交通事故による損害賠償請求をする際の証拠はどう集めるの?
2015/05/28
交通事故による損害賠償請求をする際の証拠はどう集めるの?
こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。
1 交通事故による損害賠償請求の特徴
交通事故による損害賠償請求の法律上の根拠は,民法の不法行為に基づく損害賠償請求権(民法第709条,同第710条)です。そして,被害者が不法行為の要件事実について主張・立証責任を負うものとされています。しかし,この原則を貫くことは被害者保護の観点から問題があります。
そこで,交通事故による人身損害の場合には,被害者保護の要請から自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」といいます。)という特別法があります。これにより,被害者は加害者である運転者のみならず保有者等の運行供用者に対する責任追及ができるとされています。また,自賠法により,故意・過失の立証責任が加害者側に転換され,事実上,加害者に無過失責任に近い責任が課されています。このように,交通事故による損害賠償請求には「被害者保護」という特徴があります。
また,交通事故による損害賠償請求については,長年の実務の蓄積から損害額の算定や立証方法が,他の分野に比べて定型化している点が特徴です。
そして,自動車保険制度の普及によって,交通事故紛争の窓口として保険会社が登場してくる点も特徴といえます。
2 請求に必要な証拠の集め方
⑴ 交通事故発生の証明
交通事故発生の証明は,通常,「交通事故証明書」によることとなります。
当該交通事故の発生について,警察に届出がなされていれば,所轄の自動車運転センターで手数料を支払って,これを発行してもらうことができます。この交通事故証明書は,郵送によって交付を受けることもできます。この場合,警察署等に備え付けられている「交通事故証明書交付申請書」に必要事項を記入して手数料を振り込むこととなります。
⑵ 交通事故態様の証明
ア 刑事記録
事故態様の立証の際,もっとも重要な証拠資料は当該交通事故の刑事記録でしょう。この刑事記録は,被疑者が起訴されていれば,供述調書を含む確定刑事記録全体の閲覧・謄写が可能ですが,被疑者が不起訴処分に付されている場合は,実況見分調書のみの閲覧・謄写が可能とされています。
この確定刑事記録(不起訴事案については実況見分調書となりますが,以下,同様とします。)を閲覧・謄写するためには,前記の「交通事故証明書」をもとに,所轄の警察署の交通課に電話を架けて,「送致年月日」・「送致先」・「検番」・「罪名」を問い合わせます。その後,警察署から得られた情報をもとに,送致先の検察庁に対し,確定刑事記録の閲覧・謄写申請をすることとなります。
弁護士会照会によることもできますし,訴訟提起後であれば,裁判所に対し,文書送付嘱託を申し立てることにより収集することもできます。
イ 車両の破損状況
車両の損傷部位や損傷の程度から,衝突の状況が推測できることもあり得ます。その場合,車両の破損状況を写真や修理見積書等によって証明する場面もあるでしょう。
ウ 関係者の聴取報告書
不起訴事案の場合,当事者や目撃者等の供述調書が作成されていたとしても,入手できません。この場合は,所轄警察署の担当警察官から事情を聴き,目撃者の有無,所在等を聞き出し,当該目撃者に証言を依頼しなければならないこともあり得ます。
エ 事故現場の状況
実況見分調書に現場見取り図が添付されていたとしても,それだけではやや分かりづらい場合もあり得ます。その場合は,実地調査を行って写真撮影や図面を作成したり,インターネット上の地図・写真等を用いて証拠化することとなります。
⑶ 損害の証明
ア 治療関係費
傷病については「診断書」,治療費については「診療報酬明細書(レセプト)」を用います。
イ 通院交通費
通院交通費については「領収書」や「請求書」を用います。公共の交通機関(電車やバス等)を利用したなど,領収書がない場合は,経路を明らかにし,費用を割り出します。自家用車等を利用した場合は,経路と距離からガソリン代を請求します。
ウ 後遺障害
後遺障害の等級は,「後遺障害等級認定票」によります。この後遺障害等級認定票を取得するためには,まず,担当医に「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書(通常,後遺障害診断書といわれますので,以下「後遺障害診断書」といいます。)」を作成してもらいます。この後遺障害診断書を取得した後,加害者の自賠責保険の保険会社や任意の保険会社等を通じて,損害保険料算出機構に後遺障害等級の申請をすることとなります。
エ 休業損害・逸失利益
休業損害・逸失利益を算定する際,基礎となる被害者の収入については,「源泉徴収票」や「確定申告書」によります。勤務先に収入や休業日数についての証明書を発行してもらうこともしばしばです。
オ 物損
車両損害については,「修理費の請求書」・「領収書」・「明細書」等を用いて算定します。車両損害の場合は,車両時価相当額が争点となることも多いです。この場合,有限会社オートガイド社が発行している「オートガイド自動車価格月報(通常,レッドブックと呼ばれます。)」で小売価格の証明をすることもあります。
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弁護士 濵門俊也
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日本橋にて交通事故問題を支援
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