弁護士 濵門俊也
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民法第724条後段とは?ーカネミ油症事件最高裁決定に思う(上)

民法第724条後段とは?ーカネミ油症事件最高裁決定に思う(上)

2015/06/03

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

平成27年6月3日午後,次のニュースが飛び込んできました。

「昭和43年,西日本を中心に発生した国内最大の食品公害とされるカネミ油症の新認定患者と遺族ら54名が,カネミ倉庫株式会社(北九州市)に対し,1人1100万円の損害賠償を求めた訴訟で,最高裁第3小法廷(木内道祥裁判長)は2日付で,患者側の上告を退ける決定をしました。不法行為から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」を理由として,患者側敗訴とした第一審,第二審判決が確定したこととなります。」

 

当職は熊本県出身であり,近隣の地域で起きた公害事件でしたから,幼少のころから「カネミ油症事件」の報道を見聞きしてきました。結果として,民法第724条後段が適用され,上記のような決着をみたということは,法律解釈の限界を感じざるを得ません。

今回は,2回に分けて民法第724条後段について説明いたします。

 

 

 

1 民法第724条後段の法意

民法第724条後段の規定は,不法行為に基づく損害賠償請求権の「除斥期間」を定めたものであり,不法行為に基づく損害賠償請求権は,除斥期間の経過する前に行使されなかった場合には、当然に消滅するものと解されています(最一小判平成元年12月21日民集43巻12号2209頁,以下「平成元年判決」といいます。)。

ただし,民法第724条後段の立法沿革としては,「消滅時効」を定めたものといわれていますし,また,平成元年判決の後,学説ではむしろ,同条後段が「消滅時効」を定めたものと解する説が大勢を占めるようになったようです。

しかし,最高裁は,平成元年判決以降,民法第724条後段の規定は,不法行為による損害賠償請求権の除斥期間を定めたものであるとの立場が,例外なく踏襲されてきています。

よって,判例上は,民法第724条後段は,「除斥期間」を定めたものであるとの解釈が確立しているというほかないです。

 

 

2 民法第724条後段の除斥期間の起算点

⑴ 民法第724条後段所定の除斥期間の起算点は,「不法行為の時」と規定されており,文言を素直に解釈すれば、加害行為時が除斥期間の起算点となります。

 

⑵ もっとも,加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には,加害行為の時がその起算点となりますが,当該不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には,当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解すべきこととなります。

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