弁護士 濵門俊也
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決闘罪とは何?ー岐阜・可児市の少年事件を受けて

決闘罪とは何?ー岐阜・可児市の少年事件を受けて

2015/10/09

こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 本日(平成27年10月9日),岐阜新聞Webからつぎのニュースがもたらされました。

 

 【以下,引用始め】

「蹴り,凶器なし」ルール決め… 岐阜・可児市で決闘疑い 少年22人書類送検

 

 今年8月,岐阜県可児市の広場で集団で殴り合いのけんかをしたとして,岐阜県警少年課と可児署は8日,決闘や暴行の疑いで,同市や多治見市,美濃加茂市の中学3年ら14~19歳の少年22人を書類送検した。

 書類送検容疑は,8月17日午後2時ごろ,可児市内にある別々の中学校グループの計29人が広場に集まり,うち22人が互いに入り乱れ,素手で殴るなどしてけんかをした疑い。

 同課によると,一方のグループのリーダー格(14)が以前から,もう一方のグループのリーダー格(15)に対して「態度が生意気」「自分たちの力を見せつけたい」と,仲間を通じてけんかを申し込んでいたという。2人に面識はなかった。

 8月9日に市内であった夏祭りで2人が遭遇し,けんかすることで同意。その後,無料通信アプリLINE(ライン)を使って日時や場所を決めた。集まったその場で▽髪の毛をつかまない▽蹴りはしない▽凶器は使わない-と約束した後,けんかを始めたとという。参加した少年から110番があった。少年たちはいずれも容疑を認めている。

 決闘罪は1889年に制定された法律で平成に入って県内で適用されるのは初。

【以上,引用終わり】

 

 決闘罪は,明治22年(1889年)制定の「決闘罪ニ関スル件」(便宜上の呼称で,正式には法律名はありません。以下「本法」といいます。)に定められており,平成17年の検察庁の統計では,34名がこの罪名で受理されています。

 決闘罪が立件される事案は極めて稀であるため,このようにニュースになるのですが,あまり知られていないでしょう。そこで,今回は,決闘罪について説明してみます。

 

●法律の内容

 本法は全6条からなり,決闘を行った人はもちろん,決闘を挑んだ人,決闘に応じた人,決闘立会人,決闘の立会いを約束した人,決闘場所提供者など決闘に関わった者に適用されます。もっとも,構成要件及び法定刑は主体ごとに定めてあります。

 ①決闘を挑んだ者・応じた者(1条):6月以上2年以下の有期懲役

 ②決闘を行った者(2条):2年以上5年以下の有期懲役

 ③決闘立会人・決闘の立会いを約束した者(4条1項): 1月以上1年以下の有期懲役

 ④事情を知って決闘場所を貸与・提供した者(4条2項): 1月以上1年以下の有期懲役

 決闘の結果,人を殺傷した場合は,決闘の罪と刑法の殺人罪・傷害罪とを比較し,重い方で処罰されます(3条)。

 また,決闘に応じないという理由で人の名誉を傷つけた場合は,刑法の名誉毀損罪で処罰されます(5条)。

 ちなみに,本法は現行の刑法が施行される前の法律ですから,本法の内容の把握には本法だけでなく刑法施行法(明治41年3月28日法律第29号)の内容も参照する必要があります。刑法施行法によれば本法で「重禁錮」とされているものは「有期懲役」に変更され,また罰金附加は廃止されています。

 

●決闘の定義

 本法にいう「決闘」について,最判昭和26年3月16日は「当事者間の合意により相互に身体又は生命を害すべき暴行をもつて争闘する行為を汎称するのであつて必ずしも殺人の意思をもつて争闘することを要するものではない。」と判示しています。

 もっとも,たとえば,ボクシングの試合・スパーリングを申し込んで,実際に対戦したとしても「スポーツである以上」は,それが違法性阻却事由であり同罪は成立しないこととなります。

 

●本法制定の経緯

 本法が制定される前の旧刑法(明治15年(1882年)施行)には,決闘罪の規定は設けられていませんでした。しかし,明治21年(1888年)に,当時新聞記者であった犬養毅(後の総理大臣で,5・15事件で暗殺されました。)に対し決闘が申し込まれ,犬養が拒絶するという事件が報道され話題となり,この事件に触発されたと思われる決闘申込事件が続出したそうです。また,決闘の是非についての論議が盛り上がり,中には「決闘は文明の華」であるとする無罪説もあったようです。そのようなことから,西欧型の決闘の風習が我が国に伝わるおそれのあることが考慮され,翌明治22年(1889年)に特別法として「決闘罪ニ関スル件」が制定されたといわれています。

 

●現在の適用

 明治時代の制定以来,実務上はほとんど適用の機会がなく,昭和後期・平成初期までこの法律は「過去の遺物」となっていました。しかし,少年少女同士による果たし合い,いわゆる「タイマン」が本法の決闘に該当するとの判断がなされて以降は事態が急変したようです。

 これにより,たとえば暴行罪や傷害罪での立件が困難であるような事件を摘発又は解決する道を開く法として,その価値を見出されることとなりました。ただ,適用の多寡は,各都道府県警察により異なるようです。

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