弁護士 濵門俊也
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弁護士と認定司法書士の「仁義なき戦い」ーー最判平成28年6月27日

弁護士と認定司法書士の「仁義なき戦い」ーー最判平成28年6月27日

2016/07/12

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 少し時間が経ってしまいましたが,去る平成28年6月27日,実務上重要な最高裁判決が下されました。事案は,非弁活動で損害を受けたとして,和歌山県の男性が司法書士に対し損害賠償を求めた訴訟でした。
 争点は,司法書士が弁護士に代わってどこまで債務整理を担えるかという点であったところ,最高裁第1小法廷(大谷直人裁判長)は,「債務額(借金額)などが140万円を超える場合は司法書士は担当できない」とする初判断を示したのです。この問題については,日本弁護士連合会(日弁連)と日本司法書士会連合会(日司連)の主張が対立していたのですが,上記最高裁の判断により,日弁連側に軍配が上がり,司法書士の業務範囲が狭まることとなりました。

●具体的には何が争点だったのか?

 債務整理に関しては,法律事務所だけではなく司法書士事務所もバンバンCMを流していますから,依頼者の立場からしますとどちらに依頼すればよいのだろうと迷われる方もおられると思います。そこで,上記最高裁の事案でも争点となった事柄について,若干の解説をしてみます。

 まず,現在の民事訴訟法上は本人訴訟が認められているところ,訴訟代理人をつける場合は,原則的に弁護士である必要があります(民事訴訟法第54条第1項)。
 ただし,司法書士の中で,法務省で一定の研修・考査を受けた,いわゆる「認定司法書士」は,「訴訟の目的の価額」が140万円を超えない(つまり,140万円以下ということです。)簡易裁判所の民事事件について,訴訟代理人となることができます(司法書士法第3条第2項,同条第1項第6号イ)。
 そして,「紛争の目的の価額」が140万円を超えない民事に関する紛争についても,相談に応じ,裁判外の和解について代理人となることができるとも定められています(司法書士法第3条第2項,同条第1項第7号)。
 上記「訴訟の目的の価額」は「訴えで主張する利益」(民事訴訟法第8条)のことです。上記最高裁の裁判では,債務整理を行う場合の「紛争の目的の価額」の解釈が争点となりました。

●原告・被告の主な主張(解釈論)

 それでは,原告側・被告側は,それぞれどのような解釈を主張していたのでしょうか。
 原告側(弁護士側といえます。)は「債権者の主張する債権額」(すなわち,「借金額が基準」ということです。)であると主張していたのに対し,被告(司法書士側といえます。)は「依頼者の受ける経済的利益」(すなわち,債務圧縮や弁済計画の変更で依頼者に生じる利益が140万円以下なら代理できるということです。)であると反論していました。
 例えば,債権者が債務者に300万円を請求していたところ,最終的に「200万円に減額する」という和解が成立した事案を考えてみましょう。
 この事案において,弁護士側の見解では,「債権者の主張する債権額=紛争の目的の価額」となりますから,「紛争の目的の価額」は「300万円」となります。この見解では,「紛争の目的の価額」が140万円を超えることとなりますので,認定司法書士は債務者を代理できないという結論となります。
 他方,司法書士側の見解では,「依頼者の受ける利益=紛争の目的の価額」となりますから,「紛争の目的の価額」は,依頼者は300万円から和解で減額された200万円を引いた100万円について利益を得たということとなります。そうすると,「紛争の目的の価額」が140万円を超えないこととなりますので,認定司法書士は債務者を代理できることになるわけです。
 上記最高裁判決は,「紛争の目的の価額」の解釈について,「司法書士が代理できる範囲は客観的かつ明確な基準で決められるべきだ。和解が成立して初めて判明するような,弁済計画の変更による経済的利益の額で決められるべきではない」と判断し,認定司法書士が業務を行う時点で客観的かつ明確な基準でなければならないとして,債権額基準,つまり「債権者の主張する債権額=紛争の目的の価額」との基準を採用しました。

 判決後,日弁連は「市民に分かりやすく,法の趣旨に沿った妥当なものと考えている」とコメントしていますが,弁護士としては当然の判断であったと考えています。

●すべての法律事務を取り扱えるのは弁護士だけ

 今回は「紛争の目的の価額」が140万円を超えない紛争が議論されましたが,すべての法律事務を取り扱えるのは弁護士だけです。家事事件の手続代理人や訴訟代理人,刑事事件の弁護人,少年事件の付添人など,弁護士であればあらゆる法律事務を担当できます。
「弁護士に相談するのは敷居が高い」「司法書士より費用が高くつくのではないか」等悩まれている方もおられるかもしれません。しかし,結論からいえばそんなことはありません。
 弁護士濵門俊也の門はいつでも開いております。お気軽にご相談ください。

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