弁護士 濵門俊也
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『日本のいちばん長い日』はいつか?!

『日本のいちばん長い日』はいつか?!

2015/08/12

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 『日本のいちばん長い日』(これは,「歴史探偵」でおなじみの半藤一利著『日本のいちばん長い日 決定版』(文春文庫)によっています。半藤さんの著作は数多く読ませていただいており,ファンの一人です。とくに昭和史を学ぶには最適のテキストが多いです。「正視眼」で歴史をみておられる数少ない方であると尊敬しております。)である「8月15日」が近づいています。この日は,「終戦の日」や「終戦記念日」といわれています。

 

 しかし,これはある考えによったものであり,実際には,我が国において,第二次世界大戦(わが国では太平洋戦争,戦時下では大東亜戦争)が終結したとされる日について,諸説あることをご存じでしょうか。

 今回は,主な諸説を述べさせていただきます。

 

 

A説 1945年(昭和20年)8月14日:日本政府が,ポツダム宣言の受諾を連合国各国に通告した日

【コメント】

 たしかにこの日は翌日放送される玉音放送も録音されていますし,小説『日本のいちばん長い日』もこの日から始まりますが,少し馴染みが薄いでしょう。極めて少数説にとどまりそうです。

 

 

B説 1945年(昭和20年)8月15日:玉音放送(昭和天皇による終戦の詔書の朗読放送,ただし録音)により,大日本帝国の降伏が日本臣民に公表された日

【コメント】

 一般に我が国では,8月15日が終戦の日とされています。玉音放送に関し,「この放送は,天皇陛下がもう少し頑張るのだとの激励をしておられるのだ」などと聞いた方もおられると聞きましたが,それはどう考えてもおかしいでしょう。当時を知る方の「玉音放送の内容はよく分からなかったが,戦争に負けたことは理解できた」というコメントもありますし,多くの日本臣民がとにかく戦争が終わったと実感したのは,まさしくこの日でしょう。

 昭和57年(1982年)4月13日,8月15日を「戦没者を追悼し平和を祈念する日」とすることが閣議決定されました。現在ではこの閣議決定に基づいて,毎年8月15日に全国戦没者追悼式が行われています。

 ちなみに,大韓民国では8月15日を「光復節」と称して,日本による朝鮮半島統治からの「解放」を祝う日となっています。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)も同様に,8月15日を「祖国解放記念日」として祝っています。

 

 

C説 1945年(昭和20年)9月2日:日本政府が,ポツダム宣言の履行等を定めた降伏文書(休戦協定)に調印した日

【コメント】

 少なくとも,連合国史観からはこの日となりそうです(たとえば,アメリカ合衆国,連合王国,フランス,カナダ,ロシア,ベトナム等)。

 1945年9月2日,昭和天皇は「誓約履行の詔書」を発し,日本政府全権の重光葵外務大臣と大本営(陸海軍)全権の梅津美治郎参謀総長が,降伏文書に調印し,即日発効しました。

 連合国軍の占領下にあった1952年(昭和27年)4月27日までの新聞紙上では,9月2日を「降伏の日」,「降伏記念日」や「敗戦記念日」と呼んでいたようです。

 

 

D説 1952年(昭和27年)4月28日:日本国との平和条約(サンフランシスコ平和条約)の発効により,国際法上,連合国各国(ソ連等共産主義諸国を除く)と日本の戦争状態が終結した日

【コメント】

 国際法に精通されている方であれば,この日を支持しそうです。

 1951年9月8日,平和条約であるサンフランシスコ平和条約が調印されました。そして,サンフランシスコ平和条約が発効した1952年4月28日をもって,国際法上,正式に日本と連合国との間の「戦争状態」は終結することとなったのです。

 4月28日については,サンフランシスコ平和条約が発効して日本が完全な独立を回復した日であることから,「主権回復の日」や「サンフランシスコ条約発効記念日」とも呼ばれています。

 

 

E説 1972年(昭和47年)5月15日:沖縄(琉球諸島及び大東諸島)の施政権がアメリカ合衆国から日本に返還された日

【コメント】

 いわゆる沖縄が本土に復帰した日です。

 日本国とアメリカ合衆国との間で署名された協定の正式名称は「琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」です。日本の法令用語としては「沖縄の復帰」といいます。

 ただ,沖縄の人たちにとっての終戦記念日は「6月23日」なのかもしれません。

 

 

F説 終戦記念日はない

【コメント】

 いまだ,ソビエト社会主義共和国連邦(以下「ソ連」といいます。現ロシア連邦)との間では,講和条約が締結されていない事実を踏まえれば,このような説もあり得ます。

 ソ連の対日戦勝記念日は9月3日でした。これは,降伏文書に調印した1945年9月2日の翌日に,対日戦勝祝賀会が行われたことにちなんでいます。ロシア連邦でも,ソ連の対日戦勝記念日を引き継いだため,近年まで9月3日でした。

 

 

 いかがでしたでしょうか。いつ戦争が終わったかということを一つとってみても,解釈が分かれ得ることをご理解いただけたかと思います。

 ただ,一点確認しておきたいのは,「戦争ほど,残酷で悲惨なものはない」という点です。当職は歴史に学ぶ賢者になるべく,日々勉強しています。 

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