セウォル号船長に無期懲役…「殺人罪」を認定
2015/11/12
こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。
本日(平成27年11月12日)午後,以下引用するニュースが配信されました。
【以下,引用始め】
セウォル号船長に無期懲役…「殺人罪」を認定=韓国最高裁
WoW!Korea 11月12日(木)15時5分配信
セウォル号沈没事故当時,乗客を見捨てて脱出した容疑のイ・ジュンソク(70)船長に韓国の最高裁判所が殺人罪を適用し,無期懲役を確定した。
昨年4月16日のセウォル号沈没事故で乗客と乗員300人が死亡や行方不明になってから1年7か月ぶりである。
最高裁の全員合議体は12日,殺人などの容疑で起訴されたイ・ジュンソク船長に無期懲役を宣告した原審を確定した。
最高裁は乗客がセウォル号から脱出できないことを十分認識しても,真っ先に退船したため,イ・ジュンソク船長が船長としての義務を意識的かつ全面的に放棄したと判断した。
最高裁はまず「イ・ジュンソク船長が退船やその時期,方法を決定するのと同様に,乗客の救助に対し唯一の権限を持っている」とし,「当時,事態を支配する地位にあったとみることができる」と強調した。
続けて「特に適切な退船命令だけでも相当数の乗客脱出と生存が可能だった」とし「それにも関わらず船長は船内待機命令を下したまま,沈没直前まで何の措置も取らず数人の乗員と退船して,これを不可能にした」と指摘した。
また「自分の行為で乗客が死亡する可能性があるという点を知っていたと思われる」とし「不作為による殺人の未必的故意が認められる」と殺人罪を認定した。
検察は,イ・ジュンソク船長がすぐに退船措置をしなければ乗客らが死亡する可能性があるという事実を知りながら脱出したと判断,殺人などの容疑で起訴した。
下級審ではイ・ジュンソク船長に殺人の未必的故意があったのかどうかに対して判断が分かれた。
1審裁判は「イ・ジュンソク船長に殺人の未必的故意があったとみるのは難しい」と殺人罪ではなく遺棄致死罪を適用,懲役36年を宣告した。しかし2審はイ・ジュンソク船長に殺人の未必的故意があったと判断し,殺人罪を適用して無期懲役を言い渡していた。
この日,最高裁は機関長パク某氏(54)など幹部船員3人に対しても懲役7~12年を確定した。
パク某氏など1審で調理部船員2人については殺人罪が認定され,懲役15~30年を宣告したが,控訴審は殺人ではなく遺棄致死などの容疑を適用,懲役7~12年に減刑した。
この他,控訴審で懲役刑を宣告されたていた残りの船員11人も全員懲役刑が確定した。
【以下,引用終わり】
「不作為による殺人」や「殺人の未必の故意(未必の殺意)」については,後日解説したいと思いますが,当職が注目するのは,昨年4月16日の事故発生から1年7か月で最高裁(大韓民国では「大法院」と呼びます。)の判断が下されているという点です。わが国における裁判員裁判では,本件事故のクラスとなりますと,かなり公判前整理手続に時間を要しそうで,第1審判決すら下されていないかもしれません。ここまでのスピード感はすごいなと感心しました。
すでにご存じの方もおられると思いますが,大韓民国(以下「韓国」といいます。)では,2008年1月1日から,「国民の刑事裁判への参加に関する法律」(参加法・参与法と訳されることもあるようです。以下「参加法」といいます。)が施行されています。この制度は,わが国における裁判員裁判のようなものですが,制度上はかなり相違点があります。
まず,韓国の制度は,陪審制的な性質をもっていますが,陪審員の評決は裁判所を拘束しませんし,過半数の要求によって裁判官の意見を聞くことができるとされています。他方裁判員裁判では,裁判官も裁判員も一人一票を有していますから,かなり異なります。
また,有罪,無罪の評議から続いて量刑についても議論することや対象事件が,「殺人,強盗,傷害致死,強姦致傷,放火などの重罪に当たる事件」である点は,裁判員裁判と似ています。
しかし,裁判員裁判と最も異なるのは,韓国の参加法では,被告人に選択権が与えられているという点です。また,いったん国民参加による裁判を希望する旨の意思を表示しても,所定の期間までに撤回することができるとされているのです。
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