弁護士 濵門俊也
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「デジタル万引き」の違法性を考える

「デジタル万引き」の違法性を考える

2015/12/03

こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 当職は,リアル書店でよく新刊等を物色するのですが,本を立ち読みしていると,時々携帯電話のカメラ機能のシャッター音が聞こえてくることがあります。このような,書店やコンビニエンスストアなどで,雑誌や書籍を買わずに,デジタルカメラなどでページ内を撮影し,情報だけを持ち帰ることを「デジタル万引き」というようです。「デジタル万引き」という名称は,日本雑誌協会や電気通信事業者協会が発案し,社会で使われるようになりました。

 「万引き」という言葉から,窃盗罪を想起される方もおられるかと思いますが,後述するとおり,デジタル万引きは通常の万引きのように窃盗罪には問われません。表現が行き過ぎとの指摘を受け,日本雑誌協会ではデジタル万引きという表現を使わないように自粛しています。

 ただ,窃盗罪には問われないとしても,違法行為に該当するのではないかとの疑問をもたれる方もおられるかと思います。そこで,今回は,「デジタル万引き」の違法性について説明します。

 

●窃盗罪は成立しない

 窃盗罪が成立するためには「財物」を窃取する必要があるとされます。そして,財物とは有体物であると解する説(有体性説)が有力です(有体性説によりますと,「電気」は「財物」には該当しないはずですが,刑法第245条は「財物とみなす」と規定しています。)。

 「デジタル万引き」は写真撮影しているだけであり,画像データとして記録されるものの,財物である「本」それ自体を窃取するわけではありません。

 よって,窃盗罪が成立することはないわけです。

 

●著作権法違反とはなるか?

 本の内容を勝手に撮影するということは,他人の著作物を許可なく複製する行為であるともいえます。そこで,著作権法違反とはならないでしょうか。

 著作権法は,私的利用のための複製については著作権者の許諾なくすることができるとしています。文化庁著作権課によると,基本的に私的複製として許されるとの見解を示しております(購入してない本ですから,若干疑問は残りますが。)。

 もちろん,撮影した写真等をインターネット上に公開したり,配信したりしている場合は,私的複製の範囲を超えるため著作権法違反となります。

 

●建造物侵入罪が成立する可能性

 本屋は「デジタル万引き」を禁止しているところが多いです。本屋からすれば本が売れなくなることとなり,迷惑行為に該当しますから当然の対応といえるでしょう。

 本屋からすれば「デジタル万引き」を目的で来店するような人物は「お客さま」とは呼べません。そのような不当な目的であることを知っていれば,本屋としては入店を断るはずです。

 そのため,理論上は,「デジタル万引き」目的で本屋内に入った場合,建造物侵入罪が成立し得るのではないかと思います(私見)。

 ちなみに,「デジタル万引き」と類似した行為として,映画館で映画を撮影する行為等がありますが,かかる行為は法律によって禁止されています(映画館の予告編で必ず流れるあれです。)。

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