「死者に対する名誉毀損罪」を学ぶ
2015/09/26
こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。
今朝,電車に乗っていましたところ,ある雑誌の中刷り広告を見ました。その雑誌には,先日癌でお亡くなりになられたある女優さんの記事が掲載されていました。記事の内容からすると,その女優さんが亡くなられる前の状況を扱っているようでした。
そこで,今回は,「死者に対する名誉毀損罪」について,説明したいと思います。
●死者の名誉毀損罪(刑法第230条第2項)の法文
「死者の名誉を毀損した者は,虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ,罰しない。」
●保護法益
本罪の保護法益については,争いがありますが,「死者自身の名誉」と考えるのが通説的見解といえます。この説によると,生存中に有していた名誉に対して,その保護を死後にまで及ぼしたものと解するということとなります。
反対説として,「死者に対する遺族の敬愛の情」であるとする見解も有力です。ただし,これに対しては,遺族のない死者について本罪の成立を肯定できなくなるとの批判があります。
また,「遺族の名誉」とする説もあります。しかし,故人に関する事実であってもそれが遺族の名誉を毀損すれば,通常の名誉毀損罪(刑法第230条第1項)が成立し得るので妥当ではないとの批判があります。
●行為
本罪の行為は,公然と虚偽の事実を摘示して死者の名誉を毀損することです。
死者の名誉に関する事実については,摘示された事実が真実であれば,本罪は成立しないということです。歴史的批評の対象としての意味も含むからと説明されます。
結果として,真実であれば構いません。
ちなみに,事実摘示後に相手方が死亡した場合は,本罪ではなく,通常の名誉毀損罪(刑法第230条第1項)の問題です。したがって,事実が真実であったとしても処罰されるのが原則ですので注意してください。
●故意(構成要件的故意)
本罪の場合は,虚偽の事実を摘示することが構成要件的行為ですから,故意(構成要件的故意)の内容としても,事実が「虚偽」であることの認識が必要です。真実であると誤信したときは,(たとえ軽信であっても)故意を阻却します。
※虚偽であることを確定的に知っていたことを要し,未必的認識では足りないとするのが多数説です。
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弁護士 濵門俊也
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