弁護士 濵門俊也
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君は「麻薬特例法」という法律を知っているかね?「麻薬特例法」の正式名称は、「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成3年法律第94号)」です。

君は「麻薬特例法」という法律を知っているかね?「麻薬特例法」の正式名称は、「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成3年法律第94号)」です。

2023/12/10

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

皆さまは「麻薬特例法」という法律をご存知ですか。

大麻を規制する法律として「大麻取締法」が知られていますが、「麻薬特例法」というのは聞きなれないという人が多いかもしれません。以下、分かりやすく解説します。

 

  • 麻薬特例法とは……カバー範囲が広く、大麻取締法にない事項も含む法律

「麻薬特例法」の正式名称は、「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成3年法律第94号)」です。

 

この法律の目的は、第1条に次のように記されています。

 

第1条 この法律は、薬物犯罪による薬物犯罪収益等を剝奪すること等により、規制薬物に係る不正行為が行われる主要な要因を国際的な協力の下に除去することの重要性に鑑み、並びに規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図り、及びこれに関する国際約束の適確な実施を確保するため、麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号)、大麻取締法(昭和23年法律第124号)、あへん法(昭和29年法律第71号)及び覚醒剤取締法(昭和26年法律第252号)に定めるもののほか、これらの法律その他の関係法律の特例その他必要な事項を定めるものとする。

 

また、規制の対象となる薬物については、次のように定められています。

 

第2条 この法律において「規制薬物」とは、麻薬及び向精神薬取締法に規定する麻薬及び向精神薬、大麻取締法に規定する大麻、あへん法に規定するあへん及びけしがら並びに覚醒剤取締法に規定する覚醒剤をいう。

 

「麻薬特例法」という略称だけを聞くと、対象としているのは麻薬だけだと誤解されそうですが、麻薬及び向精神薬、あへん及びけしがら、覚醒剤、大麻のすべてをカバーしている法律です。

また、薬物犯罪に関するマネー・ロンダリングの処罰、不法収益の没収、泳がせ捜査など、従来の法律にはなかった事項を含んでいるのも特徴です。

 

大麻に関していえば、「大麻取締法」で扱われていなかった事項も定められていますので、現在の大麻関連の取締りは、「大麻取締法」と「麻薬特例法」の両方に基づいて行われます。

 

「麻薬特例法」では、

大麻取締法24条、24条の2又は24条の7の罪(無許可の栽培、輸入、輸出、所持、譲渡し、譲受け、譲渡しと譲受けの周旋)

大麻取締法24条の4の罪(罪を犯す目的の予備)

大麻取締法24条の6の罪(関連した資金、土地、建物、艦船、航空機、車両、設備、機械、器具又は原材料(大麻草の種子を含む)の提供又は運搬)

を「薬物犯罪」と位置づけています。

またこのうち、無許可の栽培、輸入、輸出、譲渡し、譲受けに対しては、「無期又は5年以上の懲役及び1000万円以下の罰金」という罰則を定めています。

 

 

  • 「育てただけ」でも重罪! 大麻草の栽培は無期懲役にもなり得る犯罪

大麻草の栽培については、「植物を育てるだけだから」と安易な気持ちで栽培にかかわってしまうケースがあるようですが、大麻草を栽培するということは規制薬物を製造していることと同じです。その観点から、非常に重い罪が科せられています。

「大麻取締法」では、個人的な無許可の栽培に対して「7年以下の懲役」、営利目的なら「10年以下の懲役」を定めていますが、「麻薬特例法」では、営利目的の栽培に対して「無期懲役」を定めているのです。同じ薬物犯罪に対する罰則が別の法律で重複して定められている場合、重い方が適用されますので、現在では「麻薬特例法」の方が優先されます。気軽な気持ちで大麻草の栽培を行っただけでも、規模によっては「無期懲役」にもなることがあるのです。

 

「麻薬特例法」のもう一つの重要な特徴は、規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図ることを目的としているため、「規制薬物」そのものが見つからなくても検挙できるという点です。

 

 

なお、2023年12月6日に、現在の大麻取締法を改正する法案が国会(参議院本会議)で可決・成立しました。これにより、近いうちに「大麻取締法」は、「大麻草の栽培の規制に関する法律」(昭和23年7月10日法律第124号)に変わり、「大麻」の定義が「大麻草(その種子及び成熟した茎を除く。)及びその製品(大麻草としての形状を有しないものを除く。)」となります。

また、あわせて「麻薬及び向精神薬取締法」も改正され、その2条1項で「別表第一に掲げる物及び大麻」を「麻薬」と定めることになりました。別表第一には、幻覚を生じることが知られる大麻由来の成分(テトラヒドロカンナビノール:THC)も含まれています。さらに連動して、「麻薬特例法」の中の条文も一部改正されます。

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