わたしの「ふつう」とあなたの「ふつう」--「ちがい」を「まちがい」にしない
2016/12/13
こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。
ニュース報道によりますと,東京都千代田区の区立中学校において,東京電力福島原発事故のため福島県から自主避難している生徒が,同学年の3人に「おごってよ」などと言われ,お菓子など計約1万円分をおごっていたことが分かったそうです。本人と母親が学校に申告し,判明したといいます。
新聞社の取材に応じた生徒の話によりますと,昨年夏ごろから一部の生徒に「避難者」と呼ばれるようになり,「福島から来たからお金ないんだろ」「貧乏だからおごれないの?」「避難者とばらすよ」などと言われ,今年になってコンビニエンスストアでドーナツやジュースなどをおごらされるようになったといいます。出たゴミは「あげるよ」などとかばんに詰め込まれたそうです。教科書やノートがなくなり,教室の隅でページの一部がない状態で見つかったこともあったといいます。
生徒は「小学校のときから『菌』『福島さん』といじめられてきたので知られたくなかった。お金で口止めできるのならそれでいいと思った」と話しています。
先日も横浜市や新潟市で同様のいじめがあったことが報道されていましたが,報道に接し,胸が苦しくなります。悲しくなります。「いじめはいじめる方が100%悪い」との思想がまだまだ浸透していないことを痛感いたします。
去る12月10日は「世界人権デー」でした。昭和23年(1948年)12月10日,第3回国連総会で「世界人権宣言」が採択されたのが淵源です。翌年,わが国は12月4日から10日を「人権週間」と定め,毎年,各地で啓発活動に取り組んでいます。
その取り組みの一環として,つぎの言葉のポスターがSNS上で話題となりました。
「わたしの『ふつう』と,あなたの『ふつう』はちがう。それを,わたしたちの『ふつう』にしよう」。
これは,本年の「人権週間」を前に,愛知県が作成し,県内の鉄道駅などに掲示したものです。人権問題について,高齢者,女性,性的少数者,障害者などテーマごとに漫画で描かれており,「分かりやすい」「考えさせられた」と評判を呼んでいます。
法務省は本年,人権啓発のための17の強調項目を発表しました。女性,子ども,高齢者の人権を守り,少数者への偏見・差別などをなくそうと訴える内容です。裏を返せば,項目の多様さは,課題が山積していると見ることもできます。
人間は往々にして,“多数派”とは異なる「ちがう」人や,自分が思う「ふつう」から外れた「ちがう」人を,奇異に見たり,見下したりしがちなところがあります。しかし,それが「まちがい」です。「ちがい」を受け入れ,「まちがい」にしない不断の努力が人権を護ることとなるのです。
古代インドに出現し,仏教を創始したとされるゴータマ・ブッダの言葉に「人の心に見がたき一本の矢が刺さっているのを見た」とうものがあります。この矢とは「差異へのこだわり・執着」であるといえます。このような自分の内なる“差別意識”を克服することが重要となるはずです。
「世界人権宣言」の原題は,直訳すれば「人権の普遍的宣言」です。この普遍性とは,“すべての国や地域”“すべての人”を指すことはいうまでもありません。そこに「時間」という普遍性・永遠性を加えましょう。
毎年やってくる「12・10」を機に,あらためて,自分にできる行動が何であるかを考えます。「善きことはカタツムリの速度で動く」とは,インド独立建国の父であるマハトマ・ガンディの言葉です。ゆっくりと着実に,希望をもって前に進みましょう。
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弁護士 濵門俊也
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