国民的スーパーアイドルグループをめぐる報道から思い出す大岡裁きー「子争い」
2016/01/21
こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。
先週報じられた国民的大人気スーパーアイドルグループの解散報道は,何とか事なきを得て終息に向かおうとしているようです。今回の報道では,当該アイドルグループが,わが国はもちろん全世界の方々に多大な影響を及ぼしていることを痛感させられました。また,わが国の芸能界の闇が深いということをまざまざと知らされました。
今回の騒動は,ある意味において,「産みの親と育ての親の対立」であったと評し得るかと思いますが,今回の騒動を受け,当職は,大岡越前こと大岡忠相(以下「大岡越前」といいます。)の「子争い」という名裁きがあったことを思い出しました。
【あらすじ】
ある時,大岡越前のところに,ふたりの女がひとりの子を連れてやってきました。
ふたりの女は,いずれも,「自分こそこの子の本当の母親です」と言って譲りません。
そこで,大岡越前は,つぎのように言いました。
「子の腕を持て。お前は右じゃ。そちは左を持つがいい。それから力いっぱい引き合って勝ったほうを実母とする」
ふたりの女は,子どもの腕を思いきり引っぱり始めましたが,子どもが痛がって泣きわめくので,一方の女は思わず手を放しました。
勝った女は喜んで子を連れて行こうとしましたが,大岡越前は,「待て。その子は手を放した女のものである」と言います。
勝ったと思った女は当然ながら大岡越前に激しく抗議します。「なぜでございますか。勝った者の子だとおっしゃられたではありませぬか」
その抗議に対し,大岡越前はつぎのように諭しました。
「本当の母親なら子を思うものである。痛がって泣いているものをなおも引く者がなぜ母親であろうか」
(おしまい)
もともと大岡裁きは史実ではなく,古典をもとにしたフィクションばかりであったといいます。今回の騒動に対する世論は,当職の見立てでは,おそらく前述の「子争い」に対する大岡裁きに近い(育ての親に同情している)と思われます。
ちなみに,前述の「子争い」のお話は,中国の古典『棠陰比事』(とういんひじ)をモチーフにしているようです(『棠陰比事』は,中国の裁判記録集であり,宋の桂万栄の著です。)。
【あらすじ】
ある兄弟が同じ家に住んでいたとさ。兄の嫁と弟の嫁は同時に懐妊し,兄嫁の子は腹の中で死んでしまいました。
しかし,兄嫁はこのことを黙っており,まもなく生まれた弟の嫁の子を奪い取って自分のものにしようとしました。跡継ぎがいないと,その家の財産を自分のものにできないからです。
ひとりの子どもをめぐって3年もの間言い争い,ついに裁判所に訴え出て裁きを受けることとなってしまいました。
判事は女房たちに対し,子どもを奪い合わせて勝ち取ったほうが本物の母親といいます。
そこで子争いが始まります。兄嫁は子どもの足が折れるほど激しく奪い取ろうとするのに対し,弟の嫁は子どもがかわいそうで力を込められない状況でした。
それを見て判事は,子どもは弟の嫁のものとして,兄嫁を処罰したとさ。
(おしまい)
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弁護士 濵門俊也
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