弁護士 濵門俊也
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やるな法務省!ー違憲判決の効力を考える

やるな法務省!ー違憲判決の効力を考える

2015/12/23

こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 女性にのみ離婚後6か月間,再婚を禁止している民法第733条第1項について,最高裁判所大法廷は「100日を超える部分は憲法違反」という判決を下しました。判決が下された当日となる平成27年12月16日,法務省はさっそく,離婚後100日経過した女性について婚姻届を受理するよう,全国の自治体に通知を出しました。法律が改正される前に,行政が運用を見直すスピード感のある動きといえましょう。

 ここで一つの疑問が生じます。法改正を待たずに,行政が運用を変えることは問題ないのでしょうか。

 

●実は「違憲とされた法律は無効」とはならない?!

 憲法学においては,「違憲判決の効力」という論点があります。すなわち,最高裁判所により法律が憲法に違反するとした違憲判決が出された場合,その判決の効力は,法律を一般的に無効とするのか(一般的効力説),それとも法律は当然には無効にはならないのか(個別的効力説)という問題です。

 わが国の憲法学の通説は,最高裁判所により違憲判決が下された場合であっても,その判決はその裁判の当事者間にのみ効力が生じ,違憲とされた法律は当然に無効とされるものではないという個別的効力説を採用しています。

 個別的効力説からすると,上記の民法第733条第1項が規定する女性の再婚禁止期間の「100日を超える部分」を憲法違反とする判決の場合も,国会の法改正がなければ,民法第733条第1項の規定そのものは変わらないという帰結となります。

 

●法改正の前に「通知」が出された理由

 そうしますと,法律の規定そのものは活きているということとなります。行政は法律に従う義務がありますから,国会の法改正があるまでは,現行の民法第733条第1項の規定に従った運用を行うべきとも思えるところです。

 しかし最高裁の違憲判決後も,離婚から100日経過した女性の婚姻届を行政が受け付けなかった場合,今回と同様の訴訟が再び提起されることが予想されます。その際には,ほぼ確実に違憲・無効の判決が下されるものと考えられます。

 それを見越して,行政は法改正を待たずに,違憲判決を踏まえた通達を出し,事実上国会の法改正を先取りする法運用を行う傾向があります。また,最高裁大法廷で違憲判決が下されたということは,将来国会による法改正が行われることが当然予想されるともいえます。

 

●過去には,尊属殺重罰規定違憲判決後における検察庁の運用があった

 わが国で初めて最高裁判所大法廷が違憲判決を下したのは,昭和48年4月4日のことです。当時の刑法第200条が規定していた尊属殺人罪の法定刑が,日本国憲法第14条の「法の下の平等」に反して無効であると判決を下したのです。

 その違憲判決後,検察庁は尊属殺に該当する事件でも,通常の殺人事件として起訴する運用を行いました(ただし,刑法第200条が削除されたのは,違憲判決から20年以上も経過した平成7年です。)。

 今回も最高裁判所大法廷で違憲判決が下されている以上,その違憲判決に従った法運用を行うことこそ「法の下の平等」の観点からも望ましいということで,法務省の通知があったのでしょう。来年の通常国会が期待されます。

 

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