弁護士 濵門俊也
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小説・漫画のテレビドラマ化における著作権法上の問題

小説・漫画のテレビドラマ化における著作権法上の問題

2015/07/08

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

1 小説・漫画のテレビドラマ化における著作権法上の問題

 

本日(平成27年7月8日(水))午後10時から日本テレビ系で,杏さん主演のテレビドラマ『花咲舞が黙ってない』がスタートします。『花咲舞が黙ってない』は,直木賞作家・池井戸潤さん(以下「池井戸さん」といいます。)による小説『不祥事』,『銀行総務特命』のテレビドラマ化作品であり,昨年放送され非常に高い評価を受けました(女性版「半沢直樹」ともいえる舞の痛快な活躍を毎週楽しく視聴させていただきました。)。

 

原作のネタが尽きていたので,続編が製作されるかどうかが分かりませんでしたが,昨夜放送された番宣によりますと,原作者の池井戸さんがストックされていたネタを提供されてドラマ化が実現したようです。「お言葉を返すようですが」との舞のセリフを聴くのを毎週楽しみにしています。

 

そういえば,先日7月5日から日本テレビ系で放送された『デスノート』もかつて週刊少年ジャンプで大人気連載されていた漫画『DEATH NOTE』(原作・大場つぐみ,作画・小畑健)を原作とした実写版のテレビドラマです。今回のテレビドラマ化は日本テレビの悲願であったようで,原作の設定を大きく変更している点が特徴的です。

『DEATH NOTE』も『デスノート』もともに,名前を書かれた人が死ぬという死神のノートを手にした主人公・夜神月(ヤガミ ライト※1)と名探偵・L(エル)との頭脳戦を描いたサスペンス(※2)である点は共通しています。

 

※1 当職は,主人公の名・「月」と書いて「ライト」と読ませることが当時斬新でした。キラキラネームのはしりです(「キラ」とかけているわけではありません。)。ただ,警察庁刑事局局長(第2部からは警察庁次長に昇進)にして日本捜査本部長でもある夜神総一郎が自分の息子にキラキラネームをつけるセンス(職業とのギャップ)が面白いです。

 

※2 映画評論家であった水野晴郎さんによりますと,最初から犯人が分かっているのが「サスペンス」,最後に犯人が分かるのが「ミステリー」とのことです。

たとえば,ヒッチコック監督の映画は,犯人との行き詰まる駆け引きが醍醐味であり,「サスペンス界の巨匠」と呼ばれています。

また,ラストシーンの大どんでん返しが見事な傑作を残したアガサ・クリスティは「ミステリーの女王」と呼ばれました。

 

『デスノート』第1話は,今年の民放ドラマの初回最高視聴率となる16.9%を記録する好発進となったようです(当職は原作も大好きで,アニメも見ていましたので,興味本位で視聴しましたが,少なくとも第1話については,なかなか見ごたえがあり受け入れられました。第2話以降の展開も期待したいです。)。

 

前置きが長くなりましたが,『花咲舞が黙ってない』にしても『デスノート』にしても原作を改変していることは間違いありません。そこで,今回は,著作権法上の問題点を説明していきます。

 

 

2 「翻案権」という権利

 

小説や漫画の原作者がもつ著作権には「翻案権」という権利が含まれており,原作を使用して,テレビドラマ化や映画化するなど二次的著作物を制作する場合には,原作者の同意が必要です。

 

したがって,今回のように小説や漫画をテレビドラマ化する場合には,原作者とテレビ局側とで「原作使用許諾契約」を締結し,テレビドラマ化することについて原作者の同意を得ているはずです。

 

 

3 「同一性保持権」という権利

 

そうすると,原作者の同意があれば,原作を大胆に改変することも自由なのかとの疑問をもたれる方もおられるでしょうが,実際は,まったく自由に改変できるとは限りません。

 

著作者は,自分の作った著作物について,「自分の意に反する改変をされない権利」をもっています。これを「同一性保持権」といいます。

 

「同一性保持権」をめぐっては,しばしばニュース報道等で話題となる事件もあります。そこで,エンターテインメント業界では,原作者が有する「同一性保持権」には慎重な配慮をするようになっています。

 

先に述べました「原作使用許諾契約」においても,「テレビドラマの制作に当たっては,原作者の同一性保持権に配慮する」という内容の規定が入っているのをしばしば目にします。

 

制作側による原作者の同一性保持権への配慮としては,制作側は,キャストやストーリーの大枠だけでなく,脚本まで,事前に原作者にチェックしてもらい,慎重に同意を得るようにしているようです。

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