費者契約法に基づく取消し(4条3項6号)

平成30年に改正された消費者契約法4条3項柱書には

 

「消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。」

 

と規定されており、同6号で

 

「当該消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。」

 

と規定されています。

 

これにより、霊感などの実証困難な能力を使って、消費者の不安をあおり、その不安を解消・回避できる旨伝えて契約を締結した場合には、消費者契約法4条3項6号によりその契約を取り消すことができるようになりました。

 

 

●騙されたと思ったらまず相談を

 

 

前述したような方法によって返金を求めることができると分かっても、なかなか自分一人ではどうすればいいのか分からないですよね。

そんな時は、一人で悩まずに、まず、以下の機関に相談してみましょう。

 

①消費者ホットライン

消費者ホットラインは、「誰もがアクセスしやすい相談窓口」として開設されたものです。

消費者ホットライン『局番なしの188』に架ければ、お近くの消費生活相談窓口を案内してくれます。

 

②警察署または弁護士

霊感商法は、事例によっては詐欺罪や恐喝罪にも該当することがあります。霊感商法の手口が悪質だった場合には、警察や弁護士に相談してみるのも、有効な手段の一つです。

投稿者: 弁護士濵門俊也

令和2年中に侮辱罪のみにより第一審判決・略式命令のあった事例

2022.07.07更新

法務省は、法制審議会刑事法(侮辱罪の法定刑関係)部会の第1回会議配布資料として「侮辱罪の事例集」を明らかにしています。そこには、「令和2年中に侮辱罪のみにより第一審判決・略式命令のあった事例」として30の事例が紹介されています。

 

https://www.moj.go.jp/content/001375709.pdf

 

 

① SNSに「この子○○(地名)一番安い子!!お客様すぐホテル行ける!!最低!!」などと投稿するとともに、当該SNSにおける被害者のプロフィール画面を撮影した画像を掲載したもの。科料 9900円

 

② SNSに「この○○(被害者名)を有名ブスオナペにしたい ので皆さん拡散お願いします!」、「#オナペ」、「#ブス オナペ」、「#肉便器」などと掲載したもの。 科料 9000円

 

③ SNSの投稿欄に「人間性を疑います。1人のスタッフを仲間外れにし、みんなでいじめる。1人のスタッフの愚痴を他 院のスタッフに愚痴を言いまくる社長 1人のスタッフの話 も聞けない社長」などと記載した文章を送信して掲載したも の。 科料 9000円

 

④ SNSの投稿欄にアルバイト先前で撮影した画像を掲載する とともに、「○○(アルバイト先名)でうまくやっていくコツは、向上心を持たないことと、諦めることと、店長が言うことは聞き流してればいいということだった気がする。♯うちの○○(店長である被害者名)がご迷惑おかけしましたはパワーワードすぎ」などと掲載したもの。 科料 9000円

 

⑤ SNSの他人名義のアカウントに係るページに、被害者の顔写真及び「○○(被害者名)」、「今日会えないからエッチできないじゃん」、「1日1回、キスで充電しなきゃだね~」などの文字が記載された画像を掲載したもの。 科料 9000円

 

⑥ SNSの被害者に関する配信動画で「BM、ブタ」などと放言したもの。 科料 9000円

 

⑦ SNSの配信動画で「何処ですかあ、豚さん何処ですかあ 家」、「ブスう、死ね」、「お金はない、体形は豚、顔はブス、体は臭そうってやばいなお前」などと放言したもの。 科料 9000円

 

⑧ インターネット上の掲示板に「とうとうYouTubeのコメントは頭おかしくなった 本人がアカウント何個も作って 自作自演乙w アホ丸出しで長文タラタラ。読んでも気持ち 悪さが勝って なんちゃ理解出来んわw 親子共々、精神が 幼すぎ。子供が可哀想や」、「○○(被害者名)も昔は若 かったけど、もう40前のええ歳した大人やろ?周りから痛い目で見られてるん気付かんかい。」などと掲載したもの。 科料 9000円

 

⑨ インターネット上の掲示板に「○○(被害者名)って金も無いし女も居ないし友達もいない童貞だろ? 裏で悪口言われまくりなの知らないのは本人だけだ ワキガと口臭どうにかして接客しような?」などと掲載したもの。 科料 9000円

