弁護士 濵門俊也
お問い合わせはこちら

「無期懲役なら『15年くらい』で仮釈放になる」というのは誤り

「無期懲役なら『15年くらい』で仮釈放になる」というのは誤り

2015/06/23

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

「無期懲役ならば『15年くらい』で仮釈放となる」。テレビ番組で,ある弁護士が発した言葉がネットで話題になっています。

その弁護士(かなり著名な方です。)は,「刑務所で問題なく過ごせば,『15年くらい』で仮釈放となって,その後,問題がなければそのまま社会で生活してしまうこととなる。」と真面目な顔つきで話したとのことでした。

ところが,この「無期懲役ならば『15年くらい』で仮釈放となる」というコメントについて,「事実に反する」,「きっちり訂正してほしい」という批判の声があがっているようです。当職は,みなさんよくご存じなのだなと感心しました。

そこで,今回は,無期懲役の実態について,解説します。

 

 

1 「無期懲役なら『15年くらい』で仮釈放になる」というのは誤り

 

まず,刑事事件を取り扱っている弁護士ならば,先のようなコメントを被疑者・被告人に話すことはありません。実際の運用上も,「無期懲役なら『15年くらい』で仮釈放になる」というのは誤りと言ってよいと思います。昨年(平成26年)10月29日,つぎの報道がありました。

 

【以下引用始め】

 

「無期受刑者,進む『終身刑』化 仮釈放8年連続1桁」

 

「無期懲役刑が『終身刑』につながる傾向が進んでいる。昨年1年間に仮釈放された無期懲役の受刑者は8人で,8年連続で1桁となった。1990年代はほぼ2桁で推移していた。8人の刑務所の平均在所期間は31年2カ月。10年前から約8年,20年前からは13年延びた。一方で,刑務所内で死亡した無期懲役の受刑者は昨年14人で,5年連続で2桁となった。

日本に終身刑はない。無期懲役刑と終身刑の違いは仮釈放の有無だが,事実上の終身刑として刑務所で最期を迎える受刑者が増えている形だ。

法務省が28日に公表した無期懲役の受刑者に関するまとめで分かった。89年以降の統計でみると,仮釈放された受刑者の人数は91年に34人にのぼるなど,98年までほぼ2桁で推移。平均在所期間も20年前後だった。」(朝日新聞デジタル2014年10月29日)

 

【以上引用終わり】

 

法務省の統計によると,平成16年から平成25年までの10年間で,無期刑の受刑者のうち,新たに仮釈放された人は49名となっています。その平均受刑在所期間は30年を超えているのです。

 

そうすると,例外的に,「15年」で仮釈放になる人がいるのではないだろうかとの疑問をもたれる方もおられるように思いますが,少なくとも,平成16年から平成25年までの10年間で,在所期間20年以内に仮釈放が認められたのは,平成16年に70歳の受刑者が「19年11か月」で認められたのが唯一の事例のようです。

 

 

 

2 無期懲役の仮釈放の運用

 

仮釈放は,刑務所長から地方更生保護委員会への申出により,審理が開始されます。有期刑の上限が30年ですから,無期刑の場合,刑務所長が地方更生保護委員会に仮釈放の申出をする時期は,30年の経過が目安となるでしょう。

 

 

また,法務省の通達(平成21年)で,刑期30年が経過した後は,申出がなくとも,それから1年以内に,地方厚生保護委員会が独自に審理を開始することとなりました。

 

 

仮釈放を許すか否かの審理に当たっては,本人との面談や被害者等の意見聴取もなされますから,十分に更生していなかったり,犯情の悪い人は仮釈放が許されない可能性が高いです。

 

 

 

3 無期刑受刑者の実情

 

法務省の統計によると,平成16年から平成25年までの10年間で,服役中に死亡した人は146名で,仮釈放された人の3倍です。この10年間については,無期刑受刑者の多くは獄死している,といえます。

無期刑は多くの人が考えているよりも重い刑罰といえそうです。

----------------------------------------------------------------------
弁護士 濵門俊也
東京都中央区日本橋人形町1-6-2 安井ビル5F
電話番号 : 03-3808-0771
FAX番号 : 03-3808-0773


日本橋にて刑事事件に素早く対応

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。