弁護士 濵門俊也
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自動車運転処罰法における危険運転致死傷罪とは?

自動車運転処罰法における危険運転致死傷罪とは?

2015/08/19

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 先日も本ブログに書きましたが,東京都豊島区のJR池袋駅東口で8月16日,普通乗用自動車が歩道に突っ込み,歩行者5人が死傷した事故が発生しました。当初,自動車運転処罰法違反(過失運転致傷罪)の被疑事実で現行犯逮捕された53歳の医師が,「てんかん」の持病で定期的に通院していたことが判明しました。

 警視庁池袋警察署は,正常な運転に支障があるおそれを認識しながら運転した疑いがあるとして,昨日18日,被疑事実を自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷罪)に切り替えて東京地方検察庁へ送致しました。

 

 ニュース報道を見ながら,事故発生直後の目撃者証言を訝しく思っていた点もあり,被疑者が「てんかん」の持病をもっていたとの報道には合点がいきました。送検されましたが,おそらく検察官は本日付けで勾留請求するものと思われます(本件において,勾留請求が却下されることはないでしょう。)。

 今回は,危険運転致死傷罪について,説明をしてまいります。

 

1 危険運転致死傷罪の適用条件の困難さ等の問題点

 

 危険運転致死傷罪の構成要件は,運転行為のうち,とくに危険性の高いものに限定されているため,居眠り運転や単なる速度超過(20~30km/hオーバーで走る行為)などでは適用対象とはならなかったり,かりに起訴されたとしても,適用如何が裁判で争われることがありました。

 

 危険運転致死傷罪の構成要件が限定されている趣旨は,自動車を運転する大多数の国民が,誰もが犯しかねないわずかな不注意で,危険運転致死傷罪のような重大な処罰の対象となりかねないこととするのは適当ではないことに配慮した点にあります。

 たとえば,過労運転や持病を有する状態の運転は,事案によっては強い非難には値しなかったり,様々な要因の複合作用があることなどから,危険運転の要件から外されていました。また,無免許運転なども,実質的に危険なのは「運転技能を有していないこと」であり,「無免許であること自体」が危険なのではないことから,本罪の要件とはなっていなかったのです(なお,自動車運転処罰法施行により対象となりました。)。

 

 しかし,無免許運転や速度超過を行う悪質な運転者が,危険運転致死傷罪の適用を受けないなどの事案が相次ぎ,とくに被害者感情との軋轢を生む例が少なくありませんでした。立法当時から,無免許運転等が本罪の構成要件に当たらないことに対しては,一部の交通事故遺族から批判の声があったことも事実です。

 

 

2 自動車運転処罰法の制定

 

 そこで,上記のような適用条件の難しさを受け,法務省は,自動車運転過失致死傷罪と危険運転致死傷罪の中間罪を創設する法案を公表しました。

 これを受けて,平成25年11月20日,「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)」が成立しました。

 自動車運転処罰法では,危険運転致死傷罪の適用対象が拡大されるとともに,「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」(最高刑は懲役12年です。)を新設し,逃げ得を防ぐ対策が行われています。さらに,無免許の場合は,罪を重くする規定も追加されています。

 自動車運転処罰法は,平成26年4月18日の政府決定により,同年5月20日より施行されました。また,同法の適用対象となる病気については,「統合失調症」,「低血糖症」,「躁鬱病」,「再発性失神」,「重度の睡眠障害」,「意識や運動の障害を伴うてんかん」の6種とすることが定められました。

 ちなみに,平成26年6月に施行された改正道路交通法では,,運転中に意識を失うおそれがある持病を隠して免許を取得・更新した場合は,「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」とする罰則が新設されました(本件においても,被疑者がこの罪に問われる可能性があります。)。

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