弁護士 濵門俊也
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離婚訴訟における裁判上の和解に当事者本人出頭は必要か?

離婚訴訟における裁判上の和解に当事者本人出頭は必要か?

2015/07/02

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

現在当職が担当している離婚訴訟において,遠隔地に当事者ご本人が住んでおられる事件が複数あります。また,離婚調停においても,しばしば,当事者が遠隔地に居住されている案件に遭遇します。

離婚調停や離婚訴訟において,離婚について合意に至った場合,当事者ご本人が家庭裁判所に出頭することが必要なのでしょうか。今回は,家庭裁判所における調停離婚及び離婚訴訟における和解並びに当事者ご本人出頭との関係を整理してみます。

 

 

1 離婚調停は,本人が出頭しなければならない

 

実は,離婚調停については,家事審判法の時代から当事者ご本人が出頭しなければなりませんでした。家事事件手続法ができた後も同様です。

その根拠法令は以下の条文です。

 

【家事審判規則第5条】

Ⅰ 事件の関係人は,自身出頭しなければならない。但し,やむを得ない事由があるときは,代理人を出頭させ,又は補佐人とともに出頭することができる。

Ⅱ 弁護士でない者が前項の代理人又は補佐人となるには,家庭裁判所の許可を受けなければならない。

Ⅲ 家庭裁判所は,何時でも,前項の許可を取り消すことができる。

 

【家事事件手続法 第3編 家事調停に関する手続】

第268条(調停の成立及び効力)

調停において当事者間に合意が成立し,これを調書に記載したときは,調停が成立したものとし,その記載は,確定判決(別表第2に掲げる事項にあっては,確定した第39条の規定による審判)と同一の効力を有する。

   (中略)

第270条(調停条項案の書面による受諾)

Ⅰ 当事者が遠隔の地に居住していることその他の事由により出頭することが困難であると認められる場合において,その当事者があらかじめ調停委員会(裁判官のみで家事調停の手続を行う場合にあっては,その裁判官。次条及び第272条第1項において同じ。)から提示された調停条項案を受諾する旨の書面を提出し,他の当事者が家事調停の手続の期日に出頭して当該調停条項案を受諾したときは,当事者間に合意が成立したものとみなす。

Ⅱ 前項の規定は,離婚又は離縁についての調停事件については,適用しない

 

上記のとおり,離婚調停は,成立以前の調停条件協議時は手続代理人弁護士だけの出頭だけでも構わないのですが,成立時には本人が出頭しなければならないのです。

 

 

2 離婚訴訟における当事者ご本人の出頭の必要性

 

離婚訴訟における和解に関する条文は以下のとおりです。

 

【人事訴訟法 第3節 和解並びに請求の放棄及び認諾】

【第37条】

Ⅰ 離婚の訴えに係る訴訟における和解(これにより離婚がされるものに限る。以下この条において同じ。)並びに請求の放棄及び認諾については,第19条第2項の規定にかかわらず,民事訴訟法第266条(第2項中請求の認諾に関する部分を除く。)及び第267条の規定を適用する。ただし,請求の認諾については,第32条第1項の附帯処分についての裁判又は同条第3項の親権者の指定についての裁判をすることを要しない場合に限る。

Ⅱ 離婚の訴えに係る訴訟においては,民事訴訟法第264条及び第265条の規定による和解をすることができない。

Ⅲ 離婚の訴えに係る訴訟における民事訴訟法第170条第3項の期日においては,同条第4項の当事者は,和解及び請求の認諾をすることができない。

 

問題は,訴訟上の和解で離婚する場合に,調停離婚と同様に,当事者の出頭が必須かどうかという点です。

上記人事訴訟法第37条及び準用する条文をみていただいてもお分かりのとおり,必ず本人出頭が必要かどうかは明確ではありません。

人事訴訟法の解説書の一つである日本加除出版の『改訂人事訴訟法概説』34頁には,新人事訴訟法立法過程で離婚の「和解において当事者本人の出頭義務を明記すべきかどうかについても検討されたが,離婚を話し合いにより解決するための手続である以上,本人による意思確認が必要であることは実体法上の要請であるとして,手続法においてこの点を明記することはせず,」と解説されています。

 

また,上記『改訂人事訴訟法概説』329頁には「病気等により出頭が困難な場合も予想されるから,不出頭につき相当な理由がある場合には,当事者本人不出頭のままで訴訟上の和解を成立させることもゆるされるのではないか。この問題については,当事者の意思確認の方法の問題も含めて,なお検討してみる必要があろう。」と解説されています(当職も同意見です。)。

 

ただ,実務上は,当事者の出頭を前提として訴訟上の和解を勧めることがほとんどです。少なくとも当職は当事者欠席のもとでの和解をいまだ経験していません。

 

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