テロと免責条項ー仏・パリにおける同時多発テロ事件を受けて
2015/11/18
こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。
フランス共和国(以下「フランス」といいます。)の首都パリで,現地時間の11月13日夜,コンサートホールやレストランなどで,爆弾や銃撃による同時多発テロ事件が起きました。ニュース報道によれば,129人が死亡し,350人以上が負傷したとのことです。
今回のテロ事件を受けて,海外で駐在や旅行をしている際に,テロに遭遇するかもしれないと不安に思った人も少なくないのではないでしょうか。外国での事故に備えて,海外旅行保険に加入する人も多いかと思いますが,どこまで補償されるのでしょうか。
すでにお気づきの方もおられるように思いますが,保険の約款の中には「免責条項」が定められており,特定の事情で発生した損害について「保険会社は保険金を支払いません」と規定されているものがほとんどです。この特定の事情の中に「戦争」「外国の武力行使」「革命」「内乱」「武装反乱」等といった文言が含まれていることは珍しくありません。
そこで,今回はテロと免責条項について解説します。
●一般的には,テロは免責条項に該当しない
各保険会社の海外旅行保険において定められている免責条項は,いわゆる「戦争危険」として免責される旨が定められています。
他方,警察庁組織令によりますと,テロとは「広く恐怖または不安を抱かせることによりその目的を達成することを意図して行われる政治上その他の主義主張に基づく暴力主義的破壊活動」であると定義されています(警察庁組織令第39条4項)。
また,ある大手保険会社のホームページには,「政治的,社会的,宗教的もしくは思想的な主義もしくは主張を有する団体もしくは個人またはこれと連帯するものがその主義または主張に関して行う暴力的行動」とされているものもあります。
係る定義からしますと,テロが「暴力主義的破壊活動」や「暴力的行動」にとどまる以上,「戦争危険」には該当しないとされることとなりますし,実際もそのように解釈されています。
よって,海外でテロの被害にあった場合,海外旅行保険により損害を補償してもらうことが可能となるのが一般的です。
●テロから「戦争」に発展してしまった場合の取り扱い
では,今後「テロ」をきっかけに「戦争」に発展してしまったケースにおいては,どうなるのでしょうか。
あまり考えたくない事態ですが,テロ行為が組織的かつ間断なく継続的に行われ,平面的な広さをもつようになり,これを阻止しようとする勢力と交戦状態に至り,「戦争」や「内乱」等に該当するような場合には,「戦争危険」に該当すると想定できます。そうした場合,「戦争危険」に該当した以降の損害については,免責事由に該当することが想定されます。
免責事由に該当する「外国の武力行使」などを起因として生じた傷害または疾病に対しては,保険金が支払われないおそれがあるでしょう。
フランスのオランド大統領は11月16日,自国が「戦争状態にある」として,テロ直後に出した非常事態宣言の3か月延長を議会に要請する方針を明らかにしました。もし今後,フランスで大きな殺傷事件が起きた場合は,保険会社が「戦争」と判断して,保険金を支払わない可能性もあり得るかもしれません。
とてもかくても,海外旅行保険に加入する際には,しっかり約款を確認したほうがいいと思います。
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弁護士 濵門俊也
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日本橋にて交通事故問題を支援
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