 

⑩ インターネット上の掲示板に「○○(被害者名) 顔も、便器みたいな顔、ブスでぺしゃんこ」、「○○(被害者名) ぶす女」、「しゃべる便器みたいな顔してるやつがいる」などと掲載したもの。 科料 9000円

 

⑪ インターネット上の掲示板に「○○(地名)に出没する○○ (被害者経営店舗名)勤務の女尻軽やでなぁ笑笑」などと掲載したもの。 科料 9000円

 

⑫ インターネット上の掲示板に「昔、どっ突かれては泣きながら猫パンチして笑われ者だった○○(被害者名)は自分の稼ぎで自分の家族を住まわせる住まいすら持てなくて豚女房の 親が買ったボロ家で情けねー住み着き生活している廃品クズ 野郎(笑)」などと掲載したもの。 科料 9000円

 

⑬ インターネット上の掲示板に「母親が金の亡者だから、稼げ 稼げ言ってるらしいよ!育ててやってんだから稼いで金よこせ!って言われてんじゃないかしら?」、「子供達しょっちゅう施設に入ってたらしいよ」などと掲載したもの。 科料 9000円

 

⑭ インターネット上の掲示板に「○○(被害者名) いじめ大好き 援交大好き DQNの肉便器 特技は股開くこと」な どと掲載したもの。 科料 9900円

 

⑮ インターネット上の掲示板に「○○(被害者名) ○○ (地名)のヤリマン」と題するスレッドを作成した上、同スレッド名の対象が被害者であることが分かるように、同人が 開設したSNSのアカウント名等を記載した文章を掲載するなどしたもの。 科料 9000円

 

⑯ インターネット上の掲示板の「○○(被害者経営店舗名)って?」と題するスレッドに、「○○(被害者名)は自己中で ワガママキチガイ」「いや違う○○(被害者名)は変質者 じゃけ!」などと掲載したもの。 科料 9900円

 

⑰ インターネット上のブログに、被害者の顔等が撮影された画像等をそれぞれ掲載するとともに、「そして月日が経ち、○ ○(被害者名)のパワハラがクラッシャー上司を混ぜ合わせ たようにコラボ化し○○(関係者名)に激しく襲い掛かる。」、「弱い者イジメを好む性格らしい。」、「その他 諸々と大袈裟なパワハラなど多数あるので折を見て記載する。」などと掲載したもの。 科料 9000円

 

⑱ インターネットサイトの被害法人に関する口コミ掲示板に、「詐欺不動産」、「対応が最悪の不動産屋。頭の悪い詐欺師みたいな人。」などと掲載したもの。 科料 9000円

 

⑲ インターネット上のニュースサイトに掲載された被害者及び同人の長男がテレビ出演する内容の記事のコメント欄に「ここの子供は、廻りのクラスメイトさんに迷惑掛けっぱなしで、母親も地元○○(地名)では有名人。今までも学校側の 関係者には、迷惑をかなりかけて大変すぎる。」、「歯止めが効かない母親の人格的な育て方に大問題があるのでは?」 などと掲載したもの。 科料 9000円

 

⑳ 被害者が出演しているインターネット上の動画のコメント欄 に「この女、自分が加害者だからこういうこと言うのでしょう。」などと投稿して掲載し、また、SNSで、被害者の顔 写真と共に「18:30-本日の陰謀オカルトコーナーには ○○(被害者名)さんが登場!お楽しみに!」などと投稿されたことに対し、返信欄に「この女、SM嬢ですよ。」と投 稿して掲載したもの。 科料 9000円

 

㉑ インターネットサイトを運営している企業の取締役が、共犯 者と共謀の上、「地域医療に貢献!?○○(被害者経営の医 院名)」と題し「こんなおもちゃの剣ごときを自慢しているようでは、○○(被害者名)の頭の中はお花畑なのではない でしょうか?」などと記載した記事を掲載するなどしたもの。 科料 9000円

 

㉒ 情報誌を発行する企業の代表取締役者が、誌面の下部に「ふしだらな○○(被害者名)」と記載した同人の顔写真を掲載 し、約3000部を書店等へ配布するなどして頒布したもの。 科料 9000円

 

㉓ 集合住宅の郵便受けに「自分の愚かさを正当化する為に悪どい手段を用いて敵意を持った相手を陥れるために議事録の偽 造、捏造でっち上げ等々でなりふり構わず、自分本位の行動をする」、「理事長は、自分の欲望を満たす為、○○(被告 人名)を悪人に仕立て上げ活動を防止させて、自分の手柄の為理事長の地位を悪用し組合財産(理事会運営費等)を個人利益に利用し○○(被告人名)を中傷するビラを撒き自慢し得意になる人間はいかがなものか考てみよう?」などと記載した文書を投函したもの。 科料 9000円

 

㉔ 集合住宅において、計3名に対し、被害者について、「今、 ほら、ちまたで流行りの発達障害。だから人とのコミュニ ケーションがちょっと出来ない。」などと言ったもの。 科料 9000円

 

㉕ 被害者が経営する事務所の道路に面したガラス窓等に「支払いは?連絡は?にげると?フザケルナ」との文言をマスキングテープで貼付したもの。 科料 9000円

 

㉖ 駅の柱等に「ご注意 ○○(被害者名) 悪質リフォーム工事業者です」などと記載した紙片5枚を貼付したもの。 科料 9000円

 

㉗ 商業施設掲示板に「○○(被害者名) コノオトコハ ワル イ オトコ デス」などと記載した紙片1枚を貼付したもの。 科料 9000円

 

㉘ 路上において、被害者に対し、「スコップとかスケールを盗んだ。」などと大声で言ったもの。 科料 9000円

 

㉙ 路上において、被害者に対し、大声で「くそばばあが。死ね。」などと言ったもの。 科料 9000円

 

㉚ 商業施設において、他の買い物客等がいる前で、視覚障害者である被害者に対し、「おめえ、周りが見えんのんやったら、うろうろするな。」などと大声で言ったもの。 科料 9900円

投稿者: 弁護士濵門俊也

厳罰化された侮辱罪、本日より施行

2022.07.07更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 

きょう(令和4年7月7日)から侮辱罪の法定刑が引き上げられ、厳罰化されます。人を死に追いやるような悪質な「ネット中傷」など、7月7日以降に公然と人を侮辱したら、懲役刑の選択も可能となりました。

 

侮辱罪は、具体的な事実を示さなくとも、「バカ」「クズ」「ゴミ」「ハゲ」「チビ」「デブ」など公然と人の社会的評価を低下するような言動をし、侮辱すれば成立します。事実の摘示を要する名誉毀損罪とはこの点が異なります。

もちろん、「公然」(不特定または多数の者が認識できる中)、何らかの具体的な事実を示したほうが、人の社会的評価を傷つける程度は大きいです。そこで、名誉毀損罪の法定刑が「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」であるのに対し、これまで侮辱罪は、「拘留又は科料」にとどまっていました。

しかし、拘留は刑事施設での1日以上30日未満の身柄拘束、科料は1000円以上1万円未満の金銭罰にすぎません。これは刑法の中では侮辱罪だけであり、法定刑だけをみると軽犯罪法違反と同じです。しかも、拘留には執行猶予の制度がなく、必ず実刑になるので、ほとんどの侮辱事件が科料9000円や9900円で終わっていました。

そこで、自死者まで出てしまうなど「ネット中傷」の社会問題化を踏まえ、侮辱罪の法定刑に1年以下の懲役・禁錮と30万円以下の罰金を追加するかたちで刑罰の引き上げが行われたわけです。すなわち、「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に引き上げられました。

ただし、条文の文言など侮辱罪そのものの中身まではまったく変えられていませんので、今回の法改正によって侮辱罪の成立範囲が広がるということはありません。たとえば、政治家に対する公正な批判や論評も、これまで同様、正当な表現行為であれば処罰されることはありません。

それでも法務省は、表現の自由への制約が懸念されていることを踏まえ、念のため全国の検察庁に対し、法改正の趣旨を踏まえた適切な運用を求める通達を出したといいます。改正法も、施行3年後の段階で施行状況の検証を求めています。

 

投稿者: 弁護士濵門俊